<山麓に咲くサクラ>
山麓の桜が満開の丹沢:塔ノ岳
(2008年第21回)
(単独山行)
2008年4月23日(水) 晴れ:山頂は曇
■山道が恋しい
Flower-hillは,4月19日(土)から21日(月)までの3日間,東海道五十三次宿場巡りの旅に参加していた。その間,旧東海道に沿って,もっぱら舗装道路ばかりの道を,約70キロメートル弱歩き続けた。
道中,多少の坂道はあったものの,ほぼ水平な道を歩くだけである。従って,平素の山歩きに較べれば,体力的には比較にならないほど楽な毎日だったが,その反面,終始,硬いアスファルト道が続くので,足の裏が妙な具合に疲労した。でも,疲労が直り始めると,無性に自然な山道を歩きたくなる。
今日は,宿場巡りを終えてから,まだ,中1日しか経っていないが,天気が良いのに誘われて,急遽,大倉尾根を往復することにした。
■大倉から歩き出す
何時ものように,藤沢からナントカキップを使って,渋沢まで行く。そして,2番目のバスに乗車して大倉に到着する。昨日の天候が今日よりもさらに良かったためか,今日は珍しく登山客が少ない。私が乗車した2番バスにも,ほんの4~5名の登山客しか乗り合わせなかった。ただ,ご常連のローギヤー氏と,久々に顔を合わせる。お互いに,
「やあ・・・暫くぶりです・・」
と挨拶を交わす。
言うまでもなく,このローギヤー氏は,登り坂が滅法強い。私が平坦な場所で,振り返っても見えなくなるぐらい引き離しても,花立山荘付近の急坂で追い越されてしまうことが多い。多分,今日も同じパターンになるに違いない。
簡単なストレッチを済ませて,7時39分に歩き出す。ローギヤー氏は,私がストレッチをしている間に,先に歩き始めたようである。
このところ雨が降っていないので,路面は乾いている。また,4月下旬ともなると,陽光は一段と明るくなる。もう初夏を思わせるほどの暑さである。
7時44分に登山口を通過する。何時ものように,薄暗い杉林の中に入り込む。前回,塔ノ岳を訪れたのは,4月15日だった。まだ,ほんの1週間しか経っていないのに,随分,暫くぶりに訪れたような錯覚に陥る。同時に,「また今日もここへ来たぞ」という躍動感が全身に漲ってくる。この感覚が堪らなく嬉しい。
<新緑のトンネル:一本松付近>
■ローギヤー氏
まだ4月だというのに,かなり蒸し暑い。でも久しぶりの山行なので心が弾む。そして,どうしても歩行速度が速くなってしまう。でも,気温が高いので,少しピッチを上げると,すぐに汗が額に滲み出てくる。
今日は,蒸し暑いことを予測して,キャメルバックに,約2リットルの水を入れて持参している。何時もよりも,0.5リットルほど余分である。その分だけ,リュックの重みが増している筈である。
登山道の周辺一面が鮮やかな新緑で覆われている。私は,意識的に,給水を頻繁に繰り返しながら,新緑の坂道を登り続ける。こうして,新緑の中を,気儘に歩けるのが,堪らなく嬉しい。ついつい鼻歌が出るほど楽しい。
8時02分に大倉高原の家への分岐を通過する。ここで,私より先に出発していたローギヤー氏に追いつく。私は,
「何時ものパターンで,駒止茶屋辺りまで,先に行かせて貰います・・」
と挨拶して,先に行かせて貰う。ローギヤー氏は,
「私は低速で参りますからどうぞ,どうそ・・・」
と言いながら,愛想良く道を譲ってくれる。私は内心では,せめて花立山荘付近までは,ローギヤー氏より先に行きたいなと思う・・・が,直ぐに「無理をしてはダメだ。他の人と競争してはダメだ」と,はやる心を抑える。
■今日の山行目的
今日の私は,つい先日,ボタン電池に入れ替えたばかりの「スントの時計」を持参している。この時計の良さは,1分当たりの上昇下降速度が表示されることにある。私は,平素,大倉尾根を,2時間10~30分台の時間で登っている。
大倉から塔ノ岳山頂の標高差は,1,201メートルある。途中の上り下りを加味すると,約1,250メートルになる。この標高差と所要時間から単純に計算すると,時速は,ほぼ500m/h(時速:meters/hourの略)前後ということになる。
