「白秋」に想ふ―辞世へ向けて

人生の第三ステージ「白秋」のなかで、最終ステージ「玄冬」へ向けての想いを、本やメディアに託して綴る。人生、これ逍遥なり。

彷徨のはじまり―《日本の70年代 1968-1982》

2012年10月28日 | Arts
☆《日本の70年代 1968-1982》(埼玉県立近代美術館)☆

  しばしノスタルジーに浸りたくなって、ぶらりと行ってみた。埼玉県立近代美術館は思った以上に立派な建物だった。開館して30年ということで、この展覧会はその30周年記念展である。観客はパラパラという程度で、年代も40代以上と思われる人ばかり。これは予想どおり。
  展示は当時のポスター、イラスト、漫画、写真、雑誌などがほとんど。日大全共闘の写真、上村一夫の『同棲時代』の原画、及川正通のイラスト(『ぴあ』や『GORO』)などは感慨深いものがある。60年代後半から70年代前半は、なんであれ既成の権威に疑問を持ち、体制に反逆しているようなところがある。政治について何も知らなくても、反体制がカッコよさの象徴だったように思う。
  ところが、高校を卒業して練馬区内で初めて一人暮らしをはじめた頃には、街中やキャンパスからその熱気は一掃されはじめていた。いわゆる連合赤軍事件が一つの契機になったのだろう。政治について意識的に考えたこともなく(選挙になれば、親のいうまま何の考えもなく自民党に投票していた)、もちろん学生運動をやりたかったわけでもないが、何か肩すかしをくらったような気がした。
  物理をやりたいとは思っていたが、勉学に熱中するわけでもなく、都会の喧騒に誘われて、歌舞伎町などの繁華街を歩いたこともあるが、遊ぶ勇気もなかった。思えば、その頃から精神的な彷徨がはじまったのだろう。ノスタルジーは甘い感傷だけでなく苦い未練も思い起こさせる。80年代初頭、糸井重里の「不思議、大好き」や「おいしい生活」などのコピーが注目を集め、時代は明らかに変わりはじめていたが、自分の中の“時”はまだ止まったままだった。
  余談だが、女性ファッション雑誌『アンアン』は『平凡パンチ』女性版からはじまったことを初めて知った。「不思議、大好き」や「おいしい生活」のコピーは知っていても、そのコピーが載った西武百貨店のポスターは初めて見たような気がする。なお、掲載写真は70年代当時の美術系大学生の部屋を模したもの(ここだけ撮影が許可されていた)。

  

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