中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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鎌倉の魅力:残照の紅葉と美術館のコーヒー

2009年01月09日 15時52分15秒 | 鎌倉あれこれ
                       <美術館の喫茶室にて>

         鎌倉の魅力:残照の紅葉と美術館のコーヒー
               (単独散策)
            2009年1月8日(木)

■やっぱり散歩に出掛けよう

 朝から,心地よい陽ざしが,東側の窓一杯に射し込んでくる.
 昨日(1月7日),丹沢の塔ノ岳をピストンしたばかりなので,せめて今日だけは家でゆっくりしていようと思っていた.でも,私の家の窓から良く見える鎌倉中央公園の森が.朝日を浴びて明るく光っている.抜けるような青空が森の木々を柔らかく包み込んでいる.
 こんな情景を見ていると,つい先ほどまで家にいようと思っていたのに,もう我慢ができない.連れ合いは,孫の用事か良く分からないが,朝食後,そそくさと出掛けてしまう.私1人で,家にいても仕方がないので,兎に角,早めの昼食を済ませ,暫くの間,その辺りを散策することにする.

■古本屋をハシゴ
 私は,デジカメをポケットに入れて,家を出る.どこへ行こうか?
 家の前で,エィヤッで,まずは源氏山公園を経由して,鎌倉駅まで出よう.そして,まずは補充しなければならない文房具を購入する.その後は,駅近場の梅の名所を一回りして,梅の開花状態を見ておこうと思う.
 源氏山公園の様子は,このブログでも最近よく取り上げているので,今回は,源氏山公園の様子を記述するのは省略するが,ブラブラ歩きをして,11時30分頃,鎌倉駅に到着する.
 まずは,巨福呂坂切通にある青梅聖天社に向かう.
 駅前から小町通を北上する.相変わらず観光客で賑わっている.途中のセンベイ屋の店先は,立ち食いのセンベイを求める人達の列ができている.私もセンベイは大好物だが,どうも,おおっぴらに食べ歩きをする気にはなれない.
 道すがら,2軒の古本屋に立ち寄って,何か掘り出し物がないか,見回すが,特段,直ぐに欲しい本もないが,暫くの間,数冊の本を立ち読みする.

■巨福呂坂切通
 小町通を抜けて,続きの雪ノ下1丁目の商店街に入る.もうすぐ鉄ノ井前の三叉路に出る所の東側に小さな喫茶店が開店している.今まで無かった新しい店のような気がする.コーヒー,紅茶ともに1杯300円と安価である.私のようなサンデー毎日氏にとって,少しでも安いお店は大歓迎である.私は,帰りしなに,この店のコーヒーを味わってみるつもりである.
 鶴岡八幡宮西側の鎌倉街道を,そのまま直進し,神奈川県立近代美術館前を通り過ぎる.そして,飲食店脇の三叉路を左折して,巨福呂坂切通に入る.途端に人通りが全くなくなり,辺りは静まりかえっている.

■猿田彦大神
 なだらかな登り坂を少しばかり進むと,青梅聖天社に到着する.ここから数十段の石段を登ると青梅聖天社の社殿がある.この石段の脇には沢山の梅の木が植えられている.ここの梅が咲き出しているか,とても気になっていた.見渡すとまだ梅の蕾は固いようである.ただ1本だけ数輪の花を咲かせている紅梅がある.ここの梅の見頃はまだまだ先だなと安心する.
 足許を見ると沢山の水仙が勢いよく花を咲かせている.坂道を少し先まで進むと,路傍に沢山の石碑が祀られている.やや大きな石碑には「猿田彦大神」という字が彫られている.この石碑群にどのような由来があるのか,浅学の私には分からないが,このような石碑群が街中にさりげなくあるのも鎌倉の魅力である.



青梅聖天社
 往路を少し引き返して,社殿に通じる石段を登る.100段ほどもあるだろうか,石段を登り詰めると,小さな社殿に到着する.石段下にある案内文によると,ここには,南北朝時代に作られた双身歓喜天が祀られていて,一般には夫婦和合の神様として信仰されているようである.
 