しかし,実際の登山ルートは,勾配のきつい所,平らな所など,さまざまである。そこで,今回は瞬間時速にどの程度のバラツキがあるかを検証することを第一目標にしたい。この測定結果は,別途纏めて,このブログに掲載するつもりだが,坂道は,概して600 m/hから700m/h程度の速度で登っていないと,平均時速で500m/hは実現できないことが分っている。
<定点観測:尾根道からの眺望 富士山は雲の中> <補修された山道>
■富士山が見えない
8時12分に見晴茶屋を通過する。その直後の急坂を,スントの時計と睨めっこしながら登る。すると,平素,私は,この急坂を12m/m(分速:m/mはmeter/minの略),時速換算で約720m/hの速度で登っていることが分かる。
8時15分に一本松を通過する。この辺りまでは無風で蒸し暑かったが,一本松を過ぎる辺りから,涼しい風が吹き抜けてくる。この風が火照った体にはとても心地よく感じる。
直ぐに尾根道に出る。勾配が緩くなるので,歩行速度を速める。所が平らな所を歩いているつもりでも,実は4~6m/m(240~360m/h)程度の速度で登っていることが分かる。これは新鮮な驚きである。
短いけれども,急な坂道を15m/m(900m/h)の速度で登って,8時38分に駒止茶屋を通過する。大倉を歩き出してから駒止茶屋に到着するまでの所要時間は59分である。僅か1分とはいえ,1時間を切っている。このことから,私の今日の体調が,まあまあ良い方だと分かる。
駒止茶屋から先,暫くの間,伸びやかな尾根道が続く。これまで泥濘が続いて歩きにくかった山道に砂袋が敷き詰められている。随分と歩きやすくなった。
晴れていれば素晴らしい展望が開けるはずだが,今日は空一面に雲が立ち込めていて眺望が利かない。花立山荘辺りから上は厚い雲に覆われている。残念ながら,富士山も雲の中である。
<定点観測:今日の萱場平 花立は雲に隠れている>
■霧に覆われた山頂
9時10分,萱場平を通過する。定点観測のために萱場平の写真を撮る。今日の萱場平は,勿論,良く乾いている。ただ,うっすらと雲が掛かっているので見通しが悪くなっている。
再び急な登り坂になる。この坂道をかなり良いペースで登り続ける。そして,花立山荘手前の長い階段に差し掛かる。スントの時計で計測すると,今日の私は11~12m/m(660~720m/h)の速度で登っていることが分かる。
9時29分に花立山荘を通過する。山荘直前の階段で,私を追い越して行った男性が,山荘の椅子にへたり込むように座り込んでいる。
「馬鹿だな,君は・・・そんなに急いでも,結局くたばってしまうじゃないか・・」
と心の中で悪口を言いながら,彼を追い抜く。
標高が高くなるにつれて,厚い雲の中に入り込む。周囲に立ち込める霧が,ますます深くなる。
<花立場から山頂を望む:山頂は雲の中>
9時35分頃,花立場のコルを通過する。晴れていれば,ここから富士山や南アルプスが良く見えるはずだが,今日は全く何も見えない。それだけでなく,目の前の塔ノ岳山頂も雲の中である。コルを通過すると,短い下り坂が断続する。どうやら,-2~-8m/m(-120~-480m/h)の速度で下っているようである。
9時41分,金冷シを通過する。私の前後に誰も居ないので,全くマイペースで伸び伸びとした気分で登る。そして,9時54分に塔ノ岳山頂に到着する。私が山頂に到着してから,ほんの2分ほど経った頃,ローギアー氏も山頂に到着する。途中では振り返っても,姿も形も見えないほど距離が空いたのに,やっぱり急坂で追いつかれたのだ。
お互いに,
「何にも見えないですね・・・」
と何気ない挨拶をする。ローギヤー氏は,山頂で合掌した後,直ぐに下山する。私は,尊仏山荘に立ち寄ることにする。
「それでは,またお会いしましょう」
と挨拶して,ローギヤー氏とお別れする。
