ブログ「風の谷」  再エネは原発体制を補完する新利権構造

原発事故は放射能による公害。追加被曝阻止⇒放射性廃棄物は拡散してはいけない⇒再エネは放射能拡散につながる⇒検証を!

TED「油濁事故の毒の代償」海洋毒性学者スーザン・ショー「世の中全てが幸せなわけではありません」

2016-08-25 | 海洋汚染

私は海洋毒性学者です。メキシコ湾の現状を大いに心配しています。 特に大量に使用されている有毒な分散剤 コレキシットについてです。私は海洋汚染について、長きにわたり研究を行い、海洋生物 特に海洋哺乳類に及ぼす影響について 調べてきました。 研究の結果、海洋哺乳類は私たちが莫大な量の有害物質を 年々注いでいる食物連鎖の一番上に存在していることが分かりました。そしてその哺乳類たちは、こんな状態です。こんな悲しいスライドで 胸が痛いですが、世の中全てが幸せなわけではありません。

私の分野ではなおさらのことです。海洋哺乳類の体には 数百種類ものあらゆる有害な化合物が 蓄積されていて 深くショックを受けます。そして 世界各地の何万もの海洋哺乳類が 着実に絶滅に向かっています。彼らの約3分の1程度が30年以内に絶滅すると予測されています。

私のプロジェクトは、大西洋の北西に沿って進められています。 「アザラシ指標」と名づけました。 私たちは食物網の最上位に位置する 海洋哺乳類と魚類の体内の汚染を 経時的に調べています。これは 地域規模で行われる環境毒性調査です。 いろいろな化合物を調べていますが、最近 大きく関心を寄せているのは 難燃剤 とくに臭素系難燃剤で、これらは私たちが日常的に使用する 非常に沢山の物に含まれています。 この難燃剤は 私たちが今座っている椅子のクッションからコンピュータやテレビなどの外装にも 含まれています。

それで私たちは、この化合物がどうやって製品から最終堆積場の海にまで流れ込んだのかを追跡しています。追跡は非常に複雑な経路です。 このような製品が古くなるにつれて塵の中で濃縮されたり 捨てられて 埋立地に持ち込まれたりして 最後に廃水処理施設に到着するからです。ご存知の通り、私たちは毎年膨大な量のコンピュータやテレビを処分しています。 そしてこれらは 電子機器廃棄場に行きます。 そのすべては地表水に紛れ込み、ついに最終堆積場である 海に到達します。 私たちの研究では、ゼニガタアザラシの体から高濃度の難燃剤成分を 予想通りに検出し、報告書を作成しました。

この報告書により 私が本拠とするメイン州では神経毒性難燃剤 通称デカの使用が禁止されました。 そして去年末には全米で 段階的廃止の決定が下されました。良い面だけみれば私たちのゼニガタアザラシが 少なくとも炎上することは 当分の間ないんでしょうけれどね。

それで私は毒性学者として 私自身に非常に興味がわきました。研究室に血を寄付して 「よし やってみよう」と言いました。 その結果、113種類の異なる化合物が 私の血から検出されました。 皆さんの中で誰かが この実験に参加したならば 化合物が同様に分布した― カクテル(混合物)が検出されるでしょう。 ですが私はなぜか 沢山の難燃剤に毒されていたのです。 その程度をお見せしますと アメリカ人はヨーロッパ人に比べて 体内にある難燃剤の濃度が 10~40倍も高くなっています。 なぜですかって? 何もかもに防火処理をしており 有害化学物質の規制も甘いからです。 あろうことか私はハイエンドの1人なのです。 なんて運がいいんでしょうね。 ですが こう思いました。 火災が起きても 多分私は最後まで燃えないだろうって。

ともかく これが私たちが調査している 現在のメキシコ湾の問題です。 この国は化学物質を 適切に規制していません。 ほとんどしていないと言って良いでしょう。 産業界に振り回されっぱなしです。 今朝ジャッキー・サビッツ [海洋生物学者] は、大手石油会社と彼らのプロパガンダ、そしてどうやって私たちが彼らの嘘などに洗脳されるのかを話しました。 私たちのケースでは大手化学会社となります。 彼らは企業秘密を保つ権利を許され 成分資料を提出する義務もありません。 健康と安全に関するデータも出しません。 結果的に製品が市場に出る前に 彼らは規制を受けないのです。推定無罪の原則のようなものです。生産者側は立証責任を負いません。

