ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「風に立つ」

2024年04月17日 | 書籍関連

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問題を起こし、家裁に送られて来た少年を一定期間預かる制度「補導委託」の引受を、突然申し出た父・小原孝雄(おばら たかお)。南部鉄器の職人としては一目置いているが、仕事一筋で決して良い親とは言えなかった父の思いも寄らない行動に戸惑う38歳の悟(さとる)。納得行かぬ、迎え入れる事になった16歳の少年・庄司春斗(しょうじ はると)と工房で共に働き、同じ屋根の下で暮らす内に、悟の心にも少しずつ変化が訪れて・・・。
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柚月裕子さんの小説風に立つ」は、「南部鉄器製造の親方でも在る父親が、或る日突然、自宅で一定期間預かる制度『補導委託』にて非行少年を引き受ける決断した事で戸惑い、そして反発する息子の姿。」を描いている。「家庭を顧みる事無く、又、家族に対する愛情も無かった。」というのが、息子・悟の父・孝雄に対する思いで、元々反発心が在ったのだが、全く相談無しに非行少年の受け容れを決めた事で、より反発心は強まる。当初、「春斗には、一切関わらない。」と心に決めた悟だったが、心に深い傷を持つ彼と接して行く中で、色々な事に気付かされて行き、頑なだった悟の気持ちに少しづつ変化が生まれて行く。そんなストーリーだ。

自分達家族には愛情を見せる様な事が無く、母が病死した際の対応にも許し難い思いを、悟は父に対して持っているのだが、そんな父が何故突然、非行少年の受け容れを決めたのか?自身の子供に対しては優しい言葉を掛けてくれる事も無かった父が、どうして赤の他人の少年には優しい目を向けているのか?父の本棚に置かれていた、場違いな本は何を意味しているのか?多くの謎が解き明かされて行く過程で、“孝雄の本当の姿”が明らかとなる。“親子や家庭の在り様”という物を考えさせられる内容

『孤狼の血』シリーズ」に代表される様に、柚月さんには「男性的なタッチの、硬派な作品。」が目立つ。今回読んだ「風に立つ」も、著者名を知らない儘読んでいたら、男性作家の作品と思ってしまっただろう。個人的に、こういう作風は好きだ。

現実問題としては、“補導委託制度による非行少年の更生”というのは、そう簡単な事では無いだろう。でも、「此の制度による非行少年の更生がで無い。」のならば存在意義を認めたいし、「制度自体、知られる事に成って欲しい。」とも思う。

総合評価は、星3.5個とする。


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