地形学とGIS / Geomorphology & GIS

ある研究者の活動と思考の記録

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年間93万回以上!

2015-05-17 | 論文や雑誌

編集を担当している Geomorphology のウェブページを見たら、冒頭に次のような記述が入っていました。

2014年における論文全文のダウンロードの回数が93万以上

これにはびっくりしました。世界中の人がこれだけ読んでいると思うと、やはり質の高い編集をしないといけないと思いました。なかなか大変なのですが。

なお、その下には年間の投稿数は800以上で、40ヶ国以上から来ており、受理された数は400以上と記されています。

これで採択率が約50%であることがわかります。実際には投稿前に研究の内容をある程度検討する特集号では採択率が高くなるため、一般の投稿論文の採択率は50%よりも少し低くなっています。

地形学に関する良い原稿がありましたら、ぜひ Geomorphology に投稿して下さい。よろしくお願いします。

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論文校閲業者の宣伝コメント

2014-12-10 | 論文や雑誌

前回の投稿「英語がダメなことによる論文のリジェクト」に次のようなコメントが来た。

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英文校正・翻訳サービス XX と申します。

(URL)

よろしければご参照ください。

ご好評の「英語論文執筆のヒント」も無料で発行させていただいております。

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要は宣伝。しかしこれは僕に宛てたものなのだろうか?

いずれにせよ、こういうところに書き込みする業者というのは、仕事が信用できない印象を与え、宣伝としては逆効果だと思う。

よって業者のためを考えて、コメントを削除いたしました。

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英語がダメなことによる論文のリジェクト

2014-09-15 | 論文や雑誌

久しぶりに Geomorphlology 誌の編集の話。最近、改稿を経て受理できると思っていた論文を最終的にリジェクトするケースが二つあった。理由は英語をちゃんと直してくれないこと。

投稿論文の最初の査読では、英語のみを理由に論文を落とすことはないと考えて良い。内容が良ければ英語を改善することを条件に改稿の投稿を認めるのが、国際誌のあるべき姿だと思う。そうでないと native などの特定の国民や人種が有利になり、国際誌ではなくなる。

しかし掲載される論文の英語は良質でなければならない。僕はよく著者に、「信頼できる英語圏の研究者か英文校閲の業者に原稿を直してもらってから次は投稿してくれ、これが受理の条件だ」とメッセージを送る。するとほとんどの著者は対応してくれる。しかしときどき、対応してくれないことがある。

このような場合には、「ちゃんとこちらの指示に従ってくれ。次の投稿の際には、誰、もしくはどの業者が英文を直したかを明記してくれ。これらがなされていなければ、この段階であってもリジェクトするだろう」と書き、再投稿を促す。すると大半の著者は慌てて対応してくれる。しかしまれに、著者だけで英語をちょこちょこ直したような原稿を再度送ってくることがある。今回リジェクトした二つの論文は、共にこのケースだった。

著者の中には「日本人のお前が英語の質を評価するな、俺はちゃんと書けている」という思いがあるのかもしれない。一方で僕が「英語が悪い」と書く際には、明らかな文法の誤りのような具体例を記述し、「これは一例にすぎず他にも問題があるから英文の校閲が必須」と書く。感覚ではなくロジカルに判断したことを伝えている。

また、「著者自身で直してもばれないだろう。エディタは日本人だし」という思いもありそうだ。しかし英語力が弱い著者が引き続き原稿を直しても、真に改善されていないことは容易にわかると考えた方が良い。英語の質には執筆者による大きな差がある。

いずれにせよ、このような形で論文がリジェクトになるのは、それまで原稿を良くしようと努力してきた査読者や編集者にとっても非常に残念である。一方、著者がどう感じたのかは不明である。たまに「なぜ俺の論文をリジェクトしたんだ」というような挑発的なメールが僕に来ることがあるが、上記のような形でリジェクトした例で、その後に著者がコンタクトしてきたことはまだない。著者にとっても残念な話かと思うが、一方で「俺の英語を他人に直させるような雑誌には論文が載らなくて結構だ」と思っている可能性もある。