私は5月に メキシコ湾に招待されました。 そこで私は分散剤が海中でどう分布するかなどの予備調査をしにそこへ行くことにしました。 今まで水の中に飛び込むような クレイジーな毒性学者はいなかった― と言われましたが、 私はやりました。 私たちは化学防護スーツ等さえつけず、油膜の中に飛び込みました。そして体調を崩しました。 2日後 ひどい咽頭炎にかかりました。 喉が燃えるかと思いました。今は治ったんですけどね。

水に潜る途中で私が見たものは、とても大きな衝撃で 今も頭の中を駆け巡っています。油滴がまき散らされているのを見たのです。 さらに潜っていくと油滴の群は ニシンのようなプランクトン食性魚類の餌で小さな生命でもある― あらゆる種類のプランクトンに くっついたりぶつかったり していました。 海中深く潜って見たものは まさに死の網だったのです。

この問題は最初 彼らの言葉を借りると 沼地と海底との トレードオフとして始まりました。 私は最初から決定に反対していて、それは今も変わりません。その決定とは沼地を保護するというものでした。 一度沼地にオイルが入ったら 取り除くことは不可能です。皆さんもご存知の通り、ごく最近まで 実際に油を回収するという対応はほとんどありませんでした。事態はますます深刻になっています

これはシナリオと その得失評価についての エクソン社のスライドです。 このケースでは 水面に油が浮いています。 マングローブ地帯に上がっていきますが、サンゴや海草に 害を与えることはありません。 ここに違うシナリオがあります。 もし油を分散させると 海草やサンゴは結構な被害を被りますが マングローブ地帯は保存できます。これはまるで眼科医に 行くみたいではありませんか? 1と2 どちらが良く見えますか?

問題はコレキシットが 私たちによって大量に放出され、あっという間に 200万ガロンに 達しつつあるということです。 プルーム(汚染物質)の問題もあります。 プルームはないとされていましたが プルームはあることが分かったのです。 独立研究者たちが見つけたのです。 そこには人体に悪影響を与える 差し迫った大きな問題があり、人の健康への影響が報告されています。 連邦政府のある当局者は それはおそらく熱中症だと言いましたが、 短い時間ではあっても そこに入ったことがある私は 熱中症ではないと言い切れます。 現場では 水の中から、大量の揮発性油と溶媒を含む コレキシットのガスが昇っていました。ですから当局者の見解は 全くの見当外れです。

BP社のショーは今だに続いているのです。 私たちの関係者はコレキシットについて 最も毒性が高い分散剤の1つだと 苦言を呈しています。 しかし まだ彼らは分散剤を使い続けています。 最も毒性の高い 9527 を 供給が途切れるまで使い続け、 今 彼らは 9500 を使っています。 9527 は 2-ブトキシエタノールを 含んだものであり、内出血を起こします。 エクソンバルディーズ号油濁事故で これを知りました。つまり私たちは 流出した石油の上に石油系溶剤を含む化合物を 散布しているのです。 支離滅裂でしょう?

この仕組みをお話しましょう 。そしてここで起きる小さなことを説明します。 それはミセルです 。ミセルは油を囲んで形成されます。 まず最初に 溶剤が油の中に割って入り、 油膜の中に 界面活性剤が入っていきます。 界面活性剤はファストフードの包装等に使われていますが、 油滴の周りを取り囲み、 微小の粒を作ります。 きれいで小さな界面活性剤が縁取ります。 ミセルについて覚えておくべきことは、この小さくて浮遊する 毒物の滴は 届けるためにあるのです。 FedEx の配達員みたいなものです。 皆さんが魚であれば、 あなたの滴が 午前に届かなければ 午後には届くでしょう。 皆さんの住所を知っているからです。