今日は道路の状態が良いこともあって,登りの所要時間は2時間15分であった。体調が絶好調のときには及ばないものの,マアマアの数字である。
山頂は深い霧に覆われている。弱い風が吹いている。寒い。
<仲良しコンビ:営業部長ミー君と小屋番のOさん>
■尊仏山荘:ネコのんびり
尊仏山荘に入る。先客が2人居る。ご常連の女性とカメラマン氏である。今日の小屋番はOさん。営業部長のミー君が番台に座っている。小屋番がOさんだと,ミー君もリラックスしているようである。早速,営業部長の写真を撮る。
お茶を所望して,テーブルに着く。
山荘の寒暖計を見る。10時の外気温は+9.3℃。まあ,暖かい方である。
カメラマン氏が,これから何処かへ撮影に出掛けるらしくて,いろいろと準備をしている。女性が,
「今日は残念ながら濃い霧ですね・・」
とカメラマン氏に話しかける。
「霧でも風景を撮る分には良いんだが・・・今日は花を撮ろうと思ってるんです。霧が晴れないと花が開かないんだよ・・・」
と愚痴る。
私はお話を伺いながら,そんなものかと感心する。その後も,カメラマン氏を中心に,Oさん,女性の3人が,彼方此方の山の話を続ける。私はほとんど黙ったまま雑談を聞いている。
その内に,Oさんが,私に,
「2番目のバスに何人乗ってましたか?」
と定番の質問をする。今度は私が質問する。
「ところで『俺の丹沢展』は,いつからでしたっけ?」
「今日から29日までですよ・・・是非,見に来てくださいよ」
『俺の丹沢展』は,カメラ好きの山男7人衆の写真展である。私は内心で,是非,見に行こうと思っている。会場は,
秦野市立野台1-2-5十全堂ビル2階 ぎゃらりーぜん
※畑野駅南口2番バス乗り場「日赤病院」経由バス「日赤病院前」下車徒歩1分。
10:00~18:00 入場無料
■柔らかな日射し
10時17分に尊仏山荘を出て,下山を開始する。山荘から外へ出ると,風が冷たく,やけに寒く感じる。でも,花立山荘付近まで下れば,暖かくなるのが分かっているので,多少寒いのは我慢して,下山し始める。
金冷シ付近で,同じバスに乗り合わせた方々とすれ違う。
今日は,大倉12時52分発のバスに乗る積もりである。まだ,タップリと時間があるので,途中の山道を楽しみながら,ユックリと下ることにする。今日も山頂まで登ったぞという充実感,満足感に浸りながら下る・・・これが,何とも言えない醍醐味である。正にこの恍惚感にも似た気分を味わいたいばかりに,登山をしているといっても過言ではない。だから,決して急ぐことはしない。できるだけユックリとしたペースで下り続ける。
10時32分に金冷シ,10時46分に花立山荘を通過する。ここまで下ると,先ほどの山頂での寒さが,嘘のように暖かくなる。何となく空が明るくなり始める。薄雲を通して柔らかな日射しが降り注いてくる。山荘前の急な階段をユックリと下る。登ってくる何人かの登山客とすれ違う。
ガレた下り坂に差し掛かる。紺のジャージを着た大学生と思われる団体10名ばかりが喘ぎながら登ってくる。思い切り大股で,上体を大きく揺らしながら喘いでいる。私が脇に寄って,彼らが通り過ぎるのを待つ。リーダーらしい学生が,
「今朝登られたんですか・・?」
と私に質問する。彼らは,8時頃,大倉を出発したという。私より1本後のバスで来たようである。私が山頂を往復してきたと話すと,ビックリしている。
登山とは,こんなもので,ある程度の山行技術を習得していないと,若さだけではカバーできないものもある。ここんところを,是非,知って貰いたいなと思う。
<標高1000メートル付近は満開>
■満開の桜とツツジ
11時06分,萱場平を通過する。急な階段を下っているときに,下から登ってくる登山客が話しかけてくる。
「山頂は未だですか・・・」
「そうですね~ぇ・・・山頂までは,未だチョットありますね・・・」
と曖昧な返事をする。内心では「地図も持たずに良く平気で歩けるな・・」と驚いている。
