ブラジルとブラジルのマーケティングあれこれ

ブラジルで日々おこることをマーケッターの目で解説するページ。広告業界の情報も。筆者はブラジル在住29年目。

ポンテプロンタ広告ブログ

ブラジル、サンパウロで活動する広告会社のブログです。展示会、イベント、マテリアル製作、調査・マーケティング・コンサルティングの分野で、主に日本の企業、政府関係機関の業務のお手伝いをしています。日本語とポルトガル語のバイリンガルでアテンドいたします。 www.pontepronta.com.br

【ブラジルの数字】ブラジル人の外食についての調査

2013-07-31 18:55:02 | ブラジルの数字

最近、レストランの値段が高くなって嫌になっているけど、それでもどの店でも人がいっぱいなのが不思議で、さらに新しいい店が次々とオープンしている。実際、ブラジル人のお客はどんな感覚でいるのだろうか、と思っていたところ今日のFolhaがそれについて調べた調査結果を出していたので、少し数字を見てみたい。

新聞の記事なのでサンプルのプロフィールなど以下のことしかわからない。実施会社はDatafolha。

*サンパウロ市内
*サンプル数:563人
*年齢:16歳以上
*社会クラス:ABCクラス
*調査期間:7月2、3日
*誤差:4%

以 下に数字を見ていくけど、この「外食」の定義が記事ではよくわからない。ブラジルでは労働法で昼食のチケット(今はカード)の支給が義務付けられているので、ほとんどの人が週日は外で食べている。昼食を家に食べに帰るというのは、古き良き時代のブラジルの話である(実は僕は仕事場が近いので家で昼食 を食べていることを告白しておく)。だからこの記事でいう「外食」は日々の職場の近くで摂る昼食ではなく、週末や夜の家族や友人との食事と解釈すべきだと 思う。

1)値段について

圧倒的多数(72%)が「高い」あるいは「とても高い」と 答 えている。安いという人はゼロだ。高くなったというのは僕だけの感覚ではなかったのだ。過去12ヶ月のインフレ率(IPCA)は6.7%だが、IBGEの 統計では外食の値段は10.3%に上っていると記事はいっている。誰も指数をそのまま当てはめて値段の改定などせず、切りの良い数字に切り上げるのが普通 だから、体感的にはもっと上がっている気がする。例えば2レアルだったカフェインフレ率を掛けて2.134レアルというようなことはしない、せいぜい 2.3とか2.5にする。またレストランが増えたことにより人材不足も深刻で、人件費の上昇も料理の値段に転嫁されているはずだ。急にレストランが求める 水準の従業員なんて増えるわけはなく取り合いになっている。



2)レストランに行く頻度

数字を足すと87%で、100%にならない。このあたりがいい加減で困るのだが「わからない」「回答なし」というのが13%もあったとしかいえない。タダでデータをくれているのでこのあたりは我慢するしかないか。

「1 週間に1回以上」と「15日に1回」というのが、いわばABクラスの行動様式で、「1ヶ月に1回」以下がCクラスと解釈してもいいと思われる。Cクラスに なる前、Dクラスというのは所得からいって外食に回すお金などなかったわけで、それがレストランの質は問わなくても外食できるようになったのが、近年ブラ ジルでおこった変化であり、それが市場を大きく広げた。



3)頻度の変化

「過 去半年」というのは微妙な設定だが、4月にトマトが19%も値上がりし、食料品全体の値段を押し上げたのを前提にした設問だと思われる。21%が少なく なったと答えているが、頻度を変えなかった人が64%もあり、また14%にいたっては反対に増やしている。多くの人が「高くなった」という認識をもってい るにもかかわらず、こういう結果がでている。このあたりがブラジルの消費者の行動・思考様式を表しているように思えてならない。景気が悪くなっても失業率 が低い水準で推移している現在、所得にはさして大きな影響が現れていないため、倹約というライフスタルの変更を採用するまでには至っていないということだ ろう。「やっぱり楽しみたい」というブラジル的な本能のなせる技であろう。

また記事ではサンプルの社会階層の内訳が不明だが、もしかすると家計に占める外食費の重みが軽いABクラスが多く含まれているかもしれない。いずれにせよ外食産業の人たちにとっては心強い数字だろう。