毒物学の見地からいえば、 これはとても恐ろしいことです。 コレキシットと分散された油は 結合することで 単独の場合よりも もっと強力な毒になるからです。 通常は複数の毒素への曝露量は それぞれの合計になります。 しかし分散剤は 私が説明したとおり、油膜を分解するのが仕事であり、分散剤に含まれる溶剤は これを非常に効率的にします。 そして分散剤は 私たちの体内の油膜― 皮膚から臓器に至るまでの細胞を 分解するのです。つまり分散剤は 油が体内により容易に早く 吸収されることを助けるのです。 油は何百もの炭化水素化合物や その他の化合物を含んでおり、 体のあらゆる臓器に有毒です。そのため分散剤と合わさった場合、皆さんは非常に相乗的な 複合毒性にさらされるのです。 コレキシット自体も石油系溶剤や たくさんの毒性化合物を含みます

私は毒性学者と化学者が集まる 全国組織のチャットグループの 一員なのですが、 この組織は 基本的に 製品の中に何が含まれるのか、 化学品の働きと相互作用を 解明するために活動しています。 相互作用により生まれる 副産物の大半は 元の化合物よりも毒性が高く 私たちが知らないものです。 私たちはコレキシット 9500 が ヒ素やクロムなどの重金属を含むこと― そしてヒ素はガンを引き起こすのに 十分な量であることを発見しました

これは私たちが調査する 安全データシートですが、 おかしなことに そのことに関する記載は ほとんどありません。 現在 化学会社は コレキシットに含まれる 化学品の完全リストを 公表するように求められています。 しかしなぜでしょう? 多くの成分が記載されていません。 誘導体 誘導体と書かれているのは 多数の化合物です。 ソルビタンもそう そしてさらに溶剤である 石油の蒸留物も 何百もあります。 それらは特定されていません。 なぜでしょう ?企業秘密だからです。

BP社はショーを続けており Nalco社がこれを裏で行っています。 今日に至るまで 成分は公表されておらず 毒性学者達は本当に怒り狂っています。 どのような相互作用や どのような毒素の結果をもたらすか 正確に予想することができないからです。

しかし私たちはお分かりの通り、本当に大きなリスクに直面しています。 33 箇所の野生生物保護区や 多くの野生生物や 魚や生物多様性が危機に瀕しています。

私たちは過去の油濁事故から学んでいます。 過去の事故で起こったことは 私の悪夢の一部でもあります。 今回は私の苦悩の一部を 皆さんと共有できることを ありがたく思っています。

私たちは さんご礁は 大きな影響を受けることを知っています。 これは豪州 タスマニアの海岸で 起こった事故に関して 行われた研究です。 さんご礁はご存知の通り 全ての海洋生物の 約4分の1の住処です。 そしてコレキシットと石油によって さんごの繁殖能力は ゼロになってしまいます。 石油だけなら 98% の繁殖能力です。 つまり さんごは この組み合わせの影響を 非常に受けやすい生物なのです。

ここに別のグループがいます。 水柱の中で簡単に見ることができるのですが プランクトンとその捕食者です。 ご存知の通り、小さなニシンのような魚が水柱の中を口を開けたまま往来し、 見境なく餌をとり、 同時に この茶色の有毒物質のプリンを ガツガツと食べています。 別の研究から分かっていますが、 これは非常に毒性の高い塊です。 石油とコレキシットが一緒になると 石油単体の場合よりも ずっと ずっと少量で死を起こします。

これが私たちが現時点で知っている 毒性についてのすべてです。 しかし私の悪夢はさらに続きます。 この食魚性の魚― スギやハタやブリなどの大きな魚が マグロやサメも含めて この茶色のプリンにやられてしまいます。 彼らのえらは非常に繊細で 呼吸器官がとても傷つきやすいのです。 考えてみてください。 コレキシットが膜にあたり、えらに詰まるのです。 するとこれらの魚達は 化学肺炎と呼ばれる状態になり、 この化合物を吸収しようとします。 コレキシットは体内に吸収されると 内出血を起こします。

