<常念岳山頂からの眺望>
北アルプス:常念岳・蝶ヶ岳縦走:第2日目(1);常念岳山頂を越えて
(アルパインツアーサービス)
2013年9月13日(金)~15日(日)
第2日目;2013年9月14日(土) 晴
<コース地図>
■コース全体図
■第2日目の行程(常念小屋→蝶ヶ岳ヒュッテ)
<早朝の常念小屋>
■尖った槍ヶ岳が見える
常念小屋が比較的空いていたので,8人部屋に5人でゆっくりと宿泊することができたのは良かったが,どなたかかなりの鼾を画く方が居られ,結構,鼾が気になって,夜中に何回も目が覚めた.もっとも,鼾など聞こえない静かな部屋で寝ていても,何時も夜中に何回も目が覚めるから,あながち鼾のせいではないことは分かってはいるが,やっぱり寝不足感がつきまとったまま朝を迎える.
5時30分から朝食である.
朝食まで,まだ時間があるので,小屋の外に出てみる.今日も良い天気である.まだ,すっかり夜が明けきっていないが,槍ヶ岳が鋭く屹立しているのが良く見えている.ここから見る槍ヶ岳が,随分と尖って見えることを再発見する.
できれば,ご来光を拝みたかったが,丁度朝食の時間とご来光の時間が重なっているので,ご来光を見るのは諦める.
<早朝の常念小屋>
■一斉に朝食
5時30分から朝食である.
今朝も,また,急かされるようにして,テーブルの奥の方から詰め込まれるようにして着席する.つい先日,ノルウェーの山小屋で,かなりユッタリした山小屋生活の残渣がこびり付いている私には,気分的に少し窮屈な感じがするが,でも,これはやむを得ないことである.とはいえ,昔の山小屋に較べたら,今の山小屋が格段に素晴らしくなっていることは確かである.
朝食のメニューは,下の写真の通りである.ご飯も結構美味しく炊けているし,大根が具のみそ汁も美味しい.朝からご飯とみそ汁のお代わりをしてしまう.
20分ほどで朝食を終わる.
出発前に,ハイドレーションシステムに2リットルほどの水を入れる.多少多めである.というのも,常念小屋では水はタダだが,これから行く蝶ヶ岳ヒュッテでは,水は有料で,1リットル150円だという.別にケチをするわけではないが,まあ,水は少し余計に持っていても悪くはないなと思ったから…
<常念小屋の美味しい朝食>
<常念小屋を出発>
■どうやら雲行きが怪しい
6時30分に,小屋の前に集合する.
全員が集まった所で,ツアーリーダーから,出発前にあらかじめ話しておきたいことがあるとのこと.何事かなと思う.概要は以下の通りである.
「…今,台風18号が接近しています.そこで明日の天気が心配です.会社(アルパインツアー社のこと)からは無理をしないで下山しなさいと言われています…そこで今日の行動予定ですが,まず,予定通り常念岳の山頂までは行きます.山頂で気象会社と会社(アルパイン)と改めて連絡を取り合って,どうするか決めます.場合によっては,昨日登ったルートを辿って,今日中に下山するかも知れません.あるいは,今日中に蝶ヶ岳を経由して,三股登山口まで下山するかも知れません.個人山行の場合は,一日で一気に三股まで下るのが普通です.
また,もし明日の天気が持つようだったら,今日は予定通り蝶ヶ岳ヒュッテまで行きますが,その代わり,明日は朝食を摂らずに,できるだけ早く下山することにしたいと思います…何れにしても早め早めに行動したいと思います…」
私は勿論大賛成.とにかく安全第一である.ここのところが,過日,廃業した某社とアルパインツアーの大きな違いだと思っている.私は,ツアー会社に費用を払って安全を買っているという意識がある.
“もし悪天候で登山がダメだったら,また来ればいいさ…”
で気分的にも開き直る.
勿論,ツアーリーダーの提案に対して,参加者全員に異論はないようである.
■常念岳目指して出発
ストレッチを終えて,6時35分に常念小屋から歩き出す.
昨日登ったときの順番が何となく残っていて,私は先頭グループ4~5人の中に入っている.最高齢者の男性は,自分のペースで…ということで最後尾に.グループの先頭,中間,最後尾に,それぞれグループリーダーが付く.至れり尽くせりの配置である.
常念岳の山頂は,目の前に見えている.
足許は,大きな石がゴロゴロしていて浮き石も結構多い,あまり歩きやすい道ではない.私たちが登り始めると,山頂から数名の男性が下山してくるのとすれ違う.
<常念岳山頂を目指して>
■常念岳山頂に到着
ガラガラとした石ころ道を登るのは結構シンドイ.
