another Beatle

フリースタイル、且つ、創造的。(これが、理想ですが--)

ピアニシモ/小説  辻 仁成氏のこと-------。

2009-03-06 22:34:30 | Weblog

何が「ピアニシモ」なのかよくわかりませんが、

私なりの解釈をすれば、

この小説の最終章の静けさが、

多分「ピアニシモ」に値するとおもいます。

それほど最初から最後まで

この小説はうるさい音を立てている小説であります。

うるさいという言葉に

まったくの批判的ニュアンスを込めるつもりはありませんが、

主人公の置かれているいろんな環境に対して

幾分粗雑な描写があって、

主人公自身がいつも揺れている感じはします。

ただ最終章だけは、本当に、

ピアニシモ」というにふさわしい雰囲気で終わっています。

 

小説の中の主人公はツイていません。

高校のクラスの中で

周囲のものにいじめられ、殴られたりする場面があり、

結構念入りに描かれているので、

はじめ読んでいて、作者の怨念か?と思ったりもしましたが、

とにかくこの主人公は弱い。

だけど弱い人間が

本気で抵抗した時は

怖いですよね。

最後の方では、主人公をいじめた人間に対して

とうとう怒りが爆発して,主人公が

反撃を加えるのですが、

下手をすると、

刑事事件にさえもなりかねないほどのエネルギーを

内蔵した反撃なのです。

この辺が小説の中でさえも恐ろしいです。

喩えが適切かどうかわかりませんが、

去年、秋葉原で暴走したあのトラックに乗っていた人間の

行動にもなりかねないほどの反撃なのです。

 

 

状況が、高校という設定は物語が作り易いのでしょうか?

綿矢りさの「インストール」「蹴りたい背中」なども

状況が高校生活でした。

静かに思い出してみます。

自分の高校時代を-----。

結構スキャンダラスで、意外なことが、

たくさん埋没しているのかも知れないと思ったりします。

皆さまの高校生活も結構スキャンダラスだったのでは

なかったのではと、直感してます。

よく考えれば、成人になる前の

大人と子供の間にある

揺れている期間ですからね。

 

この小説のクライマックスは、伝言ダイヤルで知り合った、

同世代の女子高校生に

主人公が愛を告げる場面あたりからです。

(伝言ダイヤルでのコミュニケーションがかなり続いた後にです。)

彼は主張します。会いたいと!好きなんだと。

そして会う約束の場所も、時間も決めます。

私はこの下りを読んでいて、恋愛に発展するのかな?と、そんな思いが

頭の中によぎりました。しかし

結局彼女は待ち合わせの場所に現れず、

主人公は俗にいう失恋をします。

 

荒々しく自分の感情を彼女にぶつけ、

周囲にも放射していくのですが、

このあたりの描写が印象に残りました。

女子高校生が、

待ち合わせをすっぽかされて

怒っている主人公にいうセリフも面白いですね。

 

 

そして、映画であればENDINGシーンですが、

それが、この後に来ます。

嵐のあとの静けさが来ます。

この小説のENDINGはこんな感じです。

 

 ただ途中で主人公の父親の自殺があったり、

(主人公は父親を心の中で、あの人と言っている。)

主人公の観念的分身であるヒカルという人間を

この作家は小説の中に登場させたりで、

結構驚く部分もあります。

 

 この作家を調べていますと、

以前に競作で「冷静と情熱のあいだ」という小説を書いていました。

映画化にもなったので、皆様、ご存知かと思います。

たまたまこの映画の主題曲がエンヤだったので、

当時エンヤに興味があったので、サントラ盤を買っていました。

 

 

このCDの 裏を見るとこうなってました。

                                                                  

 映画「冷静と情熱のあいだ」のスチール写真になっていました。

 

 

                    競作の小説   

                   

           違った視点での、それぞれの小説らしいです。

 

 

辻仁成氏は恋愛小説を結構書いているのですね。

恋愛小説ではない小説のほうが、ずっといいと思いますが-------。

ピアニシモ」も恋愛小説でないので、私の好みのスタイルでもありました。

辻氏はロック歌手でベスト盤も出していて、(私は余り知りませんが)

ライブもやっていて、

(奥さんが歌手・俳優の中山美穂さんで)

何年か前、フランス語訳の自著でフランスの文学賞を獲り、

現在はフランスを拠点にして、頑張っているらしいです。

 映画監督、ロック歌手、詩人としての作品、芥川賞の作品、たくさんあって、

書ききれませんが、

機会があれば、また書いてみたいです。

この作家の恋愛小説でない小説であれば、

また読みたいと思います。

 

 

何十年ものブランクがあり、

元恋人同士が再会するという

彼の小説もあるらしいですが--。

 

参考/

 ピアニシモ:音楽の強弱の用語で、「出きる限り弱く」ということらしいですが---。

 