私は肺呼吸の哺乳類をとても心配しています。 研究対象であるからだけでなく、 彼らは息をするため水面に来るたびに 揮発性の蒸気に晒され、 これを吸い込むからです。 その結果として 肺炎にかかり、 肝臓、 腎臓、 脳までが損傷を受けます。 コレキシットが 石油を体内の全ての膜に 全ての器官に 届けるのです。 そしてたくさんの不快な症状が起こります。 目や口の炎症だけではなく、 皮膚の腫瘍や病班なども起こります。

個人的な見解ですが、 私たちはまだ メキシコ湾の野生生物への 油濁の本当の影響を目にしていません。

私たちは仮説を立て始めました。 私たちは何を知っているのか、栄養カスケードに何が起こるのか、つまりある生物が死滅した時に それを捕食していた 上位の全ての生物が影響を受ける という仮説です。 私たちの仮説は シンプルな考え方ですが、 実際にはプランクトンやその捕食者の レベルまでしか理解できていません。 そして私たちは栄養カスケードの分析が 上手くできていませんでした。

これがエクソン・バルディーズ号の科学者達が 考えていた栄養カスケードです。 昆布やニシンがいなくなると それより上位の魚が死滅すると考えていました。 彼らはこの栄養カスケードの頂点に シャチがいると考えていました。 実際に起こったことは より複雑でもっと固有のものでした。 岩に張り付いている 昆布やフジツボの多くは コレキシットと油の混合により 予想通りの損害を受けました 。それらは岩に接着する力の弱い 侵入種に取って代わられました。 そこに嵐が来て 彼らを岩からはがしたのです。 そしてそれがウミガモにとって すべての食料源でした。 その結果 ご存知の通り エクソン・バルディーズ号の事故により 30万羽のウミガモが失われ いまだに戻って来ていません。

現在 私たちは 独立研究を立ち上げています。 「独立」というのは 「一人で」という意味ではありません。 ここでいう独立とは 例えば今メキシコ湾で起こっている 犯罪現場の機密のようなものに 縛られないということです。 私たちは毒性の影響を 評価しようとしていますが この研究を賢く行うためには 多くのパートナーが必要です。

何人かパートナーを紹介します デービッド・ガロ [海洋学者] も その1人ですし シルビア・アール [海洋学者] もいます。 そして皆さんの中でも 手伝ってくれる人がいることを望みます。 皆さんに問います― 私たちは知るべきでは? 私たちの知る権利は? 私たちには当然知る権利があります。 メキシコ湾で経験する損失をです。

私の望み― メキシコ湾岸での重大目標は 真実を知ることです。 どのようなものであれ 私たちに真実をつかませてください。 そこにたどり着くためには アセスメント(事前影響評価)が必要です。

皆さんと問題共有でき感謝します ありがとう。

 

  

(管理人より) 体調はよくありませんが、どうにか更新してみます(不定期)

近年、世界中で大型の哺乳類や魚などの海の生き物が海岸に打ち上げられ、大量死しています。日本でも同じです。

そこで今日は海洋毒性学者のプレゼンを紹介します。黄色の強調は管理人によるものです。

私は油の流出による環境汚染についても、ブログやツイッターでずっと発信してきました。ブログに上げられなかったものもツイッターにありますので宜しければ、ご覧下さい。 

油 流出で検索 油 タンカーで検索 クジラで検索

 

●タンカー、貨物船の事故

●沈没事故(タンクローリーや自動車や軍用機、列車が海、川、湖などに転落して、燃料の油、積荷の油が流出)

●石油タンクから水路や川の支流に流出

 

こういったいろいろな形で水や土が汚染されています。数が多いので、最近の日本周辺の海への油の流出事故だけをツイッターから拾ってみます。リンクが切れているのもありますが、出来るだけソースをつけています。こういう流出事故の続報、例えば漁業などへ、どのような影響があったかなどの報道も少ないのです。わかめ養殖に影響という続報が1つだけありましたので、並べておきます。

2015~2016年に ニュースになった油流出事故(青文字) 

2016/6/24  千葉港で曳船から油流出 海洋汚染防止法違反も視野 千葉日報

 

2016/2/1 下関沖でタンカーから油流出 - NHK山口

 

2016/1/16 東京湾でタンカー衝突 油が流出 NHK

 

わかめ養殖に影響 - NHK山口

 

