表③Bを再録します。この表は京大・阪大以外、医科系や難関国公立大学へ進んだ子たちの六年生時の偏差値を日能研偏差値に比定したものです。昨年度神戸大学合格OBの六年生当時の偏差値は39(日能研換算)、札幌医大に進んだOBも39(同)です。 このように日能研の偏差値では最低ランクにも近い子たちが、高校を卒業するころになれば確固とした学力を培い、神戸大や札幌医大・奈良県立医大などに合格しました。
進学中学はK大附属・U学園また近隣の公立中学等と、決してトップクラスの中高一貫進学校に進んだ子たちではありません。参考のために今年(平成25年)のU学園(③C)とK大附属(③D)の進学実績をホームページ発表分から紹介します。
なお、後日の難関中高一貫校の実績分析のときにも述べますが、「大学受験者総数」を公表しない合格実績はあまり意味がありません。100人で50人合格するのと、800人の中から50人合格とでは大きなちがいがあります。
難関大学合格を披露するのであれば、受験者総数も併記するのが誠実ではないでしょうか。その点、今回の両校は卒業生総数(入試受験者数)を記載していますので良心的です。
偏差値39から札幌医大へ
まず、札幌医大に進んだOB(仮名・S君)の出身校U学園の今年(平成25年)の大学進学状況ですが、発表では受験者は442名、また国公立大学合格者数は③Cの通りです。
東大・京大進学は見られず、大阪大学が3名(内過年度1名)、後は地方大学で国立計10名、また公立大学は8名、国公立計18名です。大学受験者全体に占める国公立大学合格者の割合は約4.1パーセントという状況です。
S君が札幌医大に進んだのは約6年前で、U学園の大学進学成績は今より少し良かったかもしれませんが、国公立大学医科系の難易度は一説では京大にも匹敵すると聞いたことがあります。進路指導や受験経験のある先生ならよくわかると思いますが、相当以上の学力の裏付けが必要です。S君は大学受験時にはU学園ではトップクラスの学力をつけたことがわかると思います。
入団が遅かったので中学受験前は1年弱しか指導できなかったのですが、中学時代の3年間、OB教室でしっかり「学体力」を身につけてくれました。S君は日本語以外を母国語とする小学校で、国語の授業が圧倒的に少ないというハンディもありました。日能研換算では約39という偏差値の「差?」を六年間で超克しての札幌医大進学です。小学校で偏差値70を超える難関中学に進学した諸君にも十分匹敵する成長ぶりではないでしょうか。
もうひとり同じく39という偏差値から昨年神戸大に進学したOBに、T君がいます。
偏差値39から神戸大へ
T君の出身校、K大附属の進学実績は③Dです。
平成25年の卒業生総数が955名。東大合格者はなく、京大2名(内1名は過年度)、大阪大学は15名(内2名は過年度)です。今年の受験結果で、「予備校他」の欄に約60名いますので、大学受験者総数は過年度受験者数もふくめると約1000名(以上)だと考えられます。概算では京大・阪大合格者が大学受験者総数に占める割合は約1.7パーセント。また国公立大学合格者は164名(内過年度は33名)。16.4パーセントです。後日、奈良や大阪の私立中高一貫のトップ校の進学成績を紹介しますが、K大附属も進学成績だけからすれば、中堅下位の進学校でしょう。
T君が受験した平成24年に、東京大・京都大・大阪大に彼が合格した神戸大をくわえた合格者数は29名です。受験者総数(約1000名)が分母の割合では、およそ2.9パーセントになります。入学時日能研換算で39という偏差値だったT君は、最終的には上位3パーセントまで学力を上げ、六カ年一貫難関私立中学進学者に引けをとらない学力を身につけたということになります。上の表のその他の国公立大学合格者の出身校にも着目してください。「学力の伸長と充実にもっともたいせつなこと」は「必ずしも有名進学校に行くことではない」ことがよくわかると思います。
学力の伸長や充実に必要なことは、「受験のみに特化した学校へ進学すること」でも「フォアグラ学習を続けること」でもありません。そして、子どもたちの学力や能力は小学受験や中学受験時の、「一時の偏差値」では計ることができません。つまり、「難関中学受験に失敗したから」、あるいは「公立しか行ってないから」という言い訳には理由が無く、コンプレックスも必要ありません。
従来の受験環境しか頭にない人にとっては想像もできないことかもしれません。しかし不思議でも何でもありません。子どもたちが「ほんとうにたいせつなもの」がわかり、「たいせつなこと」を身につければ、大学受験など恐るるに足りません。
「学習探偵団OB」大学進学実績補遺
参考のために、小学生のときに入団し、OB教室を経て大学進学をした諸君の実績を先ほどのK大附属とU学園と同じように分析しておきます。
①の表を参考にごらんください。
団で一期生から八期生まで2012年までのOB教室受講生は先述のように26名です。彼等は在籍年数を見ていただくとわかるように、小学校から中学校、そして高校までと、ぼくが伝えたいことを、ほとんど伝えることができた、そして理解してくれた諸君たちです。その子たちの成績です(OB教室を受講していない諸君にも神戸大学や大阪府立大学進学者がいますが、途中退塾者とともに計数しておりません)。
国公立大学合格者は13名。京都大学3名・大阪大学3名・佐賀大学医学部1名・札幌医大1名・奈良県立医大1名・神戸大学1名・広島大学1名・大阪府立大学1名・大阪市立大学1名で国公立大学合格者はちょうど50パーセントです。うち京都大学・大阪大学合格者は6名で23.1パーセント、同じく医歯科系は5名で約19.2パーセントです。
次週から、これらの数値を全国トップレベルの私立中高一貫進学校と比較します。小学校時代からガンガン受験勉強漬けにして合格したのはよいが、それ以降の創造性や夢・活力が残っている子がほとんどいなくなっていることが、世界での「日本の大学のすさまじい評価の下落」につながっているとは考えられないでしょうか。
さて、二週にわたっての報告で、難関大に合格した団のOB諸君が受験用の小学校に通っていたり、特別の受験指導を行ったりしたわけではないことは理解していただけたと思います。「やんちゃ」で元気な子どもらしい小学生時代を送り、指導者一人、下町の小さな個人塾で育ってそれぞれ中学校に進み、週一回のOB教室で、個人に応じて指導した学習を進めた結果です。
教職課程を終えたわけではなく、教職経験の一度もない「下町の頑固親父」にできたことが、専門の指導を受け教職経験豊富な先生方にできないわけはないと思います。先生方、そしてお父さん・お母さん、ぜひ、燃え尽きず大きな夢を抱きつづける素晴らしい子どもたちを育ててください。