4)外食が少なくなった理由

複数回答になっている。この設問が上の設問で「少なくなった」と答えたグループのみが対象だとすると、回答者は118人になり、サンプル数としては少し物足りない。

それはさておき、理由の中に「安全でないから」(Segurança)があり、ほぼ他の「お金が足りない」と「高いから」というもっともな理由と並んでいるのが興味深いし、サンパウロの事情を反映しているように思える。

サ ンパウロでは6月から街頭でのデモがおこり、しばしばパウリスタ大通りなどは閉鎖されている。このデモがある日は商店は店を壊されることを恐れて早く店じ まいをしたりしたが、少なからぬレストランも店を閉めた。デモそのものは家族連れの参加もあったりして、一部の「便乗組」が暴れたり、商店の強奪があった が、そういうところに近づかなければ危ないというものではなかった。しかし、一般の人はどうしても夜出歩くの控えたりした。僕も一度会食をキャンセルした ことがあった。別に危なくないのはわかっているけど、何か嫌な気がしたものだ。

調査が行われたのが7月の始めなので、そういう市民の気 持 ちが現われたのかもしれない。また、去年ぐらいから日本食を含めて中級以上のレストランが強盗に襲われるという事態が頻発している。営業時間中に武装して 侵入、店の売上だけでなく(今はカード支払いがほとんどだから現金なんてあまりないが)、お客の財布、携帯電話をごっそりとさらっていくものである。実際 に知り合いの店もこれにやられている。これも夜の外食は危ないという印象を市民に与えているのは間違いないだろう。


【ブラジルの数字】5月の新車販売台数世界ランキング

2013-07-31 14:18:02 | ブラジルの数字

いつの間にかこういうポジションになっていたんだね。

Jato Dynamicsというコンサルタント会社が発表した各国の新車販売(登録)台数の数字がTerraのサイトに載っていたので転載。ブラジルの5月の販売台数は昨年比で9.6%の増加だとか。不景気でもこれだけ売れれば各メーカーさかんに工場を作るよね。

それにしてもちょっと景気が回復すればすぐに日本を追い越してしまうね。


週末のボン・レチーロは買い物がしやすい

2013-07-30 16:16:18 | 小売

先々週の土曜日、ずいぶん久しぶりにボン・レチーロの韓国人街に行ってきた。何年ぶりだろうか。もともとはイタリア人、そしてユダヤ人が集住した地区だが、1980年代から韓国人が多くなり、服飾店を中心にレストランを含めて韓国系のお店が集中、ハングルが並んでいるところだ。

今回、ボン・レチーロに行ったのは服ではなく、食材の購入が目的だった。リベルダーデの日本食料品店ではスキヤキ用の薄切り肉が高いので、同地区の肉屋では安く売っていたのを思い出して出かけた(半値近かった)。もちろん韓国系の食品店にも行って本格的なキムチを買い込んだのは言うまでもない。ついでにアルゼンチンから輸入された冷凍イカも塩辛用に購入した。この肉厚のイカは値段も安いけど、フェイラ(露天市)ではあまり見ないので貴重、ワタがたっぷり入っていて塩辛には最適なのである。

食料品店では、韓国系とはいっても、もちろん韓国からの輸入品で特徴はでているものの、基本的な日本食の材料は常備されていて必要な物は、生鮮野菜を含めてきちんとそろう。……と買ったものの支払いをしなが気づいたのであるが、土曜日の午前中のリベルダーデのお店で、こんなにゆったりと買い物ができるだろうか? メインのガルボンブエノは渋滞、車を停めることころから大変で、混雑をかいくぐって満員のお店に入り、カゴやカートに入れたものを持ってレジにたどり着くのに長い列に並ばなければならないのが普通。ところがボン・レチーロのお店はまったく混んでなくて、ゆったりとしたもの。店員にケジャン(生の渡り蟹のキムチ漬け)を尋ねたところ、丁寧に探してくれたりサービスも悪くない。

