中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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モロッコ訪問記(15):第5日目:ツブカル山山頂へ

2009年08月26日 05時53分49秒 | モロッコ;ツブカル山

                 <ツブカル山山頂からアトラス山脈を望む>

          モロッコ訪問記(15):ツブカル山山頂へ
               (アルパインツアー)
          2009年6月7日(日)~18日(火)

第5日目:2009年6月11日(木)

<プロフィールマップ>




<ツブカル小屋を出発>

■薄暗い食堂
 4時55分に起床する.ツブカル小屋の標高は3,207メートルもある高地だが,身体が高所に馴れたためか,特に不調なところもなく,寝覚めはよい.通じも正常だし,気力も十分である.
 5時30分から朝食である.薄暗いランプの光だけが頼りである.2階の広間から吹き抜けになっている1階の食堂を見下ろすと,現地ガイドのアブダラさんが,席に座って,私たちが降りてくるのを待っている.


■コンチネンタル風にブレッドンバターの朝食
 メニューは至って簡単.パンとバター,チーズとティーだけ.いわゆるコンチネンタルブレックファストである.品数が少ないので,少々物足りない感じもするが,例によって,パンが美味しいので助かる.
 20分ほどで,朝食を終わる.


                  <薄暗い食堂で黙々と朝食>

■ツブカル小屋を出発
 私たちは,6時22分にツブカル小屋を出発する.
 ツブカル小屋から先は,ロバも通わない.全く人間だけの世界になる.当然,道筋に落ちている馬糞も,ここから先はない.
 小屋の裏手から,やや急な坂を下って,小さな川に置いてある木板を渡って小川の右岸に渡る.そこから,いきなり急勾配の昇り坂がはじまる.
 この辺りの地形も,あらかじめ地形図を見て予想していた様子と合致している.



<広い谷筋の岩稜>

■谷間の右岸沿いの山道を進む
 川を渡った後,私たちは谷間の道をひたすら登り続ける.所々に残雪があるガレた登り道がだらだらと続く.
 私たちは,現地山岳ガイドのモハマドさんを先頭にして登り続ける.
 標高が高いために,何となく息切れがして,なかなか調子が上がらない.私は列の後ろの方について登っているが,皆のペースに合わせて登っていくのが辛い.私は心の中で,
 「・・ひょっとして,辛いと思っているのは自分だけかな・・・そうだとすると,これはマズイな・・」
と思い始める.
 6時39分,標高3,260メートル付近で,最初の休憩を取る.辺りは拾い谷間になっている.草木が全くといって良いほど見当たらない荒涼とした岩稜地帯である.
 私たちが休憩を取っている間に,威勢の良い団体客や何人かの登山者に,次々と追い越される.
 7時06分,標高3,385メートル地点で,今日3度目の休憩を取る.辺りは日陰の急坂である.身体を休めると,途端に吹き上げてくる冷たい風が汗を吹き飛ばす.暫くすると,やたらに寒く感じるようになる.
 7時10分,また歩き出す.振り返ると,アトラス山脈の尾根に,朝日が眩しく当たり始めている.


              <アトラス山脈の尾根が朝日で輝き始める>

■空気が薄い
 目の前に見えている稜線が,だんだんと近づいてくる.私も半ば喘ぎながら,グループの後尾に付いて登り続ける.
 上の方から,若い男性が降りてくる.私は,
 「随分足の速い人だな・・もう山頂から降りてきたんだ・・」
と早合点する.私は,男性に「こんにちは」と挨拶をする.序でに,
 「山頂まで,どのくらいの時間で登りましたか・・?」
と英語で伺う.すると,彼は,峠の辺りを指さしながら,
 「息が苦しいので,もう少し上のところで,登山を諦めて,下山してきました」
と答える.私は悪いことを聞いたなと反省する.
 7時35分,標高3,480メートル付近で,また7分ほど休憩を取る.もう,私たちは,日本の南アルプスの北岳より高い所にいる.
 標高が高くて,空気が薄いためか,なかなかパワーが出ない.自分でも焦れったくなるほどの速度でしか登れない.


                 <雪渓が残る荒涼とした稜線>

<稜線を目指して>

■休憩でピーナッツ

 8時48分,標高3,755メートル地点で,またもや6分ほど休憩を取る.標高が高いので,こまめに休憩を取るのは大歓迎である.本当はもっと歩調を落として休憩を少なくした方が良いのかもしれないが,そんなことどうでも良いから,休憩が欲しいと思い続けている.
 ツアーリーダーのMさんが,ジャマエルフナ広場で買い求めたピーナッツなどを,皆に配り歩く.ピーナッツをぼりぼりと囓っていると,何となく疲れが取れるような気がするから不思議である.



              <ツアーリーダーのMさんがピーナッツを配る>

■ザレた急坂を登る
 稜線に近づくにつれて,登山道はこぶし大の砂礫混じりのゴロゴロした道から,次第に細かい砂礫のザレ道に変わる.それと同時に登り坂の勾配がさらにきつくなる.現地山岳ガイドのモハマドさんが,先頭に立って,ゆっくりとしたペースで登っていく.
 私は列の後ろから写真を撮りながら登る.内心では,
 「この程度の速度で登ってくれるんなら,私でも楽勝だな・・・」
と思えるようになる.それと同時に,気分も楽になる.
 ふと気が付くと,私と前後して登っていた観光ガイドのアブダラさんの姿が見えない.ツアーリーダーのMさんに伺うと,
 「大分下の方で,疲れたから先に降りると言って,下山してしまいましたよ・・」
 剽軽なアブダラさんが居なくなるとは,少々寂しい.




