作品329(夕焼け日記より)
寒さなどものともせず、
私だってあのように空を見上げながらお湯に浸った。
今は冬の露天風呂には入らない。
まるでお化けに出会うがごとく怖がる。
痛めつけられるとこうまでおどろおどろするものか。
内風呂で、慎重に足を入れていく。
上がってからのソフトクリームを唯一の楽しみにしながら。
ところが今日は思いもよらぬことが起こった。
チューハイとステーキが目についた。
当時のことがふいに思い出されて、
あっと思う間もなく注文してしまった。
暫くして苦しみにあえぎ始めた。
心臓が大騒ぎし始め、胃が鉛のように重たくなってくる。
しまった、やられた、畜生、何と馬鹿な。
後悔、葛藤が脳内を炎となって駆け巡る。
内臓はポンコツ車のようにガタゴトと懸命に動く。
元に戻るまで一週間を要した。
が、もうあの記憶は薄れた。
あれしきのことで諦めてたまるか。
やりたいことがやれないでどうする。
ことの次第はよくわかった。
たいしたことはない、ない。
何度でも挑戦してやる。