地形学とGIS / Geomorphology & GIS

ある研究者の活動と思考の記録

おもしろ写真 その2

2010-01-31 | ジョーク
前回記したように,旅先で撮影した冗談めいた写真を,このブログにときどき載せることにした.しかし,第一弾の掲載後にタイトルで悩んでしまった.最初は「おもしろ写真 No. 1」としたが,出した写真が実は面白くないかもという,お笑い芸人みたいな悩みが生じた.また,No. XXとすると連番ではなく順位に見える可能性にも気づいた.No. 1が最高ではないのに.

そこで,「ヘンなモノ写真 その1」と変えてみたが,これもイマイチ.笑いがとれない時の問題は回避できるが,「ヘン」と感じるかどうかは,やはり主観による.また,「ヘン」は響きが悪い.結局,「おもしろ写真 そのXX」とすることにした.些細なことに悩む自分が滑稽であるが,今後何度も出るタイトルなので,考えて結論を出した.

今日の写真は,ピナツボ火山の調査の際に撮影したフィリピンの日本食のファミレス.英語名は「Teriyaki Boy」だが,日本語名は「太った少年」.健康を気遣って入るのをためらってしまいそうだ.

このネタはフィリピンに行った日本人の間では有名らしく,ネットにいろいろ記事が出ている.でも,なぜ日本語名が「太った少年」なのかは,ほとんど議論がない.

そこで僕の勝手な仮説.「Teriyaki Boy」をフィリピン人が創業した際に,アメリカ起源で日本にもあるファミレス「Big Boy」に影響され,歩いている太った少年をキャラクターにした.また,日本食レストランなので,日本語の表示もつけることにした.ただしその表示はフィリピン人には意味不明なので,文字の芸術性(?)を考慮し,「テリヤキ少年」ではなく「Big Boy」=「太った少年」とした.

それにしても僕は,どうでも良いことをあれこれ考えてしまう.今のように超多忙な時ほど,そうなる傾向がある.ストレスが増えると,別の「明るい悩み」を持つことによって,精神の破綻を防ごうとするのかもしれない.

Untouchable memories seem to keep haunting me.
(Sukiyaki / A Taste of Honey)

おもしろ写真 その1

2010-01-29 | ジョーク
僕が自分のホームページを大学のサーバに作ったのは,1996年のこと.間もなく,調査に行った場所でたまたま撮影した,ちょっと笑えるモノの写真を掲載し始めた.「VOW」と似ているが,海外ネタが多い点は違う.その後,何人かの方から,「あの写真集の更新を楽しみにしています」という暖かいお言葉をいただいた.

写真集は今も大学のホームページに残っているが,昨年ページのデザインを変えたときに地味な場所に移したので,目に触れにくくなった.また,その内容は大学の公式なページよりも,このブログに適するだろう.

そこで,写真集の内容を少しずつこのブログに移すことにした.もし新しい写真が撮れたときには,それも載せていきたい.

とりあえず第一弾.上の写真は,イギリス・ウォリングフォードにあるLittle GablesというB&Bの食堂で,2005年に撮影したもの.Centre for Ecology and Hydrologyに出向いた時の常宿である.ポイントは,卓上の表示板が「No Smoking=禁煙」ではなく「No Smokers=喫煙家お断り」となっていること.この場所で吸わなくても,服が臭うからダメ?

なお,上にはポルトガル語で「禁煙」と書かれている.この表示板は恐らくポルトガル製で,ポルトガル人が変な英語をつけてしまったのだろう.

I'm a joker.
I'm a smoker.
(The Joker / Steve Miller Band)

災い転じて福

2010-01-25 | 昔話
前回に引き続き,卒論に関連した話です.写真は,学部3年の春休みに撮影したもので,阿蘇カルデラの中央火口丘にある夜峰山(913 m)の中腹からカルデラの南東部(南郷谷)を見たものです.春霞のために,ぼやけています.

このときは,国鉄が発行していた20日間有効の九州周遊券を使って旅行をしていました.貧乏学生だったので,激安で泊まれた大学の自治寮の談話室,車中泊,駅寝などで過ごし,たまに銭湯やコインランドリーに行きました.今なら確実に体を壊しますが,当時は何とかなりました.

阿蘇では,南側の阿蘇下田駅(現:阿蘇下田城ふれあい温泉駅)から中岳の火口を経て,北側の阿蘇駅に徒歩で向かいました.一日がかりのルートです.ところが出発して間もなく道を間違え,夜峰山の南斜面に行ってしまいました.誤りに気づいて戻りはじめましたが,その際に見えた風景に感動して撮ったのが上の写真です.狭い範囲に山地斜面,山麓緩斜面,扇状地,河岸段丘,蛇行河川などが分布しています.まるで箱庭のようでした.