いろいろあるが、また処理すべき原稿がたまってきてしまったので、淡々と編集作業を続けたいと思う。

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契約更新

2014-05-25 | 論文や雑誌

Geomorphology のエディターの契約を更新しました。3年間です。

日本の雑誌の編集委員長は2~4年くらいの任期が一般的です。同じ人は長くやらないのが美徳という感じがあるようです。しかし欧米の雑誌には違うものがあります。僕は2003年から担当してきたので、新契約で計14年間の担当になります。3人いるエディターのうち、米国の Marston 氏は1998年から担当し、英国の Plater 氏は2006年から担当です。いわば安定したチームになっています。

一方、4月から空間情報科学研究センターのセンター長にもなりました。こちらは2年間の任期で、再任があるかもしれません。会議への出席や事務関係のメールが急増しており、かなり混乱しています。具体的には書きませんが、家族の関係も増えています。

50台の前半の過ごし方が問われていますが、とりあえずは与えられた内容の達成を目指すしかありません。同時にやりたくてもできないことが最近増えたと感じています。しかし体は一つしかなく、若い頃のような体力はないので、できない状況になることは恵みだとも考えています。

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Your Paper, Your Way

2014-03-11 | 論文や雑誌

雑誌 Geomorphology の他のエディタおよびエルゼビア社と、Your Paper, Your Way (YPYW) という新システムを導入するかを議論しました。これは、雑誌に投稿する原稿のスタイルを、論文が出版されるときの形式に対応させなくても構わないというものです。たとえば文献リストでの記載は、Geomorphology では

Oguchi, T., 2014, A paper on Japan. Journal of Japan 35, 22-45.

のように書きますが、投稿原稿では

OGUCHI, Takashi (2014): 'A Paper on Japan'. Journal of Japan, Vol. 35, pp. 22-45.

となっていても、内容は同じなので構わないというものです。出版前のスタイルの変更と統一は、エルゼビアが責任を持って行います。

当初は僕を含むエディタは、YPYWの導入に消極的でした。理由は、形式が多様だと内容のチェックも難しくなる、それが査読者やエディタの負担を増やし、最終的な品質も下がるのではというものでした。しかし、すでにYPYWを導入した雑誌の投稿者、査読者、編集者にアンケートを行ったところ、問題点よりも利点の方が多いという結果が示されました。その結果を見たことと、導入しないことが投稿数の減少につながるような懸念もあったので、Geomorphology でも導入を決意しました。

従来は論文を投稿する際に、雑誌の形式に原稿を合わせることが大切な作法と考えられていましたが、もはや常識ではなくなったようです。思い返せば論文がオンラインの pdf で流通するようになったのも、比較的最近のことです。堅い感じがする学術出版においても、いろいろな変化が新たに生じています。

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203本

2014-01-13 | 論文や雑誌

ご挨拶が遅くなりましたが、本年もよろしくお願いします。

雑誌 Geomorphology の編集者として僕が昨年扱った論文の数を、エルゼビア社の人が知らせてくれました。203本! 過去最高です。この数字は1年間に受け取った新規投稿の数です。査読の後に修正され、再投稿されたものは含みません。この種を含めると、年間300回くらいは「新しい原稿が届いた」という通知をメールで受け取っています。

ここ2年間ほど、論文のハンドリングがあまり上手くいっておらず、昨年の夏にはバックログ(取り扱いが遅延している原稿)が40本を超えてしまいました。大変滅入りましたが、その後、徐々に減らし、今は一桁まで下がりました。

バックログの数が一桁でないと、個々の論文の状況を容易に把握し、迅速な対応をとるのが困難です。ためてしまうと、悪循環的に一つの論文あたりの処理時間が増えてしまいます。今年は常にバックログが一桁で収まるように、やっていきたいと思っています。