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6 コメント

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辻仁成氏。 (mikoto♪)
2009-03-07 22:17:06
この方の変貌には驚いています。
まさに、揺れ動く高校時代に私はこの方に出会いました。エコーズというバンドのボーカル当時・・・。ライブにも何度か行きました~個性的なバンドが多い中、あたたかく繊細な曲をハスキーな声で歌っていたような記憶があります。(この方~結構ナルシストな振る舞いもしていたような、、、)舞台も予算の関係でしょうか、てずくりで、幕に針金のようなものをとり付け、そこにぎこちない動きの流れ星がながれ~一同大爆笑的なライブでしたよ(何故か覚えています)ZOO(ズー)という曲を辻氏の声で聴くとなんとも哀愁があって~よかった・・・かな。小説は読んだことはありません~
成功したんですよね、この方・・・。人生にはなにがおきるかわかりませんよね^^
ほんとうに (アナザービートル)
2009-03-07 22:33:11
本当に、人生わからないですね。辻さんの歌は余り知りませんが、変貌ぶりの凄さには、ついていけないくらいです。小説はいいと思います。(ただこの人の恋愛小説は読む気にはなれませんが、「ピアニシモ」のような小説は気になりますね。)
ナルシストっていうのは何となく分かるような気がします。YOU TUBEで映像少し見ましたが、そんな感じです---。アントニオ猪木主演の映画の監督もやり(今年)多才な方ですね。
でました! (yukari)
2009-03-07 22:42:15
アナザービートルさんは、私の本棚を覗いた事がおありでは?なんて。。。
ピアニシモ・辻仁成はこれも青春時代に良く読みました。初期の6冊ほど本棚にあります。(最近はまったく読んでませんけれど)
当時、エコーズというバンドを組んでいて(後に川村カオリなどの歌手が歌っています)ZOOと言う曲に打ち抜かれたので、その流れですばる文学賞を獲った「ピアニシモ」から続けて、読みました。本人自体はあまり好きなタイプではないんですけどね。。
とてもさらさらと読めた感じがありました。しかし、今ブログを拝見してやっとこ、うる覚えの内容を思いだしましたよ(^^)また、本棚から引っ張り出して、読まなあきませんねぇまたまた(><)
詩とメルヘンを愛読しておりましたが、そこで東君平というとっても温かな童話作家がおられて、好きで何冊か買いました。後に、辻さんの叔父?か親戚になると知りました。
文系の家系なんですね。
すばる文学賞と言えば、当時同年代の俳優・大鶴義丹氏も受賞していましたが、(スプラッシュ)あまり作家としては大成しなかったのかな?
しかし (アナザービートル)
2009-03-07 23:06:28
しかしyukariさんはよく読んでますね。辻氏の恋愛小説云々という私の言葉は許して下さいね。あまり好きなタイプではない-というのが何故かよく分かります。
だけども魅力的な小説書きますね。

mikotoさんもZOOという歌を認めてますね。
わたしも一度YOU TUBEで、ZOOを聞いてみます。
今は大学の教授もやっていて、広い分野で素晴らしい活躍をなさっているのですね。
年齢が48歳ということで、これからまだまだ
活躍するのでしょうね。

そうですね。今回調べていて、叔父さん(?)が童話作家というのはわかりました。東君平という方は聞いたことがあるような気がします。(はっきりと読んだ記憶はありませんが--)

大鶴義丹氏はどうしてるのでしょうかね。
お父さんの唐十郎の名前が大きかったのでしょうか?
Unknown (ちひろ)
2009-03-11 19:55:31
辻仁成、友達がすごく好きだったので何冊か読みました。

実は、ちょっとニガテでした…。
むしろ高校生の時に読んだからかなあ、
なんかすっと読めるわりには中身まったく覚えてない、みたいな…。
そんな話だったっけ、とブログを拝見してもなんとなーくしか覚えていない…。

もしかしたら、今読んでみたらまた違うかもしれませんね。

「ZOO」は菅野美穂が歌ったバージョンしか知らないのですが、
mikotoさん、yukariさんのコメントを読んでエコーズで聞いてみたくなりました。
私も探してみようっと。




unknown (アナザービートル)
2009-03-11 23:44:44
ZOOを遅ればせながら聞きましたけど、(以前どこかで聞いているはずなのですが--)、イントロの部分から感動しました。いい歌でした。
辻氏はこの頃から、才能あったのでしょうね。
あっさりした感じの歌なんですが、メロデー、詩ともいいですね。

菅野美穂のzooもよかったですよ。少し見直しました。
こんな歌を彼女は歌っていたのですね。
知りませんでした。
ちひろさんの仰るように、辻氏の小説は読みやすいが、記憶に残りにくいのかも知れませんね。

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