大前へ ～吾妻（温泉）線

吾妻線の終着駅になる大前駅のホームと道祖神

　吾妻線イコール温線（温泉）と呼べるほどで、多くの湯治客を沿線の名湯に運んできました。この地方の鉄道にしては歴史が浅く、渋川～長野原草津口（現在）が開業したのは、戦争末期の昭和２０年のこと。よく鉄道を敷く余裕があったと感心したのですが、吾妻線は湯治客を運ぶためではなく、草津の北に位置している六合（くに）村で発見された鉄鉱石を運ぶために敷かれた鉄道だと知り、襟を正しました。どれほどの埋蔵量を見込んでいたのか、定かではありませんが、戦争を続けるために鉄鉱石は絶対必要で、貴重な鉄を鉄道に使っても六合村の鉄鉱石を欲していたのでしょう。開業が７月だったので、掘り出された鉄鉱石が戦争に使われることはありませんでした。

　渋川＆伊香保温泉、沢渡温泉、松の湯温泉、川原湯温泉、草津温泉、嬬恋温泉、万座温泉、鹿沢温泉・・・数多の湯治客を運んできた吾妻線ですが、車社会が進んでいくにつれ、ローカル線に変わっていきました。車中は結構混んでいる（満席で座れないことも！）のですが、高速道路などの道路が整備されていて、これらの温泉に行く際に、ニワトリさんも鉄道を使ったことがありませんでした。
　吾妻線は川に沿って走ることは殆どありませんが、戦時中の突貫工事で作られたせいか、カーブや勾配がかなり急で、中でも、全長７ｍの「日本一短い」樽沢トンネル付近の渓谷は紅葉の名所として知られているなど、窓から景色を眺めるのがとても楽しい鉄道です。それだけに、吾妻線に乗るときは「窓の開けられる」クハ１１５系（湘南カラー）の電車に乗りたいものです。

　吾妻線で最も美しいこの峡谷が（それが急峻であるから好都合）ダムに沈もうとしています。私もダムは必要ないと思いますが、ダムに沈む予定の川原湯温泉では「立ち退き」が進んでおり、この先工事が中止になったとしても、彼らの生活が元に戻るわけではなく、単純に喜んではいられません。

（左）岩島駅。ようやく朝日が昇ってきて、ニワトリさんも目を覚ます・・・前橋に宿を取ってしまったため、まだ暗いうちに起き出して新前橋まで戻った。前橋駅前で牛丼を食べて燃料を補給したが、とにかく寒い寒い！　やってきた列車は嫌いなロングシートだったけれど、極楽そのものの暖かい車内で、たちまち眠りについてしまった。
（右）８時０２分、大前駅に到着。８時２８分に折り返すまで、撮影＆散策タイム。終点まで乗った乗客は自分を含めて３名。内２人が旅行者だった。

　いかにも終点といった感じの大前駅。吾妻線は、一つ手前の万座＆鹿沢口までは１時間に１本以上のダイヤが組まれているが、終点の大前まで行く列車は一日わずか５本しかない。道路は菅平に通じているのに、バスの便がないので、「テツ」以外はここを訪ねる人はいない・・・。

この先に線路はない・・・駅前には吾妻川が流れている。去年からずっと護岸工事中・・・本当に必要なの？

物置みたいな待合室。時刻表は朝２本、昼１本、夕方２本！と薄く、日帰り可能は１本のみ。

万座・鹿沢口～大前間にはカッパドキア？がある。ダイヤが薄いので滅多に見られないのが残念・・・