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クリスマスの時期

2013-12-23 | 論文や雑誌

クリスマスの時期に雑誌のエディタとして少し気を遣うことがある。それは論文のリジェクトという結果を著者に送るかどうか。

キリスト教徒が多そうな国の場合には12/24と25は避けている。中国歴の新年の時期には中国や台湾からの投稿者に気を遣う。日本の場合は12/31~1/3を避ける。

他にイスラム教の祝日もあるが、イスラム圏からの投稿は少ないこともあり、まだ考慮したことがない。しかし僕はシリアでの過去の調査等を通じて、イスラム教には通常の日本人よりも親近感があるので、考慮すべきと改めて思っている。

それ以上細かいレベルになると、情報も少なく難しい。宗教関係以外に国や地域のお祭りなどもある。楽しんでいる時にスマホでメールを見たら、リジェクトという通知が来て、酔いがさめることもあるだろう。さらには個人の誕生日とかもあるが、これはさらに把握が困難。

Geomorphology のリジェクト率は約5割。リジェクトしなくても、著者が改稿できないこともあるので、最終的な採択率は4割程度。これらの値は徐々に下がっており、リジェクトの通知を出す例が増えている。

すまないと思う一方で、僕も楽しい気分の時に投稿論文のリジェクトを知った経験があるので、お互いさまと思うことにしている。そう割り切らないとエディタとして活動できなくなる。今日もクリスマスイブの前日で微妙だなと思いつつ、2つ通知を送った。

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文献リストでの論文の並べ順

2013-12-16 | 論文や雑誌

英文学術雑誌の編集を担当しているので、毎日のように誰かが作成した英語の文献リストを見ている。フォーマットの不統一が気になることが多いが、別のよくある問題は、著者が3名以上の論文の並べ順。英文論文では Smith et al. (2013) のような形で引用するが、主著者が同じ Smith et al. (2011) も引用している場合、 文献リストでどちらを先に書くかについて、しばしば混乱がみられる。文献リスト全体としては、第一著者の家族名のアルファベット順が原則だが、この場合、それは同一である。

雑誌のポリシーによって異なるかもしれないが、常識的には出版の年代順に並べる。つまり、Smith et al. (2011) を先にする。しかし、そうなっておらず、第二著者の家族名のアルファベットを考慮した順番にしている人が時々いる。これは、著者が2名の場合に、Smith and Davis (2013) を Smith and Jones (2011) よりも先にするというルールを、著者が3名以上の場合にも適用したためである。

なぜ著者が2名の場合には第二著者の家族名を考慮し、3名以上の場合には考慮しないのか? それは読者が本文中での引用を見て文献表と対応させる際に、第二著者の名前を知っているかに依存する。2名の場合には、本文中では Smith and Jones (2011) のように引用されるが、3名の場合には Smith et al. (2011) のように引用される。後者の場合、読者は第二著者の名前を文献表を見るまで知らない。よって、読者が当初持っている第一著者の名前と出版年代という情報のみから探しやすいように、文献を並べるべきである。

これに限らず、論文を書くという作業の際には、いかに読者の立場に立って考えられるかが試される。著者は研究の内容を熟知しているため、内容をラフに書いても理解できる。しかし研究を初めて知る読者には、ラフな書き方では内容が伝わらない。論文を査読雑誌に早く出版するためには、研究の内容が良いだけではなく、読者の側に立つという気配りが必要である。これは経験とともに習得可能なものだが、習得しようと意識していないと、なかなか身につかないかもしれない。

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ブログの再開

2013-12-14 | 論文や雑誌

このブログ、長期間放置していましたが、時々使おうと思い直しました。僕のSNS関係は、ほとんどツイッターのみという状況になっていました。ツイッターではアウトリーチ的に地形学や地理学と関連した種々の画像の紹介や話題の提供を中心に行っているため、僕の重要な職務については、ほとんど書いていません。それは学術雑誌の編集です。

2003年からエルゼビアの雑誌 Geomorphology の3人の編集委員長の一人をつとめてきました。世界の地形学者によく知られた雑誌です。研究者にはいろいろなタイプがありますが、僕にとってはこの職務が最大の個性と思っています。もちろん学生を含む仲間と研究もしますし、学会で活動したりもしますが、それらは他の研究者も行っていることです。また、残念ながら僕は超一流の雑誌に論文をどんどん出すような研究者ではないので、論文の執筆活動は強い個性にはなっていないと考えています。

