シャボン玉の詩

前へ前へと進んできたつもりでしたが、
今では過去の思い出に浸る時間も大切にしなければ、
と思っています。

挑戦し続けてやる (夕焼け日記より)

2014-02-23 09:31:29 | Weblog

作品329(夕焼け日記より)

寒さなどものともせず、
私だってあのように空を見上げながらお湯に浸った。
今は冬の露天風呂には入らない。
まるでお化けに出会うがごとく怖がる。
痛めつけられるとこうまでおどろおどろするものか。
内風呂で、慎重に足を入れていく。
上がってからのソフトクリームを唯一の楽しみにしながら。

ところが今日は思いもよらぬことが起こった。
チューハイとステーキが目についた。
当時のことがふいに思い出されて、
あっと思う間もなく注文してしまった。

暫くして苦しみにあえぎ始めた。
心臓が大騒ぎし始め、胃が鉛のように重たくなってくる。
しまった、やられた、畜生、何と馬鹿な。
後悔、葛藤が脳内を炎となって駆け巡る。
内臓はポンコツ車のようにガタゴトと懸命に動く。

元に戻るまで一週間を要した。
が、もうあの記憶は薄れた。
あれしきのことで諦めてたまるか。
やりたいことがやれないでどうする。
ことの次第はよくわかった。
たいしたことはない、ない。
何度でも挑戦してやる。

 

 


大雪にみる夢 (夕焼け日記より)

2014-02-16 09:59:12 | Weblog

作品328(夕焼け日記より)

こんな日はね、昼間っから風呂沸かして、
どっぷりと浸かるんだね。
何も考えずにぼっとして、目を閉じておればいい。
凄まじい風が雪を叩き付けてくるけれど、
ここには入ってこない。
外の光景を想像すればここは天国よ。
ザマみろ、そんな優越感に浸れる。
温まってきたら、一寸だけ窓を開けるんだ。
雪にまみれた小枝が身震いしながら雪を蹴飛ばしている。
これは凄いぞ、こんな大雪は初めてだ。
ピュッと冷たい小雪が舞い込んでくる。
それが又何とも言えないいい気分だろ。

こんな日はやっぱりこれに限る。
本当はね、
風呂を出て熱燗一杯、いや二杯かな。
温まった体に急所の一撃は如何。
うまいぞ、しびれるほどにうまいぞ。
いいじゃないか束の間の癒し。
たまにはこうして幸せに溶けなくっちゃ。

そんなこと位分ってはいるけれど、
今の僕には夢の話。
なに、夢の話で充分よ。
夢見たくたって見られない人が沢山いる。
自然の猛威の前に人の心は様々よ。

 

 


粋な老人 (夕焼け日記より)

2014-02-09 09:15:44 | Weblog

作品327(夕焼け日記より)

あの男性、八十歳は超えていると思う。
足取りはおぼつかなく見えるが、
毎日欠かさず決まった時間に歩く。
おしゃれな服装で、右手に杖を持っている。
七、八年ぐらい前からよく見かけるようになった。
以来何の変りもなく、今日もまた歩いている。
余程の忍耐力と几帳面な性格が垣間見える。
そうでなければ、あの歳であのようには振る舞えない。
とにかく歩く姿が粋だ。
私などの如き不細工な老人とはまるで違う。
あのような御仁はきっと立派な逝き方をするだろうな、
そんな不遜なことを考えながら、こそっと覗き見る。

このところ親しくやってきた先輩二人が相次いで逝った。
立派な人柄で、見事な最期であったと聞いている。

長く見積もってもあと七年ほどと思われるが、
上手く逝けるかなと心配している。
人は見かけによらぬとは言うが、
見かけでおよその察しはつく。
あの男性には及びもつかないことは分っているが、
さて、私はどの程度のものなのであろう。
怖いな。


今日も無事に終わったよ (夕焼け日記より)

2014-02-02 09:25:16 | Weblog

作品326(夕焼け日記より)

今日も無事に終わったよ。
有難う。
それにしてもあの月、びっくりするじゃないか。
夕日に赤く染まっていく空にばかり気を取られていたら、
それは寂しそうにぽつんと白い姿を見せていた。
やがて薄暗くなって、その正体を現し始めた。
地球上の全てのものを引き付けてやまない輝き。
人々の心を癒し続けてきた友、月という名の衛星。
私の人生もあの中に刻み込まれている。
見つめているうちにいろんな事が思い出され、
涙が出そうになりました。
いつの間にやらあたりは真っ暗。

暫くボーとして、それから、
カーテンを閉め、ベッドに潜り込む。
さて、明日は何があるのかな、何をしてやろうかな。
きっと今日は体調がよかったのであろう。
滅多にない心地よい感触。
そう、大切に、大切に、細心の注意を払って抱いていこう。
いつも調子に乗っては壊してしまうから。
目が覚めたら明日です。
その明日を祈りましょう。