11時29分,堀山の家を通過する。この辺りから,暫くの間,満開の桜が道路沿いに沢山自生している。所々に薄紫色のツツジが咲いている。綺麗な花を愛でながら,ユックリと下り続ける。途中,急ぎ足の下山客,2人に追い抜かれる。
12時14分,見晴茶屋を通過する。そして,12時45分に大倉に到着する。
下山所要時間は2時間28分。何と,登りよりも,13分も余計である。
[山行記録]
7:39 大倉歩き出し
7:44 登山口
7:52 丹沢ベース
7:58 観音茶屋
8:02 分岐
8:10 雑事場ノ平
8:12 見晴茶屋
8:15 一本松
8:38 駒止茶屋
8:46 堀山
8:53 堀山ノ家
9:08 戸沢分岐
9:10 萱場平
9:29 花立山荘
9:41 金冷シ
9:54 塔ノ岳山頂着(気温+9.3℃)
===============================
10:17 塔ノ岳山頂発
10:32 金冷シ
10:46 花立山荘
11:06 萱場平(男性と雑談)
11:09 戸沢分岐
11:29 堀山の家
11:39 堀山
11:48 駒止茶屋
12:01 一本松
12:14 見晴茶屋
12:16 雑事場ノ平
12:24 分岐
12:27 観音茶屋
12:33 丹沢ベース
12:40 登山口
12:45 大倉
■登攀下降高度 1,200メートル
■登攀所要時間
大倉発 7時39分
塔ノ岳山頂着 9時54分
(所要時間) 2時間15分(2.25h)
登攀速度 1,200m/2.25h=533.3m/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 10時17分
大倉 着 12時45分
(所要時間) 2時間28分(2.47h)
下降速度 1,200m/2.47h=485.8m/h
※登りより下りの方が,時間が掛かってしまった。
(おわり)
次の塔ノ岳の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/49135fe97823986eb42bed404aa817d6
山麓の桜が満開の丹沢:塔ノ岳
(2008年第21回)
(単独山行)
2008年4月23日(水) 晴れ:山頂は曇
■山道が恋しい
Flower-hillは,4月19日(土)から21日(月)までの3日間,東海道五十三次宿場巡りの旅に参加していた。その間,旧東海道に沿って,もっぱら舗装道路ばかりの道を,約70キロメートル弱歩き続けた。
道中,多少の坂道はあったものの,ほぼ水平な道を歩くだけである。従って,平素の山歩きに較べれば,体力的には比較にならないほど楽な毎日だったが,その反面,終始,硬いアスファルト道が続くので,足の裏が妙な具合に疲労した。でも,疲労が直り始めると,無性に自然な山道を歩きたくなる。
今日は,宿場巡りを終えてから,まだ,中1日しか経っていないが,天気が良いのに誘われて,急遽,大倉尾根を往復することにした。
■大倉から歩き出す
何時ものように,藤沢からナントカキップを使って,渋沢まで行く。そして,2番目のバスに乗車して大倉に到着する。昨日の天候が今日よりもさらに良かったためか,今日は珍しく登山客が少ない。私が乗車した2番バスにも,ほんの4~5名の登山客しか乗り合わせなかった。ただ,ご常連のローギヤー氏と,久々に顔を合わせる。お互いに,
「やあ・・・暫くぶりです・・」
と挨拶を交わす。
言うまでもなく,このローギヤー氏は,登り坂が滅法強い。私が平坦な場所で,振り返っても見えなくなるぐらい引き離しても,花立山荘付近の急坂で追い越されてしまうことが多い。多分,今日も同じパターンになるに違いない。
簡単なストレッチを済ませて,7時39分に歩き出す。ローギヤー氏は,私がストレッチをしている間に,先に歩き始めたようである。
このところ雨が降っていないので,路面は乾いている。また,4月下旬ともなると,陽光は一段と明るくなる。もう初夏を思わせるほどの暑さである。