そこで、雑誌の編集に関する話題を中心に、研究活動に関する少し堅めの内容を書くという形でブログを再開したいと思います。この種の記録を残しておくことは、もしかすると後進の役に立つかもしれません。

なお、久しぶりにブログにログインしたら、いろいろ不備が生じていることがわかり、それを直す過程で、ツイッターに「ブログと連携しました」という通知が自動的に流れてしまいました。これは、ある日のツイートをまとめてブログに投稿するような機能で、使うつもりはなかったのですが、操作ミスをし、しばらくツイートが流れたのにも気づきませんでした。歳をとるにつれて、こういうポカが増えてきたと実感しています。

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20雑誌の査読

2011-01-16 | 論文や雑誌

僕は,英語論文の査読を日常的にやっています.大半は自分がエディタになっている雑誌 Geomorphology に投稿された論文です.この場合,論文が扱っている分野の専門家が外部査読者になっているので,僕は通常の査読とは異なり,体裁のチェックを相対的に重視します.

また,Catena や Geographical Research といった,編集委員になっている雑誌の査読も時々やっています.この場合は,外部査読者と同様の立場での査読になり,体裁よりも科学的な内容をチェックします.

これらとは別に,突然メールで,雑誌のエディタから査読を依頼されることもあります.このような形で査読を担当した雑誌のうち,インパクトファクターを持つものの数が,ちょうど20になりました.

僕は地理学の研究者なので,広い視野を持つことが重要です.いろいろな雑誌から査読を頼まれることは,多様な分野に関係する研究者であることを示唆するので,自分としては光栄です.

関心のない方もいるかと思いますが,20の雑誌の名前を以下に列記します.

  1. Acta Geologica Polonica (Polish Academy of Science)
  2. Computers & Geosciences (Elsevier)
  3. Disasters (Blackwell)
  4. Earth Surface Processes and Landforms (Wiley)
  5. Estuarine, Coastal and Shelf Science (Elsevier)
  6. Geoarchaeology (Wiley)
  7. Geoderma (Elsevier)
  8. Geografia Fisica e Dinamica Quaternaria (Comitato Glaciologico Italiano)
  9. Geophysical Research Letters (American Geophysical Union)
  10. Hydrology and Earth System Sciences (European Geosciences Union)
  11. Journal of Coastal Research (Coastal Education and Research Foundation)
  12. Journal of Geography in Higher Education (Taylor & Francis)
  13. Journal of Hydrology (Elsevier)
  14. Land Degradation and Development (Wiley)
  15. Natural Hazards (Springer)
  16. Photogrammetric Engineering & Remote Sensing (American Society for Photogrammetry & Remote Sensing)
  17. Quaternary International (Elsevier)
  18. Quaternary Research (Elsevier)
  19. Quaternary Science Reviews (Elsevier)
  20. Remote Sensing of Environment (Elsevier)

And I walk one, two flight, three flight four.
Five six seven flight, eight flight more.
(Twenty Flight Rock / Eddie Cochran)

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縄文海進

2010-08-28 | 論文や雑誌
今週は縄文海進について,ツイッター上で多数のやりとりがありました.

学部生の時,温暖な縄文時代には海が3 m くらい今よりも高かったことを学びました.関連して,千葉の低地で行われた阪口先生のボーリングを手伝いました(写真).地層の色や粒径が深さにより変化し,貝も出てきました.こういう地道な作業を繰り返し,古代の海の広がりを調べることを知りました.その後,多数の地理や地質の研究者の努力の積み重ねにより,縄文海進とその後の海退の様子が,より詳しく明らかにされました.

ところが21世紀に入ってから,縄文時代の海が非常に高いところまで入っていたという話が,大衆に流布されていることを知りました.その影響は予想外に強く,朝日新聞社のアエラに,海抜50 m を超える多摩丘陵の谷の中まで縄文の海が入っていたことを示唆する記事が出ました.

