「落陽」
中文題:上海大亨杜月笙
英題:Setting Sun
製作:1992年
▼今月は元彪(ユン・ピョウ)の主演作を集中紹介していますが、その中でも最大の問題作といえるがこの『落陽』です。本作はにっかつ80周年記念作品で、50億円もの巨費を投じて製作されました。
しかし興行的に大失敗し、にっかつ倒産の原因を作った…というのは皆さんもご存じの通り。おまけに尺が非常に長く、同じ失敗作の『北京原人』みたいな笑える要素もなさそうなので、今まで視聴をスルーしてきたのです。
個人的には「もし元彪のアクションが無かったらどうしよう」という心配もありましたが、このたび目を通してそれが杞憂であったことを知りました。でも映画そのものの出来はというと……(後述)
■舞台は昭和初期の中国・奉天。関東軍の仕官だった加藤雅也は、恋人のダイアン・レインに言い寄っていた陸軍省顧問に切りかかり、その際に青幇の首領・元彪に手傷を負わせてしまう。
それから3年後、軍を辞めた加藤は関東軍参謀・嵐圭史の頼みで満州に戻り、満州国建設のための資金作りを任された。加藤は王道楽土を目指し、満州浪人・にしきのあきらと行動を開始する。
その年に満州事変が勃発し、関東軍は満州を占領。より多くの資金を稼ごうとする加藤は、馬賊の女首領だったダイアンと再会を果たした。やがて満州国が建国されるが、嵐の後任である将官は「阿片の商売でもっと稼げ」と命じていく。
にしきのに裏切られたりと雲行きが怪しくなる中、新たにダイアンが仲間として加わった。時代は支那事変を迎え、帰ってきた嵐の指令で加藤たちは上海へと向かうも、そこには彼らを敵視する元彪の姿が…。
どうにか元彪を出し抜いて満州に帰郷する加藤であったが、とうとう日本は太平洋戦争に突入する。徐々に戦局が苦しくなる中で、彼は青幇と取引を行うハイラルの商人(宍戸錠!)から、阿片を横取りする作戦を提案した。
だがこの動きは元彪に見抜かれ、死闘の果てに馬賊はダイアンを残して壊滅。青幇も元彪もろとも全滅し、この一件で彼女は加藤を見限ってしまう。日本が敗戦への道を突き進む中、果たして彼はどこへ行くのだろうか…?
▲まずアクションシーンについてですが、全体的にそれほど多くはありません。銃撃戦と肉弾戦が半々の割合で、元彪は中盤の倉庫襲撃から戦い始めます(ここは暗くてちょっと見づらい)。
そして2時間ほど経ったあたりで日本のスパイと戦いますが、それを演じるのがなんと女性武術指導家の楊菁菁! 『レッド・リベンジ』に続き、こんなところで対戦していたとは驚きました。
後半の最終決戦では加藤VS元彪のバトルとなり、それなりのファイトを見せています。まぁ、飛んだり跳ねたりの派手な動きは皆無なので、これまで紹介した作品と比べると大したことは無いといえるでしょう。
ただし作品としては物凄く淡泊で、ストーリーに抑揚といえるものがありません。満州事変の発生・青幇との最終決戦など、盛り上がりそうな場面でもテンションはずっと低空飛行のまま…これが150分も続くのです(爆
カメラワークも単に人物の動きを追うだけで、スケール感や躍動感はまるで感じないという有様(たぶんフィルマーク映画の方がマシ)。壮大な音楽や空撮映像による援護射撃も、しつこく繰り返すので効果はどんどん薄れていました。
登場人物もツッコミどころ満載で、歌姫で馬賊の首領で中国人役というムチャな役柄のダイアン、最初のほうに名前が出てるわりに役も出番も小さいドナルド・サザーランドはその筆頭と言えます。
大物キャストの大半は言われないと気付かないレベルの扱いだし、キラーカンや特別出演の高品格にいたっては本編中に出番がなく、エンドロールで映像だけ(恐らくカットされた未使用部分)が流されていました。
監督が原作小説の作者ということで覚悟していましたが、ここまで見せ場も山場もない作品だったとは…。少なくとも元彪目当てで見るにはかなり難易度が高いので、それでも視聴したいという方は十分ご注意下さい。
ちなみに次回は古き良き80年代へとUターンし、再び日本にまつわる作品をピックアップする予定です。
中文題:上海大亨杜月笙
英題:Setting Sun
