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新コーナー「Day-1-pics」開始。どうなることやら。

「無防備地域宣言」の嘘(3)

2004-03-16 04:36:46 | JPN/日本のニュースなどにからむ
断っておくが、私がここまで書いているような分析は本来、マスコミがやらなければいかん仕事である。いったいどうなってるんだか。
(1)(2)までの説明で明らかなように、ジュネーブ条約における「無防備地域宣言」は「無防備地域宣言をめざす大阪市民の会」の解釈とは大きく異なり、攻められる国の政軍民すべてに配慮した「戦線近隣の民間人を危険に晒す事のない撤退」を実現するための、つまりは紳士的かつ安全に戦争をするための条項である。国や軍が、防衛不能となった民間人を守るために最後にできることが「無防備地域宣言」なのである。これを身勝手に解釈し、平時のうちから宣言しようなどというのは、この「最後の防衛手段」が日本においては「形だけの宣言」と見なされ、信用されなくなる危険性を秘めているだけではなく、世界のあちらこちらに残る民族間の虐殺紛争に苦しむ人々を愚弄する行為である。彼らの紛争には、戦時法というブレーキは存在しないのだから。

さて、「無防備地域」に指定された地域には敵軍による円滑な占領が待っている。占領後は、大幅な行動の規制、物資の統制、徴発、等々、自国の時よりは確実によくない状況が発生するであろう。居住地の住民を強制的に追い出し、より後方の占領地へと移動させる事も考えられる。そしてしばらくすれば敵軍は、残されたわずかな迎撃兵器を接収し、持ち込んだ兵器の陣地を確保し、後続部隊と合流し、前進を始めるだろう。都市は、今度は敵軍の補給拠点として機能し始める。
つまりはこの「無防備地域」としての保護が成立するのは、[自国軍の撤退]~[無防備地域の通達]~[敵対軍の侵攻]~[占領の完遂]という期間のうちであり、[占領の完遂]が満たされた瞬間から敵対軍下の都市となる。一時の撤退の後自国軍が反攻に転じた場合、その地域は自国軍の攻略奪還目標となるのは言うまでもない。敵対軍に占領され、自国軍に向けられる「戦闘員並びに移動兵器及び移動軍用設備」が配備されたり、敵対軍により「固定した軍用の施設又は営造物が(自国軍への)敵対的目的に使用され」たり、あるいは「(敵対軍の)軍事行動を支援する活動が行われ」た時点から、その地域は第7項の規定により無防備地域としての地位を失うことになる。そして、敵対国の占領地となった地域について、敵対国軍が不利になった際に再び「無防備地域」を宣言するとは限らないのである。そうした状況下で敵が陣地を居住区に移した場合(こうした行動はジュネーブ条約違反の恐れがある)、自国民の死傷を覚悟しての攻撃を自国軍が迫られる事になる。
お分かりだろうか、この条項では『「戦争から離脱する権利」を保障』などされていないのである。たとえ再び戦火に巻き込まれなくとも、その時は敵の占領地として終戦を迎えるということになる。仮に講和を迎えたとしても、その内容によっては、敵国に「早期に放棄された領土」として奪われる可能性すらある。「戦争から離脱する権利」などと言っていたら、戦争の結果に人生の全てを変えられた上、「国境の都市」としての緊張の続く生活を強いられることすら考えられるのである。どこが「戦争からの離脱」なんだか。

このような危険な宣言が成立するかどうかは別として、いかに日本人が「戦争」や「占領」のことを理解していないかというのが、この運動でよくわかるのではないだろうか。あまりにバカげた、性善説の極みに立った解釈。占領された都市が辿る運命に対する想像力の欠如。自国のエリア防衛の中にあって、自治体単位においては僕ちゃん無防備で善良で~すなどという身勝手きわまりない主張が、日本第二の都市をはじめ各地で起きている事の恐ろしさ。それを無批判に取り上げるマスメディアの存在。それらに対し、私は抗議し、さらなる批判を展開したいと思う。(4に続く)

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2 コメント

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もっとおしえてください (アユミン)
2004-03-26 17:03:52
初めまして。無防備地域宣言について調べていたら、こちらのホームページをみつけました。わたしが今まで聞いていた、この運動とだいぶ違ったことが書いてあって、驚いています。確かに、戦争でないときに無防備地域宣言をすると、本当に必要なときに、この宣言が信用されなくなってしまうような気がします。今はこの運動に、すごく疑問があって、無防備地域宣言をめざす大阪市民の会の人にもメールをだして、質問しているところです。友達とか家族も無防備地域宣言がいいと思っているので、今はあまり言っても聞いてもらえませんが、私は疑問を持てて良かったです。これからももっと、こおの運動について書いて、教えていただけると、とてもうれしいです。それでは。
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教えられることはないですが… (g000@ここの管理人)
2004-03-28 02:55:01
コメントありがとうございます。

えーっと、無防備地域宣言運動の関係者の方でしょうか?



私の考えは、ジュネーブ条約すら知らず、また適用されもしない国内民族紛争や虐殺によって多くの民間人が命を落としているというのに、大国の自治体単位で「戦争からの離脱」などと甘っちょろいこと言ってるのは犯罪的だというものです。完全に政府の統制下にあり、士気が高く、技術的にも優れた軍隊が自国にあるということはとても恵まれたことであり、自分たちがその上に生きているのだという事実を完全に忘れ切った主張だからです。



そして私には、あなたに教えられることはありません。私が何言ってるんだコイツはと思ったことについて、批判することならいくらでもできます。

せっかく運動への疑問をお持ちならば、同様に私の文章にも疑問を持った上で、自ら知識を深め、自分の結論をつかんでください。

もし軍事的知識等で詳細な質問などありましたら、画面左のBOOKMARKから「ぐぅすた」にアクセスしてください。中に私のメールアドレスが記載してあります。結論を直接与えることは好みませんが、思考の材料でしたらいくらでもお手伝いします。
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