中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
最初に左下の“カテゴリー”を選んで,クリックして下さい.

ペルー訪問記(57):第17日目(1):リアンカヌーコ登山口へ

2008年11月08日 11時32分36秒 | ペルー:ブランカ山脈ピスコ山登頂

                   <登山道からチョピカルキが見える>

     ペルー訪問記(57):第17日目(1):リアンカヌーコ登山口へ
            2008年7月17日(金)

<モレーンキャンプの朝>

■現地スタッフが起き出す

 夜中,22時30分頃までは熟眠できたが,それ以降は,シュラフの中で,ほとんど眠れないまま時間が経つのを待つ.外の寒気がテントを通して伝わってくる.テント生活だから仕方がないことだが,横になっていると,床が硬いので,身体の節々が痛くなる.そこで何回も寝返りを繰り返す.その度ごとにシュラフがよじれて,シュラフの中のあちこちがきつくなってくる.仕方がないので,ときどき身体を浮かせて,よじれたシュラフを元の形に戻す.
 こんなことを何回も繰り返しているうちに,午前4時頃になる.テント生活を経験している方は,良く分かると思うが,テントの中にいると,外の音が意外に良く聞こえてくる.そとでは,もう現地スタッフが忙しく動き回っているようである.多分,朝食の準備をしているのだろう.
 
       <霜が降りて寒いテント>               <質素な朝食>

■朝の回想
 現地スタッフの話し声を聞きながら,シュラフの中であれこれと考え続ける.
 私の弱点は,やっぱり,一般の方々より,高度順応が上手く行かないところにあると思う.これを,今後,どう克服したらよいのだろうか・・・そんなことを道道巡りをしながら考え続ける.
 昨日,ピスコ山に登頂の途中で,私の登る姿を後ろから見ていたチーフガイドが,
 「・・・彼は,歩き方は遅いが,足腰が安定しているので,間違いなく山頂まで行けるでしょう・・・」
と言っていたと,某氏から聞く.
 多分,登る速度が余りに遅い私を,後ろから見ていて,誰かが,
 「彼は大丈夫か・・・? (トーマスさんのように途中から下山させようか)」
とチーフガイドに相談したのに対するチーフガイドの答えだったのだろうと想像する.
 振り返ってみると,私は,還暦も大分過ぎてから,キナバル山を最初に,かなり多くの海外の高山に登ってきた.キリマンジャロ,メンヒ,ユングフラウ,モンブラン,ウイルヘルム・・・
 でも,高い山を目指すのは,そろそろヤメにして,今後は風光明媚な所をめぐるトレッキングを中心に旅を楽しむことにしようかと,シュラフの中で真面目に考える.

■やっと食べる朝食
 6時05分に起床する.
 まずはシュラフをたたむ.高度障害は幾分良くなっているようである.注意をしながら,まずは冷たい水を一口飲む.
 まわりのテントでも,人が起きだした気配がある.テントの入口を開けてみる.冷気がテントの中に流れ込む.辺りは,もうスッカリ明るくなっている.
 対面のテントから顔を出したKAさんが,
 「おはようございます・・・」
と声を掛けてくる.
 テントの外に出る.猛烈に寒い.テントは真っ白な霜で覆われている.
 6時30分から朝食である.食事テントに入る.
 今日の朝食は,ご飯とジャガイモなどの野菜が入ったスープである.
 高度障害は幾分収まっているので,ご飯半杯は何とか食べられる.スープも全部飲むことができた.

             <息を飲むモレーンの光景(7:04頃)>

<ベースキャンプへ向けて出発>

■「名もない湖」へ

 7時03分,ガイドのクラウディオさんを先頭に,モレーンキャンプを出発する.もう二度とここへ来ることはないだろうと思いながら,もう一度辺りを見回す.
 冷たい寒気が頬を強張らせる.私達はかなりユックリとしたペースで,下山し続ける.周囲には氷河で覆われた標高6,000メートル級の高山が,朝日を浴びて光り輝いている.
 7時10分,ピスコ山が良く見える場所を通過する.真っ青な空に,真っ白なピスコ山が突き刺すように聳えている.ここで写真撮影のために,ほんの暫く休憩を取る.
 私達は大きなモレーンの中に居る.足許は礫岩と砂岩が入り混じったガレ道である.かなり歩きにくい.
 7時14分,私達は「名のない湖」のリムに出る.進行方向左手に,青緑色の水をたたえた湖が見下ろせる.リムはヤセ尾根の岩稜である.狭い踏み跡道を踏み外さないように注意しながら綱渡りのような感じで歩き続ける.
 7時21分,再びピスコ山が良く見える場所に到着する.またここで写真撮影のために小休止する.ピスコ山は何度見上げても素晴らしい山だなと思う.