7時44分に登山口を通過する。何時ものように,薄暗い杉林の中に入り込む。前回,塔ノ岳を訪れたのは,4月15日だった。まだ,ほんの1週間しか経っていないのに,随分,暫くぶりに訪れたような錯覚に陥る。同時に,「また今日もここへ来たぞ」という躍動感が全身に漲ってくる。この感覚が堪らなく嬉しい。
<新緑のトンネル:一本松付近>
■ローギヤー氏
まだ4月だというのに,かなり蒸し暑い。でも久しぶりの山行なので心が弾む。そして,どうしても歩行速度が速くなってしまう。でも,気温が高いので,少しピッチを上げると,すぐに汗が額に滲み出てくる。
今日は,蒸し暑いことを予測して,キャメルバックに,約2リットルの水を入れて持参している。何時もよりも,0.5リットルほど余分である。その分だけ,リュックの重みが増している筈である。
登山道の周辺一面が鮮やかな新緑で覆われている。私は,意識的に,給水を頻繁に繰り返しながら,新緑の坂道を登り続ける。こうして,新緑の中を,気儘に歩けるのが,堪らなく嬉しい。ついつい鼻歌が出るほど楽しい。
8時02分に大倉高原の家への分岐を通過する。ここで,私より先に出発していたローギヤー氏に追いつく。私は,
「何時ものパターンで,駒止茶屋辺りまで,先に行かせて貰います・・」
と挨拶して,先に行かせて貰う。ローギヤー氏は,
「私は低速で参りますからどうぞ,どうそ・・・」
と言いながら,愛想良く道を譲ってくれる。私は内心では,せめて花立山荘付近までは,ローギヤー氏より先に行きたいなと思う・・・が,直ぐに「無理をしてはダメだ。他の人と競争してはダメだ」と,はやる心を抑える。
■今日の山行目的
今日の私は,つい先日,ボタン電池に入れ替えたばかりの「スントの時計」を持参している。この時計の良さは,1分当たりの上昇下降速度が表示されることにある。私は,平素,大倉尾根を,2時間10~30分台の時間で登っている。
大倉から塔ノ岳山頂の標高差は,1,201メートルある。途中の上り下りを加味すると,約1,250メートルになる。この標高差と所要時間から単純に計算すると,時速は,ほぼ500m/h(時速:meters/hourの略)前後ということになる。
しかし,実際の登山ルートは,勾配のきつい所,平らな所など,さまざまである。そこで,今回は瞬間時速にどの程度のバラツキがあるかを検証することを第一目標にしたい。この測定結果は,別途纏めて,このブログに掲載するつもりだが,坂道は,概して600 m/hから700m/h程度の速度で登っていないと,平均時速で500m/hは実現できないことが分っている。
<定点観測:尾根道からの眺望 富士山は雲の中> <補修された山道>
■富士山が見えない
8時12分に見晴茶屋を通過する。その直後の急坂を,スントの時計と睨めっこしながら登る。すると,平素,私は,この急坂を12m/m(分速:m/mはmeter/minの略),時速換算で約720m/hの速度で登っていることが分かる。
8時15分に一本松を通過する。この辺りまでは無風で蒸し暑かったが,一本松を過ぎる辺りから,涼しい風が吹き抜けてくる。この風が火照った体にはとても心地よく感じる。
直ぐに尾根道に出る。勾配が緩くなるので,歩行速度を速める。所が平らな所を歩いているつもりでも,実は4~6m/m(240~360m/h)程度の速度で登っていることが分かる。これは新鮮な驚きである。
短いけれども,急な坂道を15m/m(900m/h)の速度で登って,8時38分に駒止茶屋を通過する。大倉を歩き出してから駒止茶屋に到着するまでの所要時間は59分である。僅か1分とはいえ,1時間を切っている。このことから,私の今日の体調が,まあまあ良い方だと分かる。
駒止茶屋から先,暫くの間,伸びやかな尾根道が続く。これまで泥濘が続いて歩きにくかった山道に砂袋が敷き詰められている。随分と歩きやすくなった。
晴れていれば素晴らしい展望が開けるはずだが,今日は空一面に雲が立ち込めていて眺望が利かない。花立山荘辺りから上は厚い雲に覆われている。残念ながら,富士山も雲の中である。