週末のリベルダーデははっきりいってもう破裂していて、僕でも買い物ではよっぽど必要なものがないかぎり、土日には行かず、週日にたまに行くことがあるくらいになっている。輸入日本食品が思ったほど普及しないのは、中産階級にとって買い物のしくにくいリベルダーデのお店に頼った販売をしているからではないか。高い輸入品を買える層の人は、あの混雑に入っていかないはずだ。買って貰いたい・買える人と、売っている場所のミスマッチングだね。

ということで週日は混むチラデンテツ通りも土日は空いているし、ボン・レチーロはそういう意味で週末に日本食を買うには穴場だ。日本のレトルトパックがないと日本食を作れない人は別だけど。


【ブラジルの数字】最低給料はインフレを超えて調整されている

2013-07-30 13:08:59 | ブラジルの数字

今日の新聞で国連の「人間開発指数」(ブラジルではIDGM)が発表され、1991年と2010年が比較されていた。この20年でブラジル全体で0.493から0.727に上昇している。数値が1に近づくほど生活レベルが高く、寿命、所得、教育の三分野の状況を指数化したものである。指数は市単位で発表されているので、地域別の分析が必要だが、とにかくブラジル全体では上昇した。参考までに日本は0.912、米国は0.937。もっとも高いノルウェーが0.955。南米ではアルゼンチンがもっとも高く 0.811。

レアルプランでハイパーインフレが収まり、Bricsで外資が流入したり所得の底上げで消費市場が急伸したことを振り返れば、この指数の上昇は体感できる。

試しにBriscというカテゴリーが生まれた2002年から現在までの最低給料の推移をグラフにしてみた。2002年に180レアルだった最低給料が2013年の1月には678レアルまで276.7%増加している。この間の累積インフレ(IPC-Brasil)は93.5%である。実際、「所得の底上げ」といっていい増加である。最低給料はの調整率と一般のサラリーの調整率は違うが、年金や底辺労働者の給料ベースとなるもので、全体に与える影響は大きい。

最低給料はGNPの成長率も参考しながら、政治的意図も含めて調整されるから、まぁこの10年景気がよかったということが数字でよくわかる。

 


世界最大のブラジルの日本祭り

2013-07-30 12:33:39 | イベント

先週、19日から21日の間に日本祭り(フェスティバル・ド・ジャポン)がイミグランテ総合展示場で開かれた。今年で16回目になるイベントで、主催はブラジル日本都道府県人会連合会、「県連」と呼ばれる団体で、各県出身者が作る県人会の連合体である。イベント名からすると、まぁどこにでもありそうな、日系団体のイベントのように思えるが、それがどっこい、この日本祭り、入場が有料(約5ドル)であるにもかかわらず3日間で20万人(今年は18万人だったと発表されているが)近くを集めるメガイベントなのである。政府にたよらずコミュニティの力だけで、これだけの規模のイベントを主催していることは誇ってもいいと思う。

今年の宣伝用のビデオ

ニューヨークの「ジャパン・デイ・アット・セントラルパーク」が一日で4万5000人といわれるから、世界最大と言っていいだろう。

メインのアトラクションは各県人会が用意する郷土食の即売会で、ずらりとテント作りの店が並ぶ。実際、16年前にイビラプエラ公園に隣接する州議会の駐車場で、ささやかに始まったときは、「郷土食祭り」と命名されていた。郷土食といっても食材に限りのあるブラジルで用意するわけだから、「もどき」やぜんぜん県に関係のないものが出されるが、日系人には楽しいものになっているし、近年すっかり定着した日本食ファンのブラジル人にも珍しさも手伝って人気がある。ただ焼きそばが多いのはちょっと閉口する。これには理由があり、焼きそばはどんな日本食レストランに行っても必ずあるメニューで、すっかりブラジル人の間でも定着している「売れ筋」で、固い売上が保証されるメニューになっているのだ。何とか丼というのをだして冒険するより、焼きそばを出しておくほうが無難という判断だと思う。他にブラジル人にお馴染みの餃子も多い。

日本祭りの内容は大きく分けて次のようになっている。

①各県人会や団体が運営する郷土食の屋台
②一般企業の展示ブース
③物品の販売を目的とするバザール
④日本文化の展示、デモンストレーション
⑤ショーなどのアトラクション