当時,地形学に興味を持ち,大学院への進学を希望していました.卒論のフィールドは実家の近くにする予定でしたが,上の「箱庭」に魅了されてしまいました.ここなら短時間でいろいろな地形を研究できると思いました.九州周遊券と熊本大学の寮での宿泊を組み合わせれば,お金はさほどかからないこともわかりました.結局,阿蘇を卒論のフィールドにしました.

ノーベル賞をとるような偉大な研究が,手続きを間違えた実験から始まったというような話を時々耳にします.僕の場合は,卒論で優れた研究を行うことにはなりませんでしたが,その後につながる多くのアイディアを得ました.火山の中に面白い斜面や河川地形があるのは,全く予想外でしたが,道を間違えたために知ることができました.明らかに「災い転じて福」でした.

なお,九州旅行の時には「ウォークマンもどき」で音楽を聴いていました(SONY製は高くて買えなかった).その時に,一人旅に実に似合うと思った曲を引用します.

We sailed for parts, unknown to man.
(A Salty Dog / Procol Harum)

シラス台地の河成段丘

2010-01-16 | 昔話
毎年この時期に,卒論や修論のために奮闘している学生を見ると,自分の学生時代を思い出します.25年前に卒論の調査を阿蘇でやっていたときには,熊本大学の横山勝三先生をしばしば訪問し,情報をいただきました.当時,横山先生はシラス台地の河成(河岸)段丘を研究されていました.一度,先生の調査に同行する機会がありました.

調査の際には,段丘の地形的特徴と段丘面の上の火山灰を調べました.シラス台地の河成段丘は,火砕流台地の原面を掘り込んでできた侵食段丘です.写真は,調査の際に撮影した段丘面の例です.これらの段丘の上に載っている火山灰の層序は,台地の原面の上のものと全く同じです.このことは,入戸火砕流の噴出によってシラス台地が形成された直後に,段丘も形成されたことを示しています.横山先生は,台地の形成後,植生が侵入するまでのごく短期間のうちに,段丘ができたと考えておられました.

昨年,このブログに段丘地形の呼称に関する話を書きました.その記事に対するコメントの中で,田代先生が「一気呵成にできる河成段丘」というダジャレを書かれました.シラス台地の河成段丘は,その実例になります.もちろん,通常の河成段丘は数千年といった長い時間をかけて形成されます.シラス台地の場合には,巨大噴火の火砕流によって突然高い台地ができ,その表面に植生が全くなかったので,大規模な侵食が急速に生じたという特殊事情があります.

なお,僕が小学生か中学生の時には,「シラス台地=火山灰台地」と学習しました.これは大きな誤解をもたらしました.火山灰が長い時間をかけて降り積もったために,台地ができたと思ってしまったのです.火山灰の噴出で有名な桜島があるので,それと結びつけて考えた気がします.また,実家の近くの台地の上に,御嶽山の火山灰などに由来する「信州ローム」が載っていたことも,誤解を助長したと思います.

It all took place so quick.
(Your Latest Trick / Dire Straits)

ミニ・ホームパーティー

2010-01-10 | できごと
昨日,我が家でミニ・ホームパーティーを行いました.ミニがつく理由は,臨時の授業,家族との予定,修論の執筆などのために,参加できなかった人が多かったためです.開催を急に決め,事前に日程を調整せずに5日前にアナウンスしたのが原因です.それでも僕と家内の研究室の関係者+僕の家族が,全部で11名集まりました.

飲み物と食事類は我が家からの提供でしたが,甘味は持ってきていただいたものを全員で楽しみました.その中には,Dosi君提供の「志ち乃のどら焼き」がありました.志ち乃は土浦のお店で,以前に土浦に住んでいたときに,よく買っていたものです.しばらく会わなかった同級生と再会したような感じでした.

卒論生のOchi君は,「これが最後の息抜き」と話していました.卒論の提出は2月初頭です.

3月に再度ホームパーティを開きたいと思っています.修論生と卒論生が課題を無事に終え,リラックスして来てくれることを望んでいます(時期的に卒業旅行と重なってしまうかもしれませんが).

The Coke's out in the icebox.
Popcorn's on the table.
(Having a Party / Sam Cooke)

1 + 1 = 3

2010-01-08 | お酒
Orvalビールおよびカナのワインに続く,特定のお酒の話です.スペインのスパークリング・ワインには,シャンパンと製法は同じで,値段が相対的に安い「カバ」があります.そのカバの中でも,コストパフォーマンスが高いと評判なのが「ウ・メス・ウ・ファン・トレス・ブリュット」です.呪文のような名前ですが,辛口のスパークリング・ワインを示す「ブリュット」の前は,スペイン語で「1 + 1 = 3」の意味だそうです.ラベルには,この間違った数式が大きく書いてあります.