そのような経緯で発生したツイッターでの議論を,考古GISを専門とする近藤君が「東京地形ブームと縄文海進」として,まとめてくれました.関心のある方はご覧下さい.僕は @ogugeo として発言しています.

Lonely rivers flow to the sea.
(Unchained Melody / Al Hibbler)
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インパクトファクター 2009

2010-06-21 | 論文や雑誌
最新(2009年)のインパクトファクター(IF)が発表されました.IFを持つ雑誌の編集に関わっている人にとって,緊張する瞬間です.僕がエディタの一人になっているGeomorphologyの値は2.119でした.大幅上昇だった昨年の2.339よりも少し下がりましたが,2以上をキープしました.

今回,事前にIFの予測を試みました.IFはトムソン・ロイターが独自のデータベースを用いて計算するため,正確な予測は不可能です.でも,SCOPUSというエルゼビアのデータベースを使い,IFに類似した値を算出してみました.その値は2より少し低かったので,発表された値を見て嬉しくなりました.

一方,Geomorphologyを担当するエルゼビアの職員は,「去年よりも少し下がって残念」とコメントしました.事前に予測をしていなければ,僕も残念と感じたでしょう.

IFの予測は,他の地形学の雑誌であるEarth Surface Processes and Landforms(ESPL)とCatenaについても行い,ESPLのIFはGeomorphologyよりも約0.1低く,CatenaのIFは約0.3高いと推定されました.前者については実際の結果も同様でしたが,後者はかなり異なり,CatenaのIFは1.933にとどまりました.それでも昨年よりも上がっていますし,ESPLも2.055まで上昇しました.

結局,今年は3つの雑誌のIFが全て2前後になりました.また,最近の動向を見ると,上のグラフのように全ての雑誌のIFが上昇傾向にあります.これは地形学にとって良いことです.

なお,以前も書いたように,3つの雑誌の中ではGeomorphologyの規模が明らかに大きいです.このため,IFとは異なる基準で雑誌の質を評価するアイゲンファクターを使うと,Geomorphologyの値が有意に高くなります.この事実は重要と思っています.IFを上げる一つの手段は,雑誌の規模を小さくし,非常に良い論文だけを載せることです.でも,学問に積分値として貢献するためには,雑誌の規模をそれなりに大きくすべきです.

Love on sudden impact.
(All Systems Go / Donna Summer)
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烏川流域とカラス盆地

2010-05-20 | 論文や雑誌
最近,論文の被引用数が重視されている.僕が少し前に人事関係の資料を提出した際にも,自分の論文の被引用数を書く必要があった.Web of ScienceやScopusといったデータベースを使うと,主要な雑誌における論文の引用数を把握できる.被引用数による評価には問題もあり,誤りの例として引用されても数が増えるし,真に個性的な論文よりも時流に乗った論文がすぐに引用されやすい.しかし,インパクトファクターを含め,被引用数が論文や雑誌の評価の指標になっている現状を認める必要もある.

最近,Computers & Geosciencesに2003年に書いた地形学の論文が,International Journal of Remote Sensingに2009年に出た論文で引用されたことを知った.その標題を見て驚いた.調査地域がトルコのKarasu Basinだったからである.引用された僕の論文は,北アルプスの烏川流域に関するもので,こちらもKarasu Basinと呼べる.トルコのKarasu Basinは,論文に載っていた上の画像のように,底が平坦な盆地である.一方,烏川流域は急峻である.地球科学の研究者には周知であるが,Basinの語は盆地と流域という二つの意味を持つ.

トルコ語のオンライン辞典でKarasuの意味を調べたところ,その一つに「slowly moving water=淀んだ水」があった.これだと思った.平坦な場所にぴったりである.

論文の著者であるDr. Kaanにメールを送ってみた.「論文読んだよ.面白かった.引用ありがとう.調査地域の名前が偶然にも同じだね.そっちは淀んだ水だけれど,こっちはcrow=黒い鳥だ」と書いた.数日後に来た返事を見て驚いた.「Karasu=黒い水だ.トルコ語でkara=黒,su=水だから」と書かれていた.