     <青梅聖天社>                  <青梅聖天社脇の水仙>

■季節外れの美しい紅葉
 社殿前の狭い広場から,今の登ってきた石段を見下ろす.目の前には鶴岡八幡宮の森が広がっている.今頃は沢山の参拝客で,鶴岡八幡宮の境内は賑やかに違いないが,ここに立っていると,まるで別世界のように静寂そのものである.私は,暫くの間,境内に留まって,静寂を楽しんでいる.
 ふと時間が気になって時計を見る.
 今,12時37分である.
 「・・さて,,,,どうしようか・・・・」
 何の予定も立てていない私は,どこへ行こうか迷う.
 ここから先のルートは,ここで公開することはできないが,途中で素晴らしい紅葉を愛でながら,静かな扇ガ谷を散策する.

            <素晴らしい紅葉が今でも見られる>

猫塚
 途中,“猫塚”と書いてある石碑を見付ける.この石碑の曰く因縁は,私には全く分からないが,“猫”という字を見付けた以上,これはもう写真を取るしかない.
 
       <猫塚>              <咲き始めた紅梅:巨福呂坂切通>

■泉の井
 ついで,泉の井を見学する.ここは鎌倉十井の一つで,近くにある説明文によると,今でも水が湧き出ているそうである.

               <泉の井>

■浄光明寺
 さらに,近くの浄光明寺を訪れる.境内にはだれ一人居ない.静寂そのものである.境内の奥の方まで拝観する気もなかったので,本堂前の庭園だけを散策する.本堂に向かって右側に端正な顔立ちの露座の観音像が安置されている.思わずこの観音像に見惚れる.脇にある説明文によると,この観音像は“楊貴妃観音像”というらしい.
 
             <浄光明寺>                                  <楊貴妃観音像>
     
■神奈川県立近代美術館
 浄光明寺から英勝寺方面へ向かう.このまま寿福寺の境内から源氏山公園を抜けて,帰宅しようかと迷ったが,まだ日が高く,記音も心地良いので,もう少し回り道をしようと思う.そこで,再び鶴岡八幡宮の方にブラブラと歩き,先ほど通った神奈川県立近代美術館の前に出る.
 美術館では「冬の所蔵品展示」を開催中である.どうやら1910~1930年代の日本の近代絵画を中心に展示をしているようである.私は急に絵画が見たくなった.私は受付で福寿手帳を提示して入館する.関内は閑散としている.
 展示場には,川上涼花,萬鉄五郎,中川一政,高村光太郎,梅原龍三郎,安井曾太郎,古賀春江,小山敬三,松本俊介,等々の巨匠の絵が展示されている.私は絵の素人なので,正直な所,絵の価値など全く分からないが,そんなことは無関係に,絵を見て回るのは好きである.私は1枚1枚の絵を丁寧に見て歩く.
 広い展示場には女性2人の係員が暇そうに見張りをしている.今,入場している客は私を含めて,ほんの数名のようである.従って館内は静寂そのものである.ここに展示されている絵は,どれもこれも,この老人の私が生まれる以前に描かれたものばかりである.それでも,今,見ても,極めて現代的センスに溢れている作品も多いのには驚かされる.
 余談になるが,私は年に数回,生まれ故郷の小諸を訪れる.そのときには,必ず懐古園の中にある小山敬三美術館を訪れて,素晴らしい浅間山の絵を眺めるのを楽しみにしている.小山敬三画伯といえば,すぐに浅間山の絵を連想する.私は,この神奈川近代美術館で.小山敬三画伯の作品「アルカンタラの橋」と対面して大変ビックリしてしまう.十字架を思わせるような幾何学模様の絵に,小山敬三画伯の懐の深さに感動してしまう.
 もう一つ感動した絵がある.それは古賀春江画伯が描いた「窓外の化粧」という奇抜な作品である.直線的,直角,直角の目立つビルの上で,若い女性が両手を広げて片足立ちをしている絵である.背景の青空にはパラシュートが,幾つも,ふわり,ふわり,と浮いている.その左下には何か工場を思わせる部屋が描かれている.この非日常的で,奇抜な組み合わせの中に,何か狂わしいような,嬉しいよう奇妙な印象を受ける.素晴らしい絵である.
 里見勝蔵画伯の「花のある静物」にも強いショックを受ける.何というアンバランス,何というコントラスト,何という猛々しさ・・・そんな渦のような感覚の世界に,思わず引き込まれてしまう.とても,古い時代の作品とは思えない狂おしさが充ち満ちている.こういう作品には,ついつい引き込まれてしまうが,凝視している内に,へとへとに疲れてしまっている自分を見いだす.私はこの絵を見ている内に,随分と体力を消耗してしまったようだ.
 「絵を眺めるのにも,体力が要るなぁ!・・・」
と実感する.
  ※気に入った作品の所感は,別途記事にする予定.