製作:1992年
▼今月は元彪(ユン・ピョウ)の主演作を集中紹介していますが、その中でも最大の問題作といえるがこの『落陽』です。本作はにっかつ80周年記念作品で、50億円もの巨費を投じて製作されました。
しかし興行的に大失敗し、にっかつ倒産の原因を作った…というのは皆さんもご存じの通り。おまけに尺が非常に長く、同じ失敗作の『北京原人』みたいな笑える要素もなさそうなので、今まで視聴をスルーしてきたのです。
個人的には「もし元彪のアクションが無かったらどうしよう」という心配もありましたが、このたび目を通してそれが杞憂であったことを知りました。でも映画そのものの出来はというと……(後述)
■舞台は昭和初期の中国・奉天。関東軍の仕官だった加藤雅也は、恋人のダイアン・レインに言い寄っていた陸軍省顧問に切りかかり、その際に青幇の首領・元彪に手傷を負わせてしまう。
それから3年後、軍を辞めた加藤は関東軍参謀・嵐圭史の頼みで満州に戻り、満州国建設のための資金作りを任された。加藤は王道楽土を目指し、満州浪人・にしきのあきらと行動を開始する。
その年に満州事変が勃発し、関東軍は満州を占領。より多くの資金を稼ごうとする加藤は、馬賊の女首領だったダイアンと再会を果たした。やがて満州国が建国されるが、嵐の後任である将官は「阿片の商売でもっと稼げ」と命じていく。
にしきのに裏切られたりと雲行きが怪しくなる中、新たにダイアンが仲間として加わった。時代は支那事変を迎え、帰ってきた嵐の指令で加藤たちは上海へと向かうも、そこには彼らを敵視する元彪の姿が…。
どうにか元彪を出し抜いて満州に帰郷する加藤であったが、とうとう日本は太平洋戦争に突入する。徐々に戦局が苦しくなる中で、彼は青幇と取引を行うハイラルの商人(宍戸錠!)から、阿片を横取りする作戦を提案した。
だがこの動きは元彪に見抜かれ、死闘の果てに馬賊はダイアンを残して壊滅。青幇も元彪もろとも全滅し、この一件で彼女は加藤を見限ってしまう。日本が敗戦への道を突き進む中、果たして彼はどこへ行くのだろうか…?
▲まずアクションシーンについてですが、全体的にそれほど多くはありません。銃撃戦と肉弾戦が半々の割合で、元彪は中盤の倉庫襲撃から戦い始めます(ここは暗くてちょっと見づらい)。
そして2時間ほど経ったあたりで日本のスパイと戦いますが、それを演じるのがなんと女性武術指導家の楊菁菁! 『レッド・リベンジ』に続き、こんなところで対戦していたとは驚きました。
後半の最終決戦では加藤VS元彪のバトルとなり、それなりのファイトを見せています。まぁ、飛んだり跳ねたりの派手な動きは皆無なので、これまで紹介した作品と比べると大したことは無いといえるでしょう。
ただし作品としては物凄く淡泊で、ストーリーに抑揚といえるものがありません。満州事変の発生・青幇との最終決戦など、盛り上がりそうな場面でもテンションはずっと低空飛行のまま…これが150分も続くのです(爆
カメラワークも単に人物の動きを追うだけで、スケール感や躍動感はまるで感じないという有様(たぶんフィルマーク映画の方がマシ)。壮大な音楽や空撮映像による援護射撃も、しつこく繰り返すので効果はどんどん薄れていました。
登場人物もツッコミどころ満載で、歌姫で馬賊の首領で中国人役というムチャな役柄のダイアン、最初のほうに名前が出てるわりに役も出番も小さいドナルド・サザーランドはその筆頭と言えます。
大物キャストの大半は言われないと気付かないレベルの扱いだし、キラーカンや特別出演の高品格にいたっては本編中に出番がなく、エンドロールで映像だけ(恐らくカットされた未使用部分)が流されていました。
監督が原作小説の作者ということで覚悟していましたが、ここまで見せ場も山場もない作品だったとは…。少なくとも元彪目当てで見るにはかなり難易度が高いので、それでも視聴したいという方は十分ご注意下さい。
ちなみに次回は古き良き80年代へとUターンし、再び日本にまつわる作品をピックアップする予定です。
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