午後の暑い時間を避けようと
午前に散歩にでた。
ああ…犬のチビの散歩だ!
彼女にしてみれば僕らは唯一散歩に連れてってくれる
大事な主人だ…いやカモかな?
井戸の竹林坂をのぼって
Sigeちゃんのブルーベリー畑を横目に防風林についた。
T字路だ。
左に下れば1回目の栗山を抜けて特別地区の田圃を手前に曲がり
高野池(こうやど)から七曲がりをまわるコースだが100%木影はない。
流石に人間も犬もこの暑さでは死んでまう。
右の一本松を登るコースをとる。
いきなり木陰が連なる。
ふむふむ…いいねえ。これならなんとか回れるかな。
ちょうど坂を登り切って、いつものように例の土地で
鎖をはずして自由に遊ばせようと思ったが…
背の高い雑草が道を消していた。
仕方なく滅多に行かない道を選んだ。
ゴルフ場に向う西コースを選んだ。
たしかコースに突き当たったら道は左右に別れ
左に下れば特別地区の裏側に出る筈だ。
道はどんどん森の中に入ってゆく。
昔赤や黄色の木いちごが沢山とれた右の原っぱは今は雑木林だ。
うん?ゴルフコースにぶつかったのに道が…右にまがってる。
おかしいな?左の下り坂がない。
殆どゴルフコースと並んで薄暗い側道が走る。
こちらからは緑鮮やかな芝のコースがよく見えるが
ゴルファーには僕らは見えない筈だ。
コースと側道には篠竹の壁があるし薄暗い木々のトンネルで被われてるからだ。
道は少しづつコースからはずれ森の奥へと伸びて行く。
なんだか見えない力に吸い寄せられているようだ。
静寂………。
蝉の声さえ聞こえない。
僕らの足音とチビのぜえぜえ…という苦しそうな声だけだ。
姫曰く
「犬は口っていうか呼吸でしか体温調整できないから可哀想なんだ」という。
「へえ…そうなんだぁ」それは…可哀想だ。
こんな夏日に毛皮のコートを着てるみたいなもんだからね。
やばい…
昔通った中学校への山道さえ消えていた。
父ちゃんの山や山田圃に入る高圧線も過ぎた。
これからは未開の地だ。
森の中に小さな谷。水路。水が流れている。
あ…バイク 反対側は布団や洗濯機……不法投棄だ…やれやれ。
急坂を登り切ったら再び緑のゴルフコース沿いにでた。
少しだけほっとする。
つい先日も猪が出たと聞いたからだ。
緑のコース…か。
あ…あれは…たしか…樅の木だ!
そうか!あれが子供の頃兄貴と妹とX'masのツリー用の木を切りに入った。
樅の木の山だったところなんだ…なつかしい。
下り坂になった。その先は明るい眩しい感じに見えてる。
僕は足が止まった。
姫とチビは僕を残して歩いてゆく。
僕は右奥の枝に目が止まった。
なにかがくるくる動いたからだ。…いやそう見えたのかもしれない。
鳥でも獣でもない…多分…あれが…トトロ…のようなものかもしれない。
いっしゅんだけ見えた不思議な妖怪?
いやいや…幻にちがいない。
やがて僕も歩き出しだ。
畑だ。
目の前に…小学校だ。
そうかひと山越えて隣町まで来てしまったんだ。
そこは村外れの民家の前だったのだ。
ちょっと休むことにする。
なんだか見たことのある家…
門に近づいて表札をみた。
「………」中学の同級生の茂君の家だった。
昔なら知恵おくれ今なら身障者か
なんだかんだ言って僕らは仲がよかった。
中学を卒業してもよく遊んだりしてた。
あれは…20代の終わりころかな。
東京で働く僕は風の便りに聞いたんだ。
茂君が死んだって……。
「しげる…くん」
僕は門扉でつぶやいた。
暑い。
そして僕らは県道に出て。
近くにある小さな温泉経由の道をめざして歩いた。
午前に散歩にでた。
ああ…犬のチビの散歩だ!