2015/10/17 タンカーが衝突 関門海峡周辺に重油流出 - NHK山口

 

2015/5/16 東京湾で原油タンカーの油が流出 海保庁、拡散を防ぐ作業続ける(FNN)

 

 

このように日本の海も汚染されています。その影響を見ていきます。

ナイトNITE 独立行政法人製品評価技術基盤機構のホームページから引用。長いので回収方法についてはリンク元でご覧下さい。

流出石油の処理 -物理的回収と化学的処理-  より抜粋

油処理剤は、油膜の拡大防止に効果が期待できる一方その毒性によって環境がダメージを受けるのではないかという不安を拭い去ることができないためその使用を巡っては常に議論が戦わされることになります。

流出石油が環境に及ぼす影響  より

 

環境に与える影響

魚への影響

魚は、植物や小さなプランクトン達とは違い速い速度で移動できるため、流出油で汚染された海域から移動して逃げようとします。そのため、死滅にまで至ってしまうことは少ないです。

しかし、閉鎖性の高い内湾や養殖場などでは、逃れることが難しいため、魚の大量死に繋がり易いです。魚のエラや体表は粘液膜で覆われており油が付着しにくくなっていますが、大量の油が存在した場合やエマルジョン化した油の場合は付着しやすくなるため、エラや体表に油が付着して機能不全に陥るケースもあります。稚魚や卵は、成魚よりも油に対する抵抗性が低いことが知られています。また、死に至らなくても、漁獲対象とされている魚の場合には、身が石油臭くなるといった着臭の問題があります。石油汚染された餌や海水を取り込むことによって体内に石油成分が蓄積し、不快な味や臭いを発するようになるのです。着臭した魚は、当然、食用には適さなくなってしまうため、漁業に与える影響は大きいです。

水鳥・海獣への影響

大規模な石油流出事故が起こったとき、必ずマスコミに登場するのが、油まみれになった水鳥の映像や写真でしょう。実際、海を生活の場として利用している水鳥達は、流出した石油によって大きな被害を受けやすいのが現状です。

ナホトカ号事故の際には、事故発生から3ヶ月の間に、生体・死体併せて1311羽の水鳥が保護されましたが(環境庁1997年3月17日発表)、回復したのはわずか100羽ほどでした。エクソン・バルディーズ号事故にいたっては、10-30万羽もの水鳥が死亡したと推計されており、周辺海域一帯の水鳥達に壊滅的な被害を与えたといってもよいでしょう。

水鳥の中には、油膜の拡がった海面に好んで着水するものもいるといわれ、被害を大きくする要因となっています。水鳥の羽毛は、海に潜っても羽毛が水を含まないように、疎水性の物質でコーティングされていますが、これらは親油性であるため、流出油に触れると溶け出してしまいます。水鳥は、羽毛の間に空気を蓄えることによって、海面上での浮力を保ったり、体温を維持するのに役立たせていますが、コーティングが溶け出すと、羽毛に空気を蓄えられなくなって、これらの機能が損なわれます。その結果、遊泳や飛翔が困難になったり、体温の低下によって場合によっては凍死に至ることもあります。

また、水鳥類や海獣類(海で生活している哺乳類)は、石油で汚れた羽や体毛を口で整えようとするため、そのときに石油を摂取してしまいます。皮膚から直接浸透したり、あるいは油膜から蒸発した石油成分の蒸気を吸い込んで体内に取り込んでしまう場合もあります。体内に取り込まれた石油成分は、既に述べたような細胞毒性で内臓に損傷を与えるほか、中枢神経系にも作用して行動傷害や知覚麻痺を引き起こします。石油汚染を受けた水鳥や海獣は、それが直接の死因とはならなくても、動きが鈍くなることによって、餌が獲れなくなったり外敵から身を守れなくなったりして死んでしまうことも多いようです。