標高が高くなるにつれて,だんだんと見晴も良くなる.幸いなことに,今のところはお天気が安定していて,風もなく,晴れている.温度計は持参していないので,今,何度ぐらいか正確には分からないが,多分,20℃を切る程度の気温だろう.ユックリとした速度で登っていることもあるが,ほとんど汗をかくこともなく登り続ける.
山頂が見えているのに,なかなか骨が折れるなと思いながら登り続ける.
7時47分,先頭グループは,無事,常念岳山頂(標高2,857メートル)に到着する.
常念小屋を7時47分に出発して1ピッチ,1時間12分(1.20h)で常念岳山頂に到着シアタ事になる.常念小屋の標高は2,466メートルである.したがって,常念岳と常念小屋の標高差391メートルを1.20hで登ったことになるので,登攀速度は,
391m/1.20h=325.8m/h
となる.
1時間当たり325メートル登っているので,グループ登山であることを勘案すれば,なかなかの速度だと言えよう.
先頭グループが常念岳山頂に到着してから,10分ほど遅れて最後尾の男性も無事山頂に到着する.
<常念岳山頂からの眺望>
<常念岳山頂で休憩>
■今日明日の行動予定
ツアーリーダーが気象会社とツアー会社の両方と情報交換をしている.その結果が纏まったようである.
ツアーリーダーから相談結果の説明がある.
「…気象会社に問い合わせた所,今日の天気は安定しているそうです.明日は午後から天気が悪くなり,遅くなればなるほどますます天気が悪くなるようです.そこでツアー会社と相談した結果,今日は予定通り蝶ヶ岳ヒュッテまで行きます.その代わりに明日は,朝食を弁当にして貰い.なるべく早く…薄暗いうちに下山することにします…とにかく,今日は蝶ヶ岳ヒュッテまでなので,時間的に余裕があります.常念山頂で,もう少しユックリしましょう…」
「バンザイ!」
願ってもない最高の選択となった.私個人は,台風が来ようと来まいと,明日はなるべく早く下山したかったから,とにかく良かった.
“それでは…”
ということで,狭い山頂をウロウロしながら,素晴らしい眺望を写真に納める.
<常念岳山頂の案内標識;写っている人物は無関係>
■常念岳山頂の神社
狭い常念岳の山頂に小さいけれども立派な神社が建っている.風雪に耐えるシッカリした神社である.日本では,活火山でない限り,名だたる山の山頂には必ず神社がある.山頂の神社を見ると,山頂まで登ったぞという実感が湧いてくる.
ところが外国の山には,勿論,神社などない.山頂にあっても,ちょっとしたモニュメントだけだ.だから,正直な所,外国の山に登っても,ある種の物足りなさを感じるのは私だけだろうか.
…ま,それはともかく,神社の向こうには,穂高連峰が見えている.素晴らしい風景だ.
<常念岳の神様>
<山頂からの素晴らしい眺望>
■そそり立つ槍ヶ岳
まず,目に付くのが,鋭く尖った槍ヶ岳の偉容である.
東鎌尾根,大喰岳,中岳の稜線がとても綺麗に見えている.
“そういえば,もう,数年,槍ヶ岳方面には行っていないな…”
と思いながら,素晴らしい風景に見とれる.
<威風堂々の槍ヶ岳を望む>
■遠くに剣岳
常念岳山頂から登ってきた方向に振り返ると,青空の中,威風堂々の剣岳が聳えているのが見える.
標高は残念ながら3,000メートルに一寸足りないが,ここから眺めても.やっぱり剣岳は威風堂々の山だなとつくづく思う.
<威風堂々の剣岳>
■これから行く手の情景
蝶ヶ岳から,今日,これから行く手を望む写真を撮る.東側から雲が湧いている.台風18号の余波で反時計回りの風が東から吹き寄せているのだろう.雲が次から次へと山裾を駆け上って,消えていく.
“それにしても,随分と険しそうだな…”
私は,小さなコルが連続する登山道を見下ろしているうちに,どうしても恐怖心が湧いてしまう.これまでにも,この程度の岩稜は十分に経験しているのに,何時まで経っても怖そうな所の苦手意識が消えない.
<常念岳山頂から蝶ヶ岳方面を望む>
<大パノラマを満喫しながら稜線を行く>
■圧巻の穂高連峰
常念岳で小一時間展望休憩を取った後,8時40分に常念岳を出発する.
すぐに険しい岩稜下りが待っている.多少緊張するが,でも,まあ,歩き出してしまえば,もう恐怖心など,どこかへ吹っ飛んでしまう.いくら登山技術が未熟な私でも,この程度の岩稜歩きは,過去にイヤというほど経験しているので,開き直ってしまえば,何も問題はない.
安全な所で,前後の人に迷惑が掛からないように注意をしながら,周りの風景を見回す.そして,一瞬の間に,デジカメに風景を納める.
<圧巻の穂高連峰>
■奥穂高岳から前穂高岳
カメラを少し引くと,奥穂高岳から前穂高岳の峨々とした山稜の写真が撮れる.