①は先の述べたもの。②は企業がPRのために出展するものでホンダ、トヨタ、ヤマハ、キッコーマンなどの進出企業に加え、地元の企業もブースを構えている。③は小さなブースでの物品販売で家庭用品や日系農家の生産物、加工食品、マッサージ機などさまざま。因みに僕は漬物と自家製味噌を買い込んだ。どちらも日本食料品店で買うものより安くて高品質。④は日本の総領事館やJICAなどがPRを行うもので、震災の写真展などもあった。⑤は日系コミュニティの各芸能団体のショーなど。今年は日本で活躍する二世の演歌歌手マルシアが凱旋公演をした。

県人会が参加するモチーフは、会の団結とか親睦といったものもあるのだかが、ずばり収益だと思う。例えば最大の人気を誇る和歌山県人会のお好み焼きは、報道によると3日間で5000食を売り切ったというが、たしか値段は15レアルだった。他に飲み物や違うメニューもあったが、お好み焼きだけで見ると7万5000レアルとなる。お好み焼きはいわゆる「粉物」、比較的原価の低いものなので、利幅は大きいはずだ。しかも作っている人も売る人もみんなボランティアだ。どの会にとっても、この日本祭りでの収益は運営費として重要だと思う。準備も含めて作業は大変だと思うけど。

トヨタ、ホンダはまぁお付き合いという意味があるかもしれないが、日系コミュニティ中での日本車のシェアは大きい、つまり日本人はよく買ってくれるので、マーケットとして重視していはずなので、出展はうなずける。銀行は日本からの出稼ぎの送金扱いを増やすことが目的で以前は多数出ていたが、今年は一行のみだった。もう出稼ぎの人たちも日本定着が一般化して、かつてのようなブラジルの家族のためといういような事情ではないのだろう。リーマン危機以降ずいぶん帰ってきたしね。

この際だと思って入場者のプロフィールを、9個15レアル(日本でもこの値段はないよね)のたこ焼きを食べながら観察したけど、ざっと見て15%が日系でないブラジル人、15%が日本人一世、そして残りの70%が世代はとわずいわゆる日系人のようだった。日系ではないブラジル人は日系人の配偶者が多かったように思える。だから一般ブラジル人向けのイベントというわけにいかない。でもターゲットがよく絞りこまれているわけで、その意味では優れた内容のイベントと言うことができるだろう。

だからマーケティング的に見て、このイベントで何かをPRしたり売ったりする場合、効率的なのは一般の商品より、日系人をざっくりとつかめるものかなと考えた。例えば醤油で、地元の2メーカーはフードコートのテーブルに卓上瓶を並べたし、キッコーマンもブースをかまえていた。「郷土食のイベント」というイメージが定着しているので食品がいいと思われるが、しかしSISALなどの業界向けの展示会ではなく、一般消費は向けなので、日本から食品メーカーがそのままでてきて、アピールしようというのは、テストマーケティングとしてだといいけど(実際、僕もそのためのブースをお手伝いしたことがあるが)、ちょっと効率が悪すぎるように思われる。メーカーの場合、代理店がすでにあり、実際に商品が小売店の店頭に並んでいる状況ではじめて直接的な効果を発揮するだろう。

イベントとしての収益はどうなっているか?

会場費、設営費などの運営費は入場料とスポンサーの協賛金、県人会の屋台や企業の展示のスペース代で賄われている。

報道記事によると昨年の実績は、

スポンサー料         89万6500レアル
協賛金                  6万7000レアル
出店料・入場料他    135万8025レアル


支出                  228万375レアル

差し引き4万1149レアルの黒字とのこと。この規模のイベントとしては利益(黒字)があまりにも低いのだが、並行して行われたロードレースの企画の赤字が21万5000レアルに上っているので、これが利益を大きく引き下げたということだろう。事実、今年度は計画段階で25万レアルの黒字を見込んでいると報道されている。もしこの失敗した企画の赤字がなければ、売上比率で11%の利益となり(税金をどう処理しているのかは知らない)、まぁまぁといえるか。でもスタッフの多くがボランティアであることと、背負い込むリスクの大きさを考えると、ちょっと物足りないかもしれない。