『洋菓子店コアンドル』 ~まさかの梯子?

2011-02-20 23:56:10 | 映画&ドラマ


 土曜日は、アフターファイブに同僚と居酒屋でお酒を飲みながら談笑し、21時に切リ上げると富士見通りにあるジャズ喫茶【NO TRUNKS】に移動して、久しぶりに酒井俊さんのライブを聴きました。
 【NO TRUNKS】は、「ヴォイス・オブ・シアター」と呼ばれているアルテックA7が鎮座しているお店です(ニワトリさんは、A7の音を知らないモグリだけど・・・)。先週、【サムタイム】に行かれなかった悔しさを地元で晴らしたわけですが、やっぱりいいですね~♪ アンコールで『かくれんぼの空』を歌ってくれたのは、私のためだったのかしら? 「好きな歌はたくさんあるけど、この歌かなり好きなんです」と前に話したことがあったっけ・・・感激です。引き続き、《四丁目バンド》のライブを聴きたくなりました。次回は是非!

 日曜日は、映画を梯子しました。和洋問わず甘いものが大好きで、出演者も好きな人たちばかりだから、デザートにちょうどいいと、『ヒアアフター』の後で『洋菓子店コアンドル』を観ることにしたのですが、これが間違いの元だったのか、久しぶりに「地雷」を踏んでしまいました。
 まさかまさか、『ヒアアフター』と『コアンドル』を梯子する観客がいるとは、『洋菓子店コアンドル』の監督は夢にも思わなかったでしょうが、ここまで差が出てしまうものなんですね、映画って。まあ、神の粋に達した監督と比べられてしまうこと自体が気の毒な気もしますが、この人が同時期に撮った掘北真希主演の映画も追って知るべしなのかも?

 『洋菓子店コアンドル』をひと言で言えば、NHKの【連続テレビ小説】が半年かけて放送された後で年末とかにまとめて放送される「総集編」を二時間に縮めたダイジェスト版のよう?
 他人の心の中に了解もなく土足で踏み込んでくる人物がヒロインで、何の根拠もないばかりか努力の裏づけもないのに生じている自信だけを武器に、全てがご都合主義的に解決してしまう物語は、連続テレビ小説そのもの! 地雷を踏んだのも久しぶりなら、感情移入できないヒロインも久しぶりです。

 彼女の(店での)先輩を演じた江口のりこさんは「あんたなんか大嫌いだ」と言い放ちますが、全くそのとおりで、他人に敬意を払うことを知らず、他人の気持ちを考えたことがあるとは思えない自己本位な言い回しと態度がどうにも不愉快でした。その上、彼女にケーキ作りの才能があることを映画ならではの語り口で示せなかったのだから(才能があれば生意気で良いというわけでもないけど)始末に終えません。

 繊細でどちらかというと出しゃばりではない人物を演じてきた蒼井優さんの、それとは正反対の人物に成り切ってしまう「演技力」には感心しましたが、金切り声を上げて喚きちらしているだけのヒロインなら誰でも「地」で演じられそうで(何とかエリカさんとか)、彼女を起用する意味があったのだろうか?とさえ思ってしまいました。同じことは、戸田恵子さんや江口のりこさんにも言えます。せっかく良い役者を揃えたのに・・・。

 (以後、ネタバレになるので、嫌な方は読み飛ばしてください)
 なかなか好演していた江口洋介さんの役柄を、それこそ『ヒアアフター』の領域まで重くする必要があったのでしょうか? 家族と別居中の元パティシエというだけで充分だったと思います。その場合、なぜ別居に至ったのかを会話や回想シーンで説明する必要はなく、江口さんの物言わぬ演技力に賭けるべきです。何も最も辛い「死」を持ち出さなくて、あのラストシーンに辿り着けたのではないかと思うし、そうしてもらいたかったです。「死」をもたらすものが『ヒアアフター』とたまたま同じでしたが、描き方にはかなりの差があります。『ヒアアフター』も直接見せてはいませんが、非常に生々しく、本物の映像を見ているというか、その場に居合わせているかと思うほど辛い気持ちになりました(だから、必ずしもその方がいいとは限らない)。

 作品に対して否定的な意見ばかり並べてしまいましたが、『洋菓子店コアンドル』と『ヒアアフター』を比べると、一般受けするのは『洋菓子店コアンドル』の方でしょう。どちらの映画もお客さんが結構入っていましたが、『ヒアアフター』の方は終映後に、バツの悪いような、キツネに包まれたような、難解な映画を見た後のような、そんな微妙な表情をしている人が多かったです。イーストウッドが大監督であることは周知の事実だから好意的に捉えたいのだけれど何だかすっきりしなくて・・・あるいは偉大なる監督の作品をわかろうと努力して、そうした表情になってしまうのかもしれません。

 『ヒアアフター』は、1997年に発表した『真夜中のサバナ』以来の怪作でした。当時のことを今でも覚えていますが、場内が明るくなっても客席はシーンと凍りついたままで、お喋りしている人は一人もいませんでした。今回も、評論家は差し障りのないことしか書けないだろうし、配給会社は宣伝部泣かせの作品を作ってくれたものだと嘆いていることでしょう。この大傑作(『ヒアアフター』)については、ニワトリさんがズバッと記事を書くつもりなので、乞うご期待?


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