潮間帯・海岸での影響

流出油は、海上を漂流しているときよりも、海岸に押し寄せたときに被害がより一層拡大します。海中を泳いでいる魚は海面上を漂う流出油から逃げることもできますが、海辺に生息している生物達は逃げる間もなく押し寄せる流出油に飲み込まれてしまいます。海岸や浅瀬に生息する生物の多くは、移動能力が乏しいか、全くないに等しいため、流出油の影響をダイレクトに受けることになります。海岸や浅瀬に生えている海藻類あるいは海草類は、流出油の被害を受けやすいものの一つです。海藻類は、体表あるいは根・仮根から油を取り込むことによって障害を受けるほか、葉体の表面が油膜に覆われることによって光合成が阻害されたり、付着した油の重みによって脱落したり剥離したりします。海藻の配偶子は海水中で受精するため、流出事故が生殖期や成長期に重なると被害はさらに大きくなります。これは、種子植物の場合も同様で、新しい根が伸びたり、花が咲いて種子ができたりする成長期に油汚染されると、かなり深刻なダメージを受けることになります。貝類など潮間帯に生息する生物は、普段から変化の激しい環境で生きているため、石油汚染に対する抵抗性も比較的強いと言われています。しかし、種によって感受性に違いがあり、大量の流出油に曝された場合には、深刻な被害を受けることもあり得ます。また、甲殻類は、他の生物に比べて抵抗性が弱いらしく、被害例が多いことが知られています。貝類やエビ、カニなど食用となっている生物の場合、魚類と同様、死に至らなくても着臭という問題が発生します。海岸に打ち上げられた漂着油は、毒性の強い低分子成分が蒸発や溶解によって失われていくため、急性毒性は低くなっていきます。流出してから長期間経過して風化の進んだ漂着油は、一般に毒性は低いです。

食物ピラミッドに及ぼす影響

流出事故を生き残ったり、運良く直接的な被害を受けなかった生物達も、流出油によってもたらされる海洋生態系の変化を多かれ少なかれ受けることになります。

海洋生態系の食物ピラミッドの下部にはプランクトンが位置しており、ピラミッド全体は植物プランクトンの光合成によって支えられています。海面に漂う油膜は太陽の光を遮るため、植物プランクトンの光合成が阻害され、植物プランクトンが減少することは十分考えられることでしょう。一方、事故後しばらく経ってから珪藻類など特定のプランクトンが増殖したという例もあり、赤潮の発生などに結びつく可能性も指摘されています。動物プランクトンも、流出油の影響を受けて、数が増減するといわれていますが、はっきりしたことはよく分かっていません。いずれにしても、流出油によるプランクトン群集の変化が、周辺の海洋生態系に影響を与える可能性は否定できません。また、プランクトンの増減以外にも、油に弱い生物種が減少することによって、生態系の構造が変化することも考えられます。

 

人間生活に与える影響

産業に対する影響

大規模な石油流出事故が起こった場合、多かれ少なかれ、漁業に影響が出るのは避けられないことです。死滅しなかったとしても、魚介類に石油臭が着けば、商品にはならなくなります。汚染海域の養殖場では、壊滅的な被害を受けるでしょう。また、魚介類に対する実際的な被害は軽微だったとしても、周辺海域で獲れた魚介類を買い控えるといった行動が起こるのは避けられないと考えられます。

また、流出油が打ち上げられた海岸では、観光産業も大きな打撃を受けます。漁業や観光産業の他にも、火力発電所や原子力発電所など海水を大量に使用する施設では、流出油の被害が発生します。これらの施設では冷却水として大量の海水を使用しているため、取水口から取り込まれた海水に油が混じっていた場合、配水管が汚れて出力が低下したり、最悪の場合には操業を停止しなければならない事態も起こり得ます。

また、汚染海域では、油の汚染や回収作業によって、船舶の航行が制限されることが多いです。船舶交通の制限は物流や人の流れに影響を及ぼすため、流出事故の間接的な影響は汚染地域のみに留まらずより広い範囲に及ぶことがあります。

人の健康に及ぼす影響

このような経済・産業的な被害だけでなく、流出油が人の健康そのものに与える影響も無視できません。特に流出油の回収・防除作業を行う人々は、流出油と直接接するため、健康被害を受けやすいです。