                <リムから「名もない湖」を望む(7:15頃)>

■風化した花崗岩の崖
 「名のない湖」のリムを半周した所で,花崗岩が風化してザレた崖下に到着する.一人ひとり間隔を空けて,このザレた崖をよじ登る.一足登る度に足許のザレがザラザラと流れ落ちる.まだ富士山よりずっと標高が高い所なので,ちょっと動くだけで直ぐに息切れがする.崖の高さはほんの20メートルほどだが,それでも,登るだけで,かなりの体力を消耗する.
 崖を登り切った所で,再び休憩を取る.

             <モレーンの先にピスコ山が聳える(8:09頃)>

■ベースキャンプのヒュッテに到着
 8時14分頃,崖の縁から再び歩き出す.登山道は次第に歩きやすくなる.私達は周囲の風景を楽しみながら,のんびりと下り続ける.美しい風景を楽しみながら下るのは,とても楽しい.
 8時30分頃,大きな礫が累々と重なり合う場所で,再び休憩を取る.私達が立っているモレーンが大な丘陵を形成しているのが分かる.太陽も大分高く上がっているので,もう寒くはない.眩しい陽光を浴びながらの休憩は実に気持がよい.
 10分ほど休憩の後,また歩き出す.8時47分頃,遙か前方にベースキャンプの幕営場の上にあるヒュッテ(Refugio Peru,標高4,665m)が見え始める.小屋の向こうには,白い山脈が見えている.
 私達が今歩いている尾根道をそのまま辿ると,この山小屋に到着する.一昨日,私達がキャンプした幕営場は,この尾根の右岸斜面を下った所にある.ベースキャンプから見えていたトラバース道が,今,私達が下っている尾根に向かって延びているが見下ろせる.

           <眼下にベースキャンプのヒュッテが見え始める(8:35頃)>


             <ベースキャンプに向けてガレた道を下る(8:40頃)>

■ヒュッテとチュピカルキ
 8時40分頃,素晴らしい風景が目の前に展開する.
 前方に,これから訪れるヒュッテが目の前である.ヒュッテの後にはチュピカルキ北峰(標高5,288m)が天空を突き刺すように聳えている.チュピカルキの稜線が朝補を浴びて光り輝いている.
 私は,この素晴らしい眺めを,帰国後,是非,絵に落としたいと思いながら,眺める.


           <ヒュッテRefugio Peruとチュピカルキ(8:47頃)>

■ヒュッテで休憩
 私達は8時51分にヒュッテに到着する.ここは,まだ標高4,600メートルを超える高所である.しかし,もっと高い所に2日間過ごしているので,ここまで下ると,平地に居るのと全く変わらない体調になる.馴れとは凄いなとつくづく思う.
 眼下には,つい2日前に野営した幕営場,ベースキャンプが広がっている.私達はその辺の石に思い思いに座り込んで,暫くの間,休憩を取る.現地スタッフの皆様からも,何となくホツとした気分が伝わってくる.
 ヒュッテから少し離れると,ヒュッテの後にピスコ山が聳えているのが見える.素晴らしい風景である.勿論,この風景を写真に収める.


                 <ヒュッテとピスコ山(8:59頃)>

<リアンカヌーコ川沿いの牧場兼幕営地>

■チュピカルキを眺めながら

 9時丁度にベースキャンプのヒュッテを出発する.
 素晴らしい眺めの登山道が続く.ヒュッテを過ぎると,登山道の状態は格段に良くなる.そういえば,登山口からベースキャンプまでは,馬やロバを登ってくるようである.足許には,馬やロバの糞が至る所に転がっている.
 前方にはチョピカルキの峰が見えている.私達は美しい風景を眺めながら,ユックリと登山道を下り続ける.