面白くなってきたので,さらにネットで調べたところ,関連した話題が見つかった.英語のcrowの語源はラテン語のcorvusで,それはサンスクリット語で黒を意味するkalasまたはkarasに由来するという説である.これが正しければ,「カラス」という音がcrowの語源となる.さらにcrowの発音は「黒」.ちょっと出来過ぎだ.

Dr. Kaanには,「良いネタがあったらGeomorphologyに投稿して」と伝えた.人と知り合いになるきっかけは,実に多様である.

And the black gold started flowing.
Just like Boston tea.
(Gasoline / Sheryl Crow)
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世界の地形景観

2010-04-13 | 論文や雑誌
「世界の地形景観」(Geomorphological Landscapes in the World)という本が出版されました.この中にある富士山に関する章を,家内と書きました.本の編集者は知人のポーランド人,ピエトロ・ミゴン(P. Migon)で,出版社はSpringerです.世界の37ヶ所の地形が紹介されており,アジアについては富士山の他に,インドの西ガート山脈,ネパールのポカラ谷,中国の黄土高原,三清山,桂林,マレーシアのムルが取り上げられています.ヨーロッパなどの特定の地域に偏っていない点に好感を持ちます.

富士山は日本の象徴として国際的に有名ですが,広く知られているのは美しい姿のみと思います.たとえば,全体としては均整がとれた形を持つにも関わらず,大沢崩れや宝永火口といった均整を崩す要素もあることは,あまり知られていません.章の中では,このような地形の詳しい特徴とともに,比高の大きな成層火山でありながら,安山岩ではなく玄武岩で構成されるといった地質学的な特徴をまとめました.

地形学に関する本なので,山岳展望といった田代先生流の富士山学を入れる余地がなかったのが少々残念です.一方,ピエトロが選んだ37ヶ所の地形の中に,日本の例が含まれていたことは良かったと思います.

なお,本の当初のタイトルは,Great Geomorphological Landscapes in the World でしたが,最終段階でGreatが消えていました.理由はわかりませんが,Greatをつけると,学術書というよりも通俗書のような感じがするので,消して正解と思います.

A from Gemini and di Great Volcano.
(Boogie Down / Beenie Man)
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五割以上の増加

2010-01-05 | 論文や雑誌
昨年,大変だったことの一つが,雑誌Geomorphologyのエディタとしての仕事の増加.一昨年に僕が扱った投稿論文の数は90本弱だったが,昨年は140本だった.5割以上の増加である.僕が担当することになっている,斜面崩壊や土壌侵食に関する論文の増加が最大の原因である.

画像のグラフは,各月に僕に割り当てられた新規投稿論文の数を示している.9月以降がやや多く,これは夏に発表されたインパクトファクターの上昇が原因かもしれない.しかし,最少の月でも8本届いている.前年の月平均は8本未満なので,年間を通じてノルマが増えたことになる.

Geomorphologyは月に2冊発行され,その2/3程度を通常号が占めている.一方,通常号のエディタは3名なので,個人あたりの負担がかなり大きい.2008年には,他の2名のエディタは僕よりも多くの投稿を扱っていたが,昨年は3名の担当分がほぼ同数になった.ある意味では3名のバランスがとれたといえるが,他の2名は英語を母国語としている.原稿のcopy editなどに要する時間は,僕が最長のはずである.

昨年は,このような負担の急増を予想していなかったため,混乱をきたし,他の仕事が停滞してしまった.約1年前に立てた,自分の論文発表に関する目標も空洞化している.今年の担当論文の数がどうなるのか全くわからないが,今の時点で昨年並みと覚悟を決め,それに対応できる生活を送る必要がある.年末に「多忙のため」と言い訳をするのではなく,良い報告ができるようにしたい.

なお,負担が特にきつい時には,エディタをやめたいと思うこともある.でも,この種の仕事が日本人あるいはアジア人に回ってくることは少ない.また,この経験を通じて得た知識の中には,若手に還元できるものが相当ある.簡単に手を引くべきではないと考えている.

You find you can never refuse it.
(Love Hurts / Kenichi Kurosawa)
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