<定点観測:今日の萱場平 花立は雲に隠れている>
■霧に覆われた山頂
9時10分,萱場平を通過する。定点観測のために萱場平の写真を撮る。今日の萱場平は,勿論,良く乾いている。ただ,うっすらと雲が掛かっているので見通しが悪くなっている。
再び急な登り坂になる。この坂道をかなり良いペースで登り続ける。そして,花立山荘手前の長い階段に差し掛かる。スントの時計で計測すると,今日の私は11~12m/m(660~720m/h)の速度で登っていることが分かる。
9時29分に花立山荘を通過する。山荘直前の階段で,私を追い越して行った男性が,山荘の椅子にへたり込むように座り込んでいる。
「馬鹿だな,君は・・・そんなに急いでも,結局くたばってしまうじゃないか・・」
と心の中で悪口を言いながら,彼を追い抜く。
標高が高くなるにつれて,厚い雲の中に入り込む。周囲に立ち込める霧が,ますます深くなる。
<花立場から山頂を望む:山頂は雲の中>
9時35分頃,花立場のコルを通過する。晴れていれば,ここから富士山や南アルプスが良く見えるはずだが,今日は全く何も見えない。それだけでなく,目の前の塔ノ岳山頂も雲の中である。コルを通過すると,短い下り坂が断続する。どうやら,-2~-8m/m(-120~-480m/h)の速度で下っているようである。
9時41分,金冷シを通過する。私の前後に誰も居ないので,全くマイペースで伸び伸びとした気分で登る。そして,9時54分に塔ノ岳山頂に到着する。私が山頂に到着してから,ほんの2分ほど経った頃,ローギアー氏も山頂に到着する。途中では振り返っても,姿も形も見えないほど距離が空いたのに,やっぱり急坂で追いつかれたのだ。
お互いに,
「何にも見えないですね・・・」
と何気ない挨拶をする。ローギヤー氏は,山頂で合掌した後,直ぐに下山する。私は,尊仏山荘に立ち寄ることにする。
「それでは,またお会いしましょう」
と挨拶して,ローギヤー氏とお別れする。
今日は道路の状態が良いこともあって,登りの所要時間は2時間15分であった。体調が絶好調のときには及ばないものの,マアマアの数字である。
山頂は深い霧に覆われている。弱い風が吹いている。寒い。
<仲良しコンビ:営業部長ミー君と小屋番のOさん>
■尊仏山荘:ネコのんびり
尊仏山荘に入る。先客が2人居る。ご常連の女性とカメラマン氏である。今日の小屋番はOさん。営業部長のミー君が番台に座っている。小屋番がOさんだと,ミー君もリラックスしているようである。早速,営業部長の写真を撮る。
お茶を所望して,テーブルに着く。
山荘の寒暖計を見る。10時の外気温は+9.3℃。まあ,暖かい方である。
カメラマン氏が,これから何処かへ撮影に出掛けるらしくて,いろいろと準備をしている。女性が,
「今日は残念ながら濃い霧ですね・・」
とカメラマン氏に話しかける。
「霧でも風景を撮る分には良いんだが・・・今日は花を撮ろうと思ってるんです。霧が晴れないと花が開かないんだよ・・・」
と愚痴る。
私はお話を伺いながら,そんなものかと感心する。その後も,カメラマン氏を中心に,Oさん,女性の3人が,彼方此方の山の話を続ける。私はほとんど黙ったまま雑談を聞いている。
その内に,Oさんが,私に,
「2番目のバスに何人乗ってましたか?」
と定番の質問をする。今度は私が質問する。
「ところで『俺の丹沢展』は,いつからでしたっけ?」
「今日から29日までですよ・・・是非,見に来てくださいよ」
『俺の丹沢展』は,カメラ好きの山男7人衆の写真展である。私は内心で,是非,見に行こうと思っている。会場は,
秦野市立野台1-2-5十全堂ビル2階 ぎゃらりーぜん
※畑野駅南口2番バス乗り場「日赤病院」経由バス「日赤病院前」下車徒歩1分。
10:00~18:00 入場無料
■柔らかな日射し
10時17分に尊仏山荘を出て,下山を開始する。山荘から外へ出ると,風が冷たく,やけに寒く感じる。でも,花立山荘付近まで下れば,暖かくなるのが分かっているので,多少寒いのは我慢して,下山し始める。
