『明日の神話』 ~ハチ公から太郎へ、21世紀への伝言

2009-01-08 23:56:10 | 美術館&博物館など

 

 

 井の頭線で渋田へ出て、銀座線に乗り継ぎ浅草に向かうことに決めたのは、井の頭線と銀座線を結ぶ地上2階の連絡通路壁面に、岡本太郎氏の『明日の神話』が設置されているからでした。観る者を圧倒するこの巨大壁画は、去年の11月17日から一般公開されているので、すでにご覧になった方も多いでしょう。
 高さ 5.5m & 幅 30m の巨大壁画は、メキシコシティに建設予定のホテルのロビーに飾られる予定でした。ちょうど大阪万博の『太陽の塔』を制作中で、氏はメキシコと日本を何度も往復しながらこの大作を仕上げたそうです。
 1969年、完成された壁画はホテルのロビーに飾られましたが、依頼者の経営状態が急速に悪化し、開業前にホテルは売却されてしまいます。取り外された壁画はメキシコ市内を転々とし、やがて行方不明になってしまったのですが、2003年にメキシコ国内の倉庫で発見され、以後修復作業が行われてきました。


 『明日の神話』は、同時期に制作された『太陽の塔』と並んで、岡本太郎の代表作だといえるでしょう。
 個人的な感想を述べれば、氏はピカソの『ゲルニカ』(スペイン内戦中に空爆された町ゲルニカを題材に描いた壁画)を意識したに違いないと思うのですが、縦 3.5m & 横 7.8 mの『ゲルニカ』に対して面積比で6倍!という超大作になりました。『ゲルニカ』はあえてモノクロで描かれましたが、『明日の神話』には毒々しいまでの原色が使われています。そして、『ゲルニカ』が史上初めて無差別爆撃を受けた都市を題材にして戦争の悲惨さを後世に伝える役割を担っているように、『明日の神話』は史上初めて核兵器で攻撃された広島、長崎、第五福竜丸事件を描き、核兵器の廃絶を訴えると同時に、業火に焼かれながらも再生する生きもののたくましさと美しさを描いています。
 上の写真は『明日の神話』の中心部で、ずばり原爆が炸裂する瞬間が描かれています。一瞬にして燃えあがる骸骨の周りには、この世の地獄と化した町で苦しみ逃げ惑う人々が描かれ、膨らんでゆく「キノコ雲」から逃れようと、あらゆる生きものが必死で逃げていく中、何も知らずに死の灰を浴びながら操業を続ける漁船も描かれています。

 『明日の神話』の向って右側(右写真)と、左側(左写真)。この壁画の設置を巡って四都市(岡本太郎と縁の深い東京・渋谷、『太陽の塔』のある大阪・吹田、言わずと知れた広島&長崎)で誘致運動が起こり、三都市が立候補しましたが、最終的に渋谷に決まりました。

 

 柱が若干邪魔になるけれど、この空間は『明日の神話』に相応しい広さだと思いました。思ったより光が届いて、ハレーションを起こしてしまうのが少し残念でした。
 『明日の神話』は、渋谷再開発のめどが立つ2020年までは現在地にありますが、その後は駅から約1.3km離れた永住の地へ移設されるとのことです。

 「ハチ公から太郎へ」渋谷区の招致プロジェクトHPは、 → ここをクリック


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