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源氏物語の魅力その16 紫の上の魅力

2010-08-24 12:16:21 | 源氏物語
紫の上の魅力について書く前に、あなたにまず知ってほしい事があります。

源氏物語の作者は、紫式部という女性なのですが、これは本名ではなく、源氏物語の中の、紫の上から、一文字取って名付けられたのです。
つまり、紫の上は、当時の人々にとって、もっとも理想的な女性として描かれ、愛されてきた女性なのです。
それは、源氏物語が、時の権力者、藤原道長の娘の中宮彰子の為に書かれたからで、帝の寵愛を得て、子供を産み、より高い身分と権勢を手に入れる為に、理想的な女性を描く必要があり、紫の上に、もっとも理想的な女性の姿が託されているのです。

それは、他の女性たちが大人になってから登場するのに対して、紫の上がまだ幼い十歳から書かれているのにも顕著に現れています。
ちなみに、光源氏が、若紫と初めて出会った時、光源氏は十七歳でした。

幼い紫の上、その頃は、若紫と呼ばれていますが、本当にかわいらしく書かれてあります。
まだ幼くて、何も知らない若紫は、愛と言うのでなく、優しくて、かっこいい光源氏が大好きなのです。
光源氏が外出から帰ってくると、飛んで出て迎え、まとわり付いて、留守中の出来事をあれこれ話し、夜は光源氏に抱かれないと眠れないのです。
そんな若紫を、光源氏は愛おしくてならず、お人形やおもちゃを買い与えたり、同じ年頃の女の子たちを集め、遊ばせたりするのです。
そして、さらに文字や、お行儀を教え、女性としての、たしなみを熱心に覚え込ませるのです。
「女は心が素直で優しいのが一番なのですよ」
そう言う光源氏に、若紫は自分が気にかけてもらう事が何より嬉しく、素直にこっくりうなづくのです。
これは、現代でも言える事ではないでしょうか?
どんなに好きな相手でも、いちいち、反発されたら、いい気持ちはしませんよね。
それに、従順で、性質が優しいのは、男性に無上の安らぎを与えてくれると思うのです。

そうして、幼い若紫を熱心に養育した光源氏なのですが、いくら光源氏にロリコンの素養があったとしても、若紫のからだに、すぐに手を出した訳ではないのです。
光源氏は、正妻の葵の上が子供を産み、もののけに襲われて亡くなったあと、左大臣の家で静かにお経をあげる日々を送り、しばらく振りに二条の屋敷に帰って、大人ぽくなった若紫の姿に気づき、その時、初めて抱きたいと思うのです。
時に、光源氏、二十二歳、若紫、十四歳でした。

しかし、この頃、誰も、若紫にセックスの作法を教えた者はなく、ある晩、光源氏が自分のからだに覆いかぶさって、からだが一つになったのに驚き、あの気高くてお優しい、あの方が、けだものみたいな、いやらしい事をするなんてと思い、体中が真っ赤になるのです。
そんな若紫に、光源氏は、翌日の朝「どうしたの、気分が悪いのですか?」と、いつもの調子で話しかけ、すねている若紫の横に来て、その日、一日中、ぴったり寄り添い、二人きりで御帳台にこもるのです。

こうして、名実ともに夫婦の契りを結ぶのですが、実は紫の上は光源氏の正妻ではないのです。
当時の結婚形態は通い婚で、夫が妻の家に通うのが習わしでした。
ところが、紫の上の場合、両親に早く死に別れ、後見役がいなかったために、光源氏の二条のお屋敷に同居するほかなく、正式な妻になれなかったのです。
そうして、紫の上は第一夫人の座にはいたのですが、正妻のポストの座は、長らく開いたままになり、後々、女三の宮が光源氏のもとに降嫁する悲劇を生んでしまうのです。


つづく

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