                         <出展目録>

■美術館のコーヒー
 私は体力を消耗しながらも,とても満ち足りた気分に浸っている自分を発見する.
 絵画を一回り見回わった後,美術館売店に立ち寄る.ここで,『神奈川県立近代博物館近代日本美術コレクション』という表題の小冊子を購入する.この小冊子には,今日見た全ての作品の写真が掲載されている.
 その小冊子を持って,美術館内の喫茶室に立ち寄る.そういえば,この喫茶室に入るのは,かれこれ1年振りぐらいかな.随分とご無沙汰している. 喫茶室に入ると,中年の女性が,私に,
 「・・・いらっしゃいませ.どうぞお好きな所にお座り下さい・・」
と挨拶する.私は400円也のコーヒーを所望する.
 喫茶店には先客が1人居る.どうやらこの初老の紳士は,風貌から見て,画家のようである.近付きすぎて話しかけられると面倒なので,この紳士から少し離れたテラス席に座る.
 やがて,注文したコーヒーが届けられる.テラス席には午後の太陽が降り注いでいる.太陽の光が,水を入れたコップや,コーヒーカップの縁で反射して光っている.この光がキラキラと輝いていて,実に綺麗である.
 私は,売店で入手した小冊子を開きながら,つい先ほどまで見ていた絵を思い出す.そして香しいコーヒーを賞味する.旨い.雰囲気も素晴らしい.私は,先ほどまでたまたま見掛けた300円のコーヒーを試飲するつもりでいたが,今は,もう,そんなコーヒーはどうでも良くなっている.
 テラスの先には源平池の水面が見えている.その先にある鶴岡八幡宮の参道が見下ろせる.手前の木陰から参道を往来する人達の姿が見え隠れしている.
 テラスに降り注ぐ日光は暖かい.私は日の光に身を任せて,コーヒーを賞味する.正に珠玉の一時である.
 「・・・ああ,,,良いな・・・」
私は時間が許す限り,この喫茶室でノンビリしていたかったが,そうもいかない.

            <日溜まりのコーヒー:神奈川県立近代美術館にて>
             ※灰皿があるが,私はタバコを嗜んだことはない.


                 <美術館喫茶室から源平池を見下ろす>

■雑踏の小町通
 名残惜しいが,美術館を出る.
 鶴岡八幡宮の参道に出た途端に,沢山の観光客の中に放り出されたような気分になる.若宮大路を少しばかり駅の方に向かってから裏道に入る.ところが裏道が工事中とかで,反対方向に出るように促される.仕方なく,先ほど通過した300円也の珈琲屋さんの近くから,小町通に入る.沢山の観光客と擦れ違いながら鎌倉駅に向かう.
 途中で,この頃通い始めた「ドミンゴスさんのコーヒー」店を,立ち寄らずに通過する.通過しながら,ちょっと後ろめたい気分になる.
 鎌倉駅前に到着する.
 ふと前方を見ると,山旅スクールのIさんが,お友達と歩いている.背中を丸めてリュックを背負っているので,直ぐにIさんだと分かる.声をかけたら悪いかなと,一瞬,躊躇ったが,後から,
 「Iさん,今日は・・・」
と声をかける.
 私は,Iさんが何時ものお仲間と鎌倉散策をしているのかと思ったら,お連れの方は私の知らない人だった.どうやらご近所の方だったようである.私は声をかけて悪かったかなと反省する.
                              (おわり)
「鎌倉あれこれ」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/bbad9df62419da2737687d4a01bd8c79
「鎌倉あれこれ」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/959a9a8024185f5c68967a3793c1e40d


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1 コメント

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猫塚ってどこですか? (clubey)
2010-09-10 20:52:20
こんにちは。
素敵なブログ、拝読致しました。
実は、私は各地の猫の民俗、特に猫の信仰の跡を求めて調査しているものなのですが、こちらのブログで紹介されていた猫塚の位置などを御教示頂けないでしょうか。「ここから先のルートは,ここで公開することはできない」とおっしゃっているのにお尋ねする野暮は、どうか御許し下さい。匿名性の高い情報である場合は、もしもよろしかったら私のブログ、「猫の神様を求めて」http://nekonokamisama.blog3.fc2.com/にあるメールフォームを通して頂ければ、公開はされません。不躾なお願い、恐縮です。可能ならば、よろしく御願い致します。また、これからも素敵な記事の数々をお続け下さい。
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