■富士山より高い尾根で休憩
 稜線に乗ってから,休憩を終えて,8時54分,再び歩き出す.稜線歩きになると,登山道の登り勾配も幾分緩やかになり,歩きやすくなる.それでも,若い人たちが多い登山グループに,どんどん追い越されてしまう.
 9時24分,標高3,890メートルの尾根近で休憩を取る.私たちは,もう,すでに富士山より高いところに居る.
 尾根から見下ろすと,私たちが苦労して登ってきた谷間が一望の下に見渡せる.
 たった今,すれ違ったグループの後ろ姿が足元に見下ろせる.
 谷の向こうには,アトラス山脈の尾根が連なって見えている.

         <漸く稜線に出る:前方にはアトラス山脈の稜線が続いている>

■ツブカル山の山頂が見える
 稜線に沿って,なだらかな登り道を進む.やがて,前方にツブカル山の山頂が見え出す.9時56分,標高4,010メートル地点で休憩を取る.近くのコルの右側に,ツブカル山山頂が見えている.
 もうここは富士山より遙かに高い場所である.気温が何度あるか分からないが,じっとしていると寒い.山岳ガイドのモハマドさんは,シッカリと防寒具を着ている.



<山頂が近い>

■茫洋とかすむ水平線
 10時29分,ツブカル山山頂の手前にある小さなコルを回り込むところで,登り最後の休憩を取る.目線が高くなっているので,一段と眺望が聞くようになる.上空は青空だが,地平線近くは砂塵が舞い上がっているのか茫洋としている.
 私たちが見てい遙か彼方にはサハラ砂漠が広がっているはずである.
 私たちは,ついにこんなに高いところまで登ったんだなと実感しながら,暫くの間,眼下の景色に見入っていた.

                 <ツブカル山山頂手前のコルで一休み>

■ギザギザに浸食された岩肌
 コルを回り込むと,直ぐ目の前にツブカル山山頂が見え出す.山の岩肌は,風雪で浸食されギザギザと尖った岩峰が重なり合っている.
 山頂には何か塔のようなものが建っているようである.
 山頂が間近とはいえ.あそこまで登らなければならないかと思うと,正直なところうんざりずる.

                <山頂直下の鋭く切り立った浸食崖>

■最後の登り坂
 いよいよツブカル山山頂が間近である.山頂の直ぐ手前に,先が見えているのに,なかなか難儀な登り坂が待ちかまえている.もう一歩,あと一歩,と酸素不足の足に言い聞かせながら,目の前の三角突起を回り込むようにして進む.
 「あと,もう一寸だ・・あともう一寸だ・・」
私も,自分に言い聞かせながら,仲間の後に続く.歩きながら,ついつい,
 「ああ・・シンドイ!・・」
と,ついつい言葉に出てしまう.

                  <山頂手前,最後の急坂>

<ツブカル山山頂に到着>

■真っ平らな山頂
 急坂を登り切ると,突然目の前が開ける.広い広い平原が広がっている.ごくなだらかな登り坂になっているが,平原の遙か先に三角錐が見えている.あそこがツブカル山の山頂である.
 辺り一面は砂礫.もちろん,草木は一本もない.沢山の登山者が山頂で休憩を取っている.
 見た目では,三角錐が直ぐそこにあるように見えるが,いくら歩いても,もどかしいほど近づかない.


             <山頂は広い平原になっている>

■ツブカル山山頂に到着
 10時57分,私たちは無事ツブカル山山頂(標高4,163m)に到着.万歳!
 「やれ,やれ,・・・やっとご到着だ!」
 山頂の三角錐は落書きで汚れている.日本の山のように山頂に神社があるわけでもない.何となく殺風景な感じがするのは否めない.
 とりあえずは,一同で登頂記念の集合写真を撮る.
 皆,良く頑張った.1人の落伍者も,故障者もなく登頂できたのは幸いである.もっともまだ下りがあるが・・・


■登頂記録
 ツブカル小屋を出発したのが6時22分,山頂到着が10時57分.従って,休憩時間込みの所要時間は,4時間35分(4.58h)である.標準時間が5時間なので,まあ,標準時間並ということだろう.
 ツブカル山荘とツブカル山山頂の標高差は,854メートル.川を越えるところで数メートルの登り返しがあるので,約860メートルと仮定する.
 したがって,今回の登攀速度は,
       860m/4.58h=187.7m/h.
 つまり,1時間当たり187メートルの登攀速度ということになる.案外遅いなという気もするが,標高4,000メートルの世界は,標高1.000~2,000メートルの世界とは違う.そう考えれば,まあ,こんなものだろうと納得する.

                               (つづく)

「モロッコ訪問記」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/be8ecdbc746ffc6a064baaed5607d9b2
「モロッコ訪問記」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/e54646d78803d27151b5df0854cdfb8b
「モロッコ訪問記」の最初の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/31b79faa79d02b8fe28dc5177880d2e4
「モロッコ訪問記」の索引
(編集中)



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