戯人舎

『夢あるいは現』日記

「夢あるいは現」日記 『信心深いカラス』

2017-06-28 | 日記
 カラスの鳴き声で目覚めた。まだ夢うつつの中で聞いていたせいか、確かにカラスが『〜ぼんじ〜そわか』と鳴いたのだ、いや、そう鳴いたと聞こえたのだ。「ええっ?何だって?〜ぼんじ〜そわか?何だぁ?おい!その〜ぼんじ〜そわかの前は何だぁ?頼むから、もう一度、鳴いてくれよ。第一、〜ぼんじ〜そわか、なんてご真言が実際にあるのかどうか?」そんなことを考えながら、ついに目が覚めた。今のは、実際に聞いたことなのか、はたまた夢だったのか、それ以降、肝心のカラスはもう鳴かなかった。
 すっかり目覚めたので、起き上がって、その文句を忘れないうちにパソコンに向かって「ごしんごん」と打って、変換する。瞬時に画面が切り替わる。それらしい項目をクリックする。マウスを下に動かして、すべてのご真言をチェックしたが「〜ぼんじ〜そわか」は見つからなかった。
 「〜ぼんじ〜そわか」ではなく、もっと別の言葉だったのか?そう聞こえたのか?あるいは朝方に見た夢なのか?最早、わからないが、想像は膨らむ。喋る鳥も何種類かいるのだから、賢いとされるカラスが、喋らないとも限らない。喋るなら、ご真言の一つも、習わぬ経の類いで、覚えるかも知れない。中には間違って覚えていて、平然と人に、いやカラスに吹聴するのもいるのだろう。
 それって、まるで自分のことを言っているんじゃないの?

夢あるいは現」日記 『銭湯にて、なぜか青春時代』

2017-06-22 | 日記
 久しぶりに書く。
 ほうせんか病院のロビーコンサートのことや、友遊の里の食堂でのコンサートのことも書かなければならないのに、久しぶりにもかかわらず、別のことを書く。
 まともな歯の数を数える方が早いほど歯が悪いのに、どう言う訳か最後まで残っていた「親知らず」をとうとう抜いた。長い間グラグラしていたので、そのうち自然に抜けるだろうと放っておいたけれど、痛くなって来たので歯医者で抜いてもらった。意外に大きかったので、驚いた。
 次の日は確かめることがあったので『なぜか青春時代』のVHSを引っ張り出して来て久しぶりに観た。ちょうど一回り、12年前の今日6月19日の録画分だった。ベテランの役者は何人か亡くなられていたし、中堅や若手も芝居の世界から、もう足を洗っている者も居るだろう。例によって、ああすればとか、こうすればと愚にもつかないことを思いながら観ていたら、最後あたりの、芝居が盛り上がる所で不意に涙が出て、驚いた。
 その次の日は、やっと念願の散髪に行くことが出来た。千円ほどでパッパッと切ってくれる所より、くだらない大将とのおしゃべりや、手元が大丈夫かと心配になる先代の女将さんの顔剃りの方が良い。今日は、その会話の中に出て来た銭湯にも、帰りに寄った。銭湯も、今は440円だ。木札の靴入れに靴を入れて、番台にお金を置いて、脱衣箱の鍵を腕にはめて、何だか久しぶりな感覚を味わった。そう言えば早い時間帯に居る倶利伽羅もんもんが入って来たり、洗い場の鏡に、永久整骨院なる効き目がありそうな名前の広告があったり、湯船に、和歌山の高名な備長炭がネットに入って沈められて、効能が壁のタイルにデカデカと書かれている。脱衣所の扇風機にあたりながら、さすがに牛乳は恥ずかしいので、オロナミンCを飲んだ。
 外に出て、この何日かの、時間軸が逆回転を始めた甘い感傷も、そそり立つハルカスが一瞬で打ち砕いた。あまりの呆気なさに、驚いた。