シャボン玉の詩

前へ前へと進んできたつもりでしたが、
今では過去の思い出に浸る時間も大切にしなければ、
と思っています。

モコモコ山 (命輝く より)

2015-04-30 10:51:16 | Weblog

霞み色の、眠たくなるような空。
その向こうにぼんやりと山が見えてくる。
やがてくっきり、その山はモコモコ山であった。
灰色のふわっとした色が斑に見える。
まるで子犬のうぶ毛のようだ。
可愛いね、あの中で寝ころんでみたい。
春の山っていつもこうなんだ。
ずんと近くに行ってみよう。
きっと何かが燃えているよ。
山全体が赤ちゃんなんだよ。
鳥たちがその中で騒いでいるよ。

ここはどこ、とうとう入ってきちゃった。
何だかお伽の国だね、ここは。
凄く穏やか。
凄く空気がおいしい。
目に見えるものすべてが清らだ。
神様の懐の中にいるみたい。
ああ気持ちいい。
幸せに酔ってきちゃった。

一面芽吹きなんだ、命が躍動しているんだ。
感謝の気持ちが噴き出てきて涙が出てきます。
モコモコの山。
間もなく緑の色に変わり、それから黄色や赤色になっていくのですね。
今年もまた見せてくださいね、あなたの全てを。


森の仲間たち (命輝く より)

2015-04-29 10:20:42 | Weblog

おーい、森の仲間たちー。
みんなお早う。
今日は最高の天気だよ。
風は爽やかだし、空気がとても暖かいよ。
早く出ておいで。
緑の匂いをいっぱい出してさ。
緑の音をいっぱい鳴らしてさ。
小さい虫たちもさあ出て来た、出て来た。

子供たち―
じいちゃん、ばあちゃんー
病持ちのみんなもー
さあみんなおいで。
皆で朝の挨拶しようよ。
色んなお話ししようよ。
それから、歌でも歌いましょうか、踊りましょうか。

ほれ見てごらん。
生き物はみんなニコニコ顔だよ。
人も、鳥も、鹿だって、熊だって、
みんな仲間さ。
ほら、幸せの輪がずんずん広がっている。

 

 


心意気 (命輝く より)

2015-04-19 09:45:20 | Weblog

思い切り「空元気」で行けばいい。
元気溌剌のふりをする。
気合十分なふりをする。
悲しみや苦しみなど微塵もないふりをする。
他人にそれと分かったっていいのです。
その心意気がいいじゃないですか。
その人にとって悪い気のする筈はありません。
また始まったぞと思っても、きっと許しています。
いや、かえって心和んでいるかもしれません。
それでいいのです。
きっといいことをしているに違いありません。

生涯「から元気」
いまわに際ににっこり笑ってさよならを言う。
究極の「心意気」
他人の幸せを思う真の優しさはそんなところにあるのです。
そのうちに、
自分自身の気持が本物に変わるかもしれません。
そうなったら最早達人の域、坊主も顔負けでしょうよ。

一つ騙されてみては如何。
何もなしの空っぽの人生よりは余程いいかも。


夫婦の絆 (命輝く より)

2015-04-12 09:06:16 | Weblog

今日はいつになく息切れが激しく、
心臓の発作を心配しながらの、実に頼りない散歩であった。
あと十五分だ、もうすぐだ、自分を叱咤しながら歩く。
うっすらと脂汗がにじみ出てくる。

五十メートルぐらい先を初老らしき人が散歩中であった。
一歩、一歩、慎重にゆるゆると歩いている。
あの人も元気な時があったろうに、
何を患ったのだろうと思いながら、
ずんずんその姿は大きくなってきた。
思ったよりも若い男性であった。
杖を頼りに懸命のリハビリであることは一目でわかる。
歯を食いしばっていた。
次の一歩を踏み出すのが大変のようであった。

ここまで来たのよ、頑張ったわね。
弾んだ声が横の方から聞こえた。
声のした方を覗き込んだ。
ビデオカメラで撮影している初老の女性がいた。
多分奥様であった。

夕飯時二人でビデオ見ながら、今日の成果を語り合い、
未来に向けて希望を繋ぐひと時を想像する。
夫婦の強い絆を思い、胸が熱くなった。

今にもこぼれそうになる涙を拭き取り、
さあおいらも頑張ろう、我が家はもうすぐだ。

 

 


花吹雪 (命輝く より)

2015-04-08 09:22:39 | Weblog

川の水面が真白の模様を描き、うねりながら流れている。
あまりの光景にしばらく立ち止まった。
桜の花に違いなかった。
ずんずん歩を進めて行った。
桜花がいつの間にやら斑に消え、木は赤茶色に燃え始めていた。
さらに歩を進めようとした。
バシャバシャと大きな音がし、水面に飛沫が上がった。
あちらこちらで水面が音を立てて揺れている。
よく見ると鯉が群れを成して騒いでいるのであった。
恋の季節を迎えているのであろうか。

その向こうはまるで雪が降っているかのように、
花びらが音もなくひらひらと川に向かって落ちていく。
花吹雪。
花びらは遂にその役割を終え、水中では鯉が命を繋ぐ。

いよいよ本物の春が来たのだね。
この桜の木も何れ緑に覆われ夏が来る。
自然の営み、凄い。
おいらも間もなくはかない命を落とす。
けれど、ここは変わらぬ散歩道。


癒しの桜花 (命輝く より)

2015-04-05 09:02:20 | Weblog

今年も桜の花は咲いた。
人々の心を根こそぎ掴む華やかさはちっとも変っちゃいない。
よくぞまあこんな植物が地球上に現れたものだ。
見とれていたらただもう呆然となる。
花の塊の中に吸い込まれそうだ。
ここはこの世か、夢の中にいるのではないか。
夢ならばそれでよい。
束の間であっても幸福感に浸れる。
花の下で人々は集い、心開き、幸せに酔う。
良き夢なればこそいつまでもと願う。
やがてゆうげは暗闇時を迎え、
夜光の中で桜花もにこやかに見守り、ともに喜ぶ。

不幸にも悲しみや苦しみを背負った人々には辛い時だ。
わが身のことぞのみ眼中にあって桜花は遥か彼方だ。
されどこの花は悲しみをあらわにする。
人の心の内が桜花を感じ取り、
花弁がそれに応えるのであろう。

知ってか知らずか、この木は何のためらうこともなく、
今年も精一杯の花びらを広げた。
来年も、再来年もきっと人々の心を待ち続ける。


不思議の花 (命輝く より)

2015-04-01 19:55:35 | Weblog

満開になった桜の花の迫力は他を圧倒する。
大きな木の小枝の先まで直に花をつけるんだもの。
まるで絵本から魔法の花が飛び出してきたようだ。
生きた植物だと言われても即信じられない。
この花は、しかしこの世の花だ。
この花に囲まれたら脳は霞み、口は開き、目は垂れ下がる。
花弁の大群が一気に全身を覆い尽くすのだ。
心の中までもが花弁で溢れる。

よく見たらこの花びら、美しいだけではない。
一つ一つの花びらは小さくとも凛としている。
手触りは明らかに生身の柔らかさだ。
生きている。
いとほしく震えている。
そして、これらの一枚一枚が一輪の花を形成する。
それから、気の遠くなるなるような花の群。
張り裂けんばかりに懐を広げ、膨らみ、尊い命をさらけ出す。
人々の心を開かせ、活力を与え、平和の底力を知らしめる。
長い歴史を歩んできた不思議の木。
究極の癒しの花。
人々は感嘆の声を上げ、感動に酔う。

この不思議の花をあと何回見るかと思うと胸熱くなる。