石油に含まれる成分の中には、人に対する毒性が認められているものも多く、特に揮発性の高い低分子成分の中に毒性の強いものが多いことが分かっています。飽和炭化水素よりも芳香族炭化水素の方が毒性が強い傾向にあり、単環芳香族のベンゼン、トルエン、キシレンといったBTX化合物は特に強い毒性を持っています。BTX化合物やn-ヘキサンをはじめとする低分子アルカンには、中枢神経抑制作用があり、いわゆるシンナー中毒様の症状を呈します。ひどくなると頭痛、めまい、吐き気などを催し、最悪の場合、死に至ります。また、眼に対する刺激性があり、眼に触れると眼が痛くなるなどの症状が出ます。これらの低分子成分は揮発性が高いため、流出油付近の大気に蒸気として高濃度に存在していることがあり、特に流出後間もない時期は、その可能性が高いでしょう。そのため、流出油回収作業を行う人は、蒸気を吸い込んだり、蒸気が眼に触れたりしないように、可能であれば防毒マスクやゴーグルを装着するべきです。

重質な成分は、軽質成分に比べて毒性が低く、短期的にはほとんど無害だとされていますが、多環芳香族の中には発ガン性や催奇形性が強く疑われているものもあります。これらの重質成分は、蒸発や溶解によって失われることがないため、回収・除去作業で取り残された場合には長期間残留してしまう可能性が高いです。

ナホトカ号事故の際には、地元住民のほか全国から大勢のボランティアが駆けつけ回収作業に従事しました。この事故では、重油回収作業中、5人の方が亡くなられるという悲劇的な出来事が起こっていますが、そのうち4人の方は急性心不全などの心臓疾患で亡くなられており、石油成分の毒性が直接の死因ではないと考えられています。心臓病の既往歴を持っていた方もおり、おそらく、寒冷下、慣れない重労働を続けたことが一因となったのでしょう。しかし、重油回収作業に従事された方の中には、重油成分によるものと思われる症状が多数発生しています。いずれにしても、手袋、ゴーグル、マスクなど防具の着用も含め、重油回収作業を行う人々の健康管理には十分注意しなければなりません。 

 

環境中に油が流出した事故などはほとんどといっていいほど続報がありません。あっても幕引きの報道が多い。

「続報が出ない=安全」ではないということは、原発事故で思い知ったはずなのに無関心な市民ばかり。なぜなら「そういうことを気にすると住めない」という「安全バイアス」がかかってしまうから、「見て見ぬふり」ということになります。

上のプレゼン動画にもありますが、油だけでなく電子廃棄物や難燃剤といったものも海を汚す原因になっているのですね。当ブログでも何度も電子廃棄物問題や難燃剤も取り上げて書きましたが、最終的に毒性物質が海に流れていくということは指摘していませんでした。

環境中に漏れ出した有害物質はすべて海に流れて海を汚染していくということです。

フクイチから毎日垂れ流しの放射性物質、タンカーからの油の流出、マイクロプラスチック、PCB、難燃剤など有毒物質の影響で、大型の哺乳類が死ぬレベルの「死の海」になってきています。

自治体ゴミ焼却灰の最終処分場も海の近くにあることが多いです。

海の生き物が死んでも、必ず海水の温度だけが原因かとされているのもおかしな話です。海水中の汚染物質の影響について報道されることがないのはなぜでしょうか?

絶滅危惧種・カブトガニの大量死(2016/8/24) は、向かい側は石油流出事故が起きた下関。さらに周辺工場からの工業排水もあります。

震災がれきも燃やした清掃工場も近くにあります。 そういったことに全く触れない報道記事↓

<カブトガニ>曽根干潟で400匹超死ぬ 海水温上昇影響か

 

先進工業国は、人間が海に持って行っても、山に持って行っても環境を汚染してしまうモノ=ゴミを作り過ぎているのです。

いつもどこかでこういう事故が起こり続けています。先進工業国はどこかで環境を汚染しているということです。自然破壊は不可逆的。生態系は元に戻らないということを忘れてしまっているようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本での石油の使われ方☟

自分の生活を変えたくないから、タンカーが事故を起こして油を流出してもだんまり。石油文明だから仕方がない? 

回収すればいい? また対策をとればいいという話にすり替えていくのですか?

 



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