彼女にしてみれば僕らは唯一散歩に連れてってくれる
大事な主人だ…いやカモかな?
井戸の竹林坂をのぼって
Sigeちゃんのブルーベリー畑を横目に防風林についた。
T字路だ。
左に下れば1回目の栗山を抜けて特別地区の田圃を手前に曲がり
高野池(こうやど)から七曲がりをまわるコースだが100%木影はない。
流石に人間も犬もこの暑さでは死んでまう。
右の一本松を登るコースをとる。
いきなり木陰が連なる。
ふむふむ…いいねえ。これならなんとか回れるかな。
ちょうど坂を登り切って、いつものように例の土地で
鎖をはずして自由に遊ばせようと思ったが…
背の高い雑草が道を消していた。
仕方なく滅多に行かない道を選んだ。
ゴルフ場に向う西コースを選んだ。
たしかコースに突き当たったら道は左右に別れ
左に下れば特別地区の裏側に出る筈だ。
道はどんどん森の中に入ってゆく。
昔赤や黄色の木いちごが沢山とれた右の原っぱは今は雑木林だ。
うん?ゴルフコースにぶつかったのに道が…右にまがってる。
おかしいな?左の下り坂がない。
殆どゴルフコースと並んで薄暗い側道が走る。
こちらからは緑鮮やかな芝のコースがよく見えるが
ゴルファーには僕らは見えない筈だ。
コースと側道には篠竹の壁があるし薄暗い木々のトンネルで被われてるからだ。
道は少しづつコースからはずれ森の奥へと伸びて行く。
なんだか見えない力に吸い寄せられているようだ。
静寂………。
蝉の声さえ聞こえない。
僕らの足音とチビのぜえぜえ…という苦しそうな声だけだ。
姫曰く
「犬は口っていうか呼吸でしか体温調整できないから可哀想なんだ」という。
「へえ…そうなんだぁ」それは…可哀想だ。
こんな夏日に毛皮のコートを着てるみたいなもんだからね。
やばい…
昔通った中学校への山道さえ消えていた。
父ちゃんの山や山田圃に入る高圧線も過ぎた。
これからは未開の地だ。
森の中に小さな谷。水路。水が流れている。
あ…バイク 反対側は布団や洗濯機……不法投棄だ…やれやれ。
急坂を登り切ったら再び緑のゴルフコース沿いにでた。
少しだけほっとする。
つい先日も猪が出たと聞いたからだ。
緑のコース…か。
あ…あれは…たしか…樅の木だ!
そうか!あれが子供の頃兄貴と妹とX'masのツリー用の木を切りに入った。
樅の木の山だったところなんだ…なつかしい。
下り坂になった。その先は明るい眩しい感じに見えてる。
僕は足が止まった。
姫とチビは僕を残して歩いてゆく。
僕は右奥の枝に目が止まった。
なにかがくるくる動いたからだ。…いやそう見えたのかもしれない。
鳥でも獣でもない…多分…あれが…トトロ…のようなものかもしれない。
いっしゅんだけ見えた不思議な妖怪?
いやいや…幻にちがいない。
やがて僕も歩き出しだ。
畑だ。
目の前に…小学校だ。
そうかひと山越えて隣町まで来てしまったんだ。
そこは村外れの民家の前だったのだ。
ちょっと休むことにする。
なんだか見たことのある家…
門に近づいて表札をみた。
「………」中学の同級生の茂君の家だった。
昔なら知恵おくれ今なら身障者か
なんだかんだ言って僕らは仲がよかった。
中学を卒業してもよく遊んだりしてた。
あれは…20代の終わりころかな。
東京で働く僕は風の便りに聞いたんだ。
茂君が死んだって……。
「しげる…くん」
僕は門扉でつぶやいた。
暑い。
そして僕らは県道に出て。
近くにある小さな温泉経由の道をめざして歩いた。