かつて,ウエストンが,徳本峠から見える穂高連峰の美しさに感動したといわれるが,ここから見る穂高連峰の美しさも,徳本峠に匹敵,あるいはそれ以上かも知れない.
余談になるが…
私はウエストンの本に感動して,過去2回,島々から徳本峠まで登ったことがある.さらには霞沢岳にも…あのときも目の前に広がる穂高連峰の偉容に感動したが,今回も,あのときに匹敵するほどの感動を受ける.
“山に登っていて良かったなあ…この感動!”
私は,この年になって,北アルプスの山で感動する有り難さをしみじみと味わいながら,稜線歩きを続ける.
<奥穂高から前穂高まで一望する>
■回想の槍ヶ岳・南岳
眼を北の方に向けると,槍ヶ岳から南岳方面の稜線が綺麗に見えている.私たちは,今,正に贅沢な展望の稜線歩きをしている.
槍ヶ岳や南岳方面にも楽しい思い出がある.この辺りは山旅スクール5期の皆さんと,度々訪れたことのある所だ.稜線を眺めながら,楽しかったこと,苦しかったことなど.いろいろなことを思い出す.
“天狗原はどの辺りだろうか…?”
今見えている稜線の向こう側,槍平小屋から南岳新道を,山旅スクールの皆さんと一緒に楽しく登ったっけ…あのとき,食料品を沢山リュックに入れていたオバサンが,何時も賑やかなのに,途中から疲れ果てて静かになってしまったことなどを思い出して,一人で含み笑いをする.
<槍ヶ岳から南岳方面を望む>
■コルで休憩
9時17分,コルで休憩を取る.
相変わらず安定した天気が続いている.気温は暑くも寒くもなくて,実に心地がよい.今日はたっぷりと時間に余裕があるので,気分的にも随分と楽である.
<コルで休憩>
■振り返れば常念岳
休憩中に,今来た道を振り返る.
先ほどまで展望を楽しんでいた常念岳が高く聳えている.私たちは,もう,常念岳山頂から300メートルほど下まで下っている.
“石ころばかりの山だな…常念岳は”
が第一印象である.
<振り返れば常念岳が見える>
■奇怪なフォルムの岩
9時26分,実に“奇っ怪な”姿形をしている岩ノ横を通る.何だか神社の垂木を見ているような感じである.ひょっとしたら,この岩に何か名前が付いているのかも知れないが,とにかく面白いので,急いで写真を撮る.
<奇っ怪な岩山>
■ゴツゴツした岩を縫うように進む
暫くの間,大きな岩が累々と重なる場所が続く.特段に危険というわけではないが,とにかく歩きにくい.でも,私のようなバランス感覚が鈍くなっている高齢者には要注意の場所である.こんな所ではストックを持っていると返って邪魔である.ときには,近場にある岩に手を掛けて,バランスをとりながら慎重に歩き続ける.
それでも,私は先頭グループについて歩いているが,歩きにくいこともあって,列がバラケ始める.
<岩稜で列がバラケ始める>
■前方に見えるのは蝶槍かな?
9時57分,余りに列がばらけたので,足場の良い所で,後ろの人達が追い付くのを待つ.
これから先の行く手には,尖った山が見えている.
“あれは蝶槍かな…,いや,いや,まだ,そんなに歩いていないぞ…楽観してはダメだ”
と自問自答する.
それにしても.まだまだ険しいアップダウンが連続するようである.直ぐ目の前に見えているのは間違いなく,2,512メートル峰のようである.
5~6分待つうちに,後方の方々の大半が揃う.そして,先頭部隊も再び歩き出す.
<後ろの人達はどの辺りかなと振り返る>
■標高2,512メートル峰で休憩
やや急な坂道を登って,10時15分,標高2,512メートル峰の山頂に到着する.ここで,今日のコースで3回目の休憩を取る.
そろそろ腹も空いてくる.そこで,常念小屋で貰った昼食を開けてみる.ビニール袋の中に,パン,チーズ,カロリーメートなどの乾き物の他にポカリスエットの小瓶が入っている.
“こりゃ,驚いた! なるほど,日本の山小屋の弁当も,かなり変わってきたな…”
というのが私の率直な印象である.
もっとも,たいていの人には当たり前なのかも知れないが…
私は,出発前に買い求めていた食料品の中から,キュウリを1本取りだして食べる.山には入ると,私は何時もキュウリやトマトが食べたくなる.そこで今回もキュウリを1日1本食べられるように準備していた.
10分ほど休憩を取った後,再び歩き出す.
<常念小屋の弁当>
■相変わらず穂高連峰が見えている
休憩を取りながら,進行方向に向かって右手を見ると,穂高連峰が良く見えている.
“スバラシイ!!”
<相変わらず穂高連峰が良く見える>
(つづく)
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