ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「劇場」

2017年06月08日 | 書籍関連

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一番会いたい人に、会いに行く。こんな当たり前の事が、何で出来へんかったんやろな。

 

演劇を通して世界に立ち向かう永田(ながた)と、其の恋人の沙希(さき)。夢を抱い遣って来東京で、2人は出会った。

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小説火花」で、第153回(2015年上半期芥川賞を受賞した又吉直樹氏。其れの数年間、芥川賞受賞作品のレヴェル酷かった事、そして「御笑いタレントとしての又吉氏の知名度から、無理矢理授賞したんだろうな。」という思いが在ったので、正直、読む前は余り期待していなかった。でも、実際に「火花」を読んでみると、文章に“”が在り、「芥川賞受賞も当然だ。」という思いが。個人的に、総合評価は「星4つ」とした。

 

今回読了した「劇場」は、「火花」から2年2ヶ月振り刊行された作品。「火花」が大きな話題となっただけに、次作への一般的な期待度は非常に大きく、又吉氏も嘸やプレッシャーを感じていた事だろう。満を持して世に生み出された「劇場」を、実際に手に取ってみた。

 

売れない芸人を主人公にした「火花」に対し、今回の「劇場」は、無名劇団脚本俳優を担当している男が主人公。「芽が出ず、鬱々とした日々を送っている。」という共通点が在る。

 

主人公の永田、自分の周りにこんな人間がたら、間違い無く“知り合い”にはなりたくないタイプだ。前向きに生き様とする意思が感じられず、兎に角理屈っぽい。粘着質言動で、周りの人間を次々と傷付けて行く。街中で偶然出会った沙希の家に転がり込み、所謂“紐”状態になるのだが、沙希が「こんなにも駄目人間に、何で其処迄尽くすのか?」と思ってしまう程良い子なので、理不尽に彼女に突っ掛かり、傷付けて行く永田に不快感が募って行く。

 

そんな永田と沙希が迎えた結末。御笑いタレント・又吉氏らしい言葉を永田に吐かせるのだが、此れが凄く良い。自分に尽くしてくれる事が当たり前と感じていた永田が、漸く沙希の存在の重要さを素直に認めた結果の言葉なのだが、状況が状況だけに泣けて来る。

 

総合評価は、星4つとする。


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