先日,これを夕食時に飲んでいたら,小4の娘が数式を見て笑い始めました.一方,一緒に飲んでいたカミさんは感心していました.以前,カミさんの先輩の研究者が「1 + 1 = 2 は間違い.もっと大きくなる」と話していたそうです.共同研究からは,個人研究の総和よりも多くが生まれるという意味です. これは僕の経験からも正しいです.

一方,カミさんは先輩に「1 + 1 < 2 もあり得ますよね」と言ったそうです.ネガティブな見方ですが,これも正しい.二人の組み合わせが悪ければ,相互理解に時間を要したりするので,かえって効率が下がってしまいます.

また,厳密には「1 + 1 = 3」ではなく「1 + 1 = A(1) + A(2) + アルファ」と記すべきなのでしょう.A(i)は個人i の力量に比例するパラメータで,標準を1とします.一人でもきちんと仕事ができる人たちが良いコンビを組むと,最強になるはずです.

ところで,ワインに記されている数式はワイナリーの名前で,そのホームページには次のように記されています.

As far as the name 1 + 1 = 3 is concerned, we set ourselves the challenge to convert our business into something more than two.

仕事の中で 1 + 1 を 2 以上にしたいという願いが,名前の由来とのことなので,僕らが飲みながら話したことは適切だったようです.

One and one is two.
What am I to do, now that I'm in love with you?
(One And One Is Two / Strangers with Mike Shannon)

五割以上の増加

2010-01-05 | 論文や雑誌
昨年,大変だったことの一つが,雑誌Geomorphologyのエディタとしての仕事の増加.一昨年に僕が扱った投稿論文の数は90本弱だったが,昨年は140本だった.5割以上の増加である.僕が担当することになっている,斜面崩壊や土壌侵食に関する論文の増加が最大の原因である.

画像のグラフは,各月に僕に割り当てられた新規投稿論文の数を示している.9月以降がやや多く,これは夏に発表されたインパクトファクターの上昇が原因かもしれない.しかし,最少の月でも8本届いている.前年の月平均は8本未満なので,年間を通じてノルマが増えたことになる.

Geomorphologyは月に2冊発行され,その2/3程度を通常号が占めている.一方,通常号のエディタは3名なので,個人あたりの負担がかなり大きい.2008年には,他の2名のエディタは僕よりも多くの投稿を扱っていたが,昨年は3名の担当分がほぼ同数になった.ある意味では3名のバランスがとれたといえるが,他の2名は英語を母国語としている.原稿のcopy editなどに要する時間は,僕が最長のはずである.

昨年は,このような負担の急増を予想していなかったため,混乱をきたし,他の仕事が停滞してしまった.約1年前に立てた,自分の論文発表に関する目標も空洞化している.今年の担当論文の数がどうなるのか全くわからないが,今の時点で昨年並みと覚悟を決め,それに対応できる生活を送る必要がある.年末に「多忙のため」と言い訳をするのではなく,良い報告ができるようにしたい.

なお,負担が特にきつい時には,エディタをやめたいと思うこともある.でも,この種の仕事が日本人あるいはアジア人に回ってくることは少ない.また,この経験を通じて得た知識の中には,若手に還元できるものが相当ある.簡単に手を引くべきではないと考えている.

You find you can never refuse it.
(Love Hurts / Kenichi Kurosawa)

謹賀新年

2010-01-01 | おでかけ
あけましておめでとうございます.昨年に引き続き,諏訪の実家で新年を迎えています.

関東平野の温暖な気候に慣れてしまったので,この時期に寒い場所に来るのは,ちょっと大変です.とくに今年は,年末に娘が持ち込んだ風邪が家族全員に広がり,それがようやく一段落したところなので,例年よりもきつい感じです.でも,正月を実家で両親と過ごすのは,年の初めの基本です.

今日は安曇野にドライブに行きました.写真のように,田んぼに白鳥がたくさん集まっていました.背後には,修士論文のフィールドであった北アルプス・常念山脈の山麓が写っています.真冬には調査をしなかったので,懐かしいというよりも新鮮な風景に見えました.

昨年は良いことと試練が交錯した年でした.でも,大晦日の夕方に,研究室の元メンバーから素晴らしいニュースが届いたので,良い年として締めくくることができました.

今年もよろしくお願いします.

She sits by the fireside.
The room is so warm.
There's ice on the window.
(Passing the Time / Cream)