金冷シ付近で,同じバスに乗り合わせた方々とすれ違う。
今日は,大倉12時52分発のバスに乗る積もりである。まだ,タップリと時間があるので,途中の山道を楽しみながら,ユックリと下ることにする。今日も山頂まで登ったぞという充実感,満足感に浸りながら下る・・・これが,何とも言えない醍醐味である。正にこの恍惚感にも似た気分を味わいたいばかりに,登山をしているといっても過言ではない。だから,決して急ぐことはしない。できるだけユックリとしたペースで下り続ける。
10時32分に金冷シ,10時46分に花立山荘を通過する。ここまで下ると,先ほどの山頂での寒さが,嘘のように暖かくなる。何となく空が明るくなり始める。薄雲を通して柔らかな日射しが降り注いてくる。山荘前の急な階段をユックリと下る。登ってくる何人かの登山客とすれ違う。
ガレた下り坂に差し掛かる。紺のジャージを着た大学生と思われる団体10名ばかりが喘ぎながら登ってくる。思い切り大股で,上体を大きく揺らしながら喘いでいる。私が脇に寄って,彼らが通り過ぎるのを待つ。リーダーらしい学生が,
「今朝登られたんですか・・?」
と私に質問する。彼らは,8時頃,大倉を出発したという。私より1本後のバスで来たようである。私が山頂を往復してきたと話すと,ビックリしている。
登山とは,こんなもので,ある程度の山行技術を習得していないと,若さだけではカバーできないものもある。ここんところを,是非,知って貰いたいなと思う。
<標高1000メートル付近は満開>
■満開の桜とツツジ
11時06分,萱場平を通過する。急な階段を下っているときに,下から登ってくる登山客が話しかけてくる。
「山頂は未だですか・・・」
「そうですね~ぇ・・・山頂までは,未だチョットありますね・・・」
と曖昧な返事をする。内心では「地図も持たずに良く平気で歩けるな・・」と驚いている。
11時29分,堀山の家を通過する。この辺りから,暫くの間,満開の桜が道路沿いに沢山自生している。所々に薄紫色のツツジが咲いている。綺麗な花を愛でながら,ユックリと下り続ける。途中,急ぎ足の下山客,2人に追い抜かれる。
12時14分,見晴茶屋を通過する。そして,12時45分に大倉に到着する。
下山所要時間は2時間28分。何と,登りよりも,13分も余計である。
[山行記録]
7:39 大倉歩き出し
7:44 登山口
7:52 丹沢ベース
7:58 観音茶屋
8:02 分岐
8:10 雑事場ノ平
8:12 見晴茶屋
8:15 一本松
8:38 駒止茶屋
8:46 堀山
8:53 堀山ノ家
9:08 戸沢分岐
9:10 萱場平
9:29 花立山荘
9:41 金冷シ
9:54 塔ノ岳山頂着(気温+9.3℃)
===============================
10:17 塔ノ岳山頂発
10:32 金冷シ
10:46 花立山荘
11:06 萱場平(男性と雑談)
11:09 戸沢分岐
11:29 堀山の家
11:39 堀山
11:48 駒止茶屋
12:01 一本松
12:14 見晴茶屋
12:16 雑事場ノ平
12:24 分岐
12:27 観音茶屋
12:33 丹沢ベース
12:40 登山口
12:45 大倉
■登攀下降高度 1,200メートル
■登攀所要時間
大倉発 7時39分
塔ノ岳山頂着 9時54分
(所要時間) 2時間15分(2.25h)
登攀速度 1,200m/2.25h=533.3m/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 10時17分
大倉 着 12時45分
(所要時間) 2時間28分(2.47h)
下降速度 1,200m/2.47h=485.8m/h
※登りより下りの方が,時間が掛かってしまった。
(おわり)
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