          <チュピカルキを仰ぎ見ながら心地よい散策路を下る(9:33頃)>

■紫の花が咲いている
 ここから先は,今までと比較すると長閑な登山道が続く.急でジグザグ道を下り続ける.高度が下がるにつれて,登山道の両側に草花が増えてくる.やがて,花の名前は分からないが,紫色の綺麗な花が目経つようになる.
 「・・・やっと,草花が生える高さまで下ってきたな・・・」
私は心の中で,良かったなと叫んでいる.

           <名前は分からないが,紫色の花が綺麗である(9:34頃)>

■ゲートを通過
 9時48分,ゲートを通過する.
 私達は,北アルプスの奥穂高岳に向かうときに通過するザイテングラードに良く似た尾根道を下っている.尾根の両側には大きなカールが広がっている.
 9時50分,見晴の良い所で立ち止まる.ガイドのクラディオさんが,
 「・・・連絡があるから,先に降りる.まだ時間があるからユックリ降りてきてくれ・・・」
と私達に言い残して,先に下り始める.
 私達は,多分,二度と訪れることのない風景を惜しむように眺めながら,超ユックリペースで,ノンビリと下り続ける.

                   <ゲートを潜る(9:43頃)>

■リアンカヌーコ川の河原
 10時21分,“ZONA DE USO ESPECIAL”と書いた赤い看板の前を通過する.道端には葦のような草が繁茂している.
 何時の間にか,進行方向左手に小さな川が流れている.10時26分,小さな滝の脇を通過する.眼下に広い草原が広がっている.リアンカヌーコ川の河原である.河原のあちこちに馬やロバの姿が見える.テントのようなものも沢山ある.

              <リアンカヌーコ川沿いの草原が見え出す(10:34頃)>

■ロバとすれ違う
 下から数人の兵隊が登ってくる.擦れ違いざまに「ハロー」と挨拶する.彼らはペルー海兵隊の新人だという.実弾が入っているかどうか分からないが,銃を持っているので,何となく威圧感がある.
 ジグザグ道を下り始める. 下から,2頭のロバが下から登ってくる.大きな荷物を背負っている.オドオドとしたロバの眼がとても可愛い.この辺りはロバや馬が盛んに通るらしくて,至る所に馬の糞が落ちている.大部分は乾いているが.中には出来たてのものもある.
 私は,眼下の草原に見とれている内に,ザレ道に足を取られて転倒してしまう.そのとき,偶然,右手を新しい馬の糞の中に突っ込んでしまう.「グニャ~」とした感覚が伝わってくる.私は右手を辺りの草になすりつけて急場を凌ぐ.私のすぐ後を歩いていたKAさんが,
 「・・・見ていましたよ・・・」
と言ってニヤリとする.

              <荷揚げのロバとすれ違う(10:46頃)>

■リアンカヌーコ川の河川敷
 坂を下りきって,10時50分にリアンカヌーコ川に掛かる小さな板橋を渡る.私は,この小川で,先ほど汚した右手を洗う.
 私達は,リアンカヌーコ川の河川敷に広がる気持ちの良い草原の中に居る.ここは牧場兼幕営場になっている所である.沢山の観光客やロバ,馬が屯している.

          <河川敷には沢山の馬やロバが屯している(10:51頃)>

■クラウディオさんが待っている
 草原の片隅に売店がある.そこでクラウディオさんが私達の到着を待っていた.
 迎えの車が到着するまでには,まだ時間があるというので,ここで,暫くの間,休憩を取りながら,雑談を始める.
 私は先ほど見た看板に書いてあった“USO“が気になったので,クラウディオさんに伺ってみる.クラウディオさんは,
 「う~ん・・・あれは英語に直すと,United State Organizationというような意味ですよ」
と言いながら,ちょっと自信なげに,ニヤリとする.
                          
            <売店の脇でクラウディオさんが待っている(10:54頃)>
 
                           (つづく)
「ペルー訪問記」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/b3fecb7ac76392b5ee7823dddd0f4e5e
「ペルー訪問記」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/c6320cd36cb81f8a4c288722fef09b03
このシリーズの最初の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/6fee0e316085f32cce0c47a424821346



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。