今回は、「源氏物語」に隠された謎をわかりやすく解説した本を紹介します。
☆謎解き源氏物語
著者=日向一雅 発行=ウェッジ 価格=1890円
本の内容
源氏物語に散りばめられた数々の謎-。さまざまな仕掛けを解き明かすにつれて浮かび上る物語の奥深さ。恋物語であると同時に王朝政治をテーマにした源氏物語の二重性をあざやかに読み解く。
[目次]
桐壺帝とはだれか
光源氏はいかにして帝王になるのか
「雨夜の品定」の蘊蓄の出典はなにか
彼らはなぜ素姓を隠して愛し合ったのか
光源氏はなぜ朧月夜と密会を重ねたのか
光源氏はなぜ須磨に下ったのか
予言はどのようにして成就したか
光源氏の政権運営はいかに巧妙であったか
光源氏の子弟教育はどのようなものだったか
光源氏はどのように正月を過ごしたか
玉鬘はなぜ九州までさすらうのか
女三の宮の登場の意味とはなにか
桐壺更衣入内の「謎」が明らかとなる
落葉の宮の人生は読者に何を問いかけるのか
光源氏にとって人生とは何であったか
宇治十帖が語るものとはなにか
浮舟よみがえりのメッセージとはなにか
「源氏物語」を恋愛小説と同時に「政治小説」と捕らえ、物語に隠されている数々の謎をわかりやすく解説した本です。それと同時に、源氏絵がカラーで多数掲載されており、見て楽しむことが出来る本でもあります。
では、本の内容と感想に移りますね。
一言で言うならば、この本とても面白いです。
私も以前から、「源氏物語」は、左大臣と右大臣の対立を初め、光源氏と頭中将の権力争い、後宮における妃たちの勢力争いなど、政治的な面にも触れていて、そのことが物語をいっそう面白くしていると感じていました。なので、この本で解き明かされていた、源氏物語に描かれた政治や歴史拝啓の謎解きの部分は特に興味を持って読みました。
例えば、「桐壷帝のモデルは醍醐天皇であり、光源氏は源高明である。」とか、「桐壷帝は天皇親政を実現しようとしていた。」などの記述はわくわくしました。その他、私がこの本を読んで興味を持った事柄を3つほど、簡単に列挙してみますね。
○光源氏は、朧月夜との密通を「罪」と意識していなかった。なぜなら、朧月夜は朱雀帝の女御や皇后ではなく、尚侍という女官の身分だったからである。そのため、光源氏は自ら須磨に退去した。これは、文徳天皇の時代、在原行平が何らかの事件に巻き込まれて須磨に退去したことが準拠となっている。「古今集」の行平の歌の言葉書きから、彼の須磨退去は、流罪でも左遷でもなかった事がうかがえる。
○玉鬘に求婚した大夫監のモデルは、肥後の豪族、菊池氏である。紫式部は、いとこに当たる肥前守平惟将の娘と文通していたので、彼女から九州の事情を色々聞いていたのではないか。
○明石一族の祖先は皇位継承に敗れた親王である。そのため子孫は皇位に執着した。按察使大納言は桐壷更衣を桐壷帝に入内させ、皇子誕生を期待した。そして、按察使大納言の甥に当たる明石の入道は、娘の明石の上を天皇の外戚になりうる身分である光源氏に託し、子孫が天皇になることを熱望した。
ね、何かわくわくしませんか?特に、明石一族の祖先の話は目からウロコでした。
もちろん、恋愛小説としての「源氏物語」についてもしっかり解説されています。紫の上、玉鬘、女三の宮の結婚には、当時の女の幸せとは何かという問題が含まれているようです。「源氏物語」には、今も昔も変わらない、深い問題がたくさん隠されているのですね。改めて、「源氏物語」の深さを再認識させられた1冊でした。
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☆謎解き源氏物語
著者=日向一雅 発行=ウェッジ 価格=1890円
本の内容
源氏物語に散りばめられた数々の謎-。さまざまな仕掛けを解き明かすにつれて浮かび上る物語の奥深さ。恋物語であると同時に王朝政治をテーマにした源氏物語の二重性をあざやかに読み解く。
[目次]
桐壺帝とはだれか
光源氏はいかにして帝王になるのか
「雨夜の品定」の蘊蓄の出典はなにか
彼らはなぜ素姓を隠して愛し合ったのか
光源氏はなぜ朧月夜と密会を重ねたのか
光源氏はなぜ須磨に下ったのか
予言はどのようにして成就したか
光源氏の政権運営はいかに巧妙であったか
光源氏の子弟教育はどのようなものだったか
光源氏はどのように正月を過ごしたか
玉鬘はなぜ九州までさすらうのか
女三の宮の登場の意味とはなにか
桐壺更衣入内の「謎」が明らかとなる
落葉の宮の人生は読者に何を問いかけるのか
光源氏にとって人生とは何であったか
宇治十帖が語るものとはなにか
浮舟よみがえりのメッセージとはなにか
「源氏物語」を恋愛小説と同時に「政治小説」と捕らえ、物語に隠されている数々の謎をわかりやすく解説した本です。それと同時に、源氏絵がカラーで多数掲載されており、見て楽しむことが出来る本でもあります。
では、本の内容と感想に移りますね。
一言で言うならば、この本とても面白いです。
私も以前から、「源氏物語」は、左大臣と右大臣の対立を初め、光源氏と頭中将の権力争い、後宮における妃たちの勢力争いなど、政治的な面にも触れていて、そのことが物語をいっそう面白くしていると感じていました。なので、この本で解き明かされていた、源氏物語に描かれた政治や歴史拝啓の謎解きの部分は特に興味を持って読みました。
例えば、「桐壷帝のモデルは醍醐天皇であり、光源氏は源高明である。」とか、「桐壷帝は天皇親政を実現しようとしていた。」などの記述はわくわくしました。その他、私がこの本を読んで興味を持った事柄を3つほど、簡単に列挙してみますね。
○光源氏は、朧月夜との密通を「罪」と意識していなかった。なぜなら、朧月夜は朱雀帝の女御や皇后ではなく、尚侍という女官の身分だったからである。そのため、光源氏は自ら須磨に退去した。これは、文徳天皇の時代、在原行平が何らかの事件に巻き込まれて須磨に退去したことが準拠となっている。「古今集」の行平の歌の言葉書きから、彼の須磨退去は、流罪でも左遷でもなかった事がうかがえる。
○玉鬘に求婚した大夫監のモデルは、肥後の豪族、菊池氏である。紫式部は、いとこに当たる肥前守平惟将の娘と文通していたので、彼女から九州の事情を色々聞いていたのではないか。
○明石一族の祖先は皇位継承に敗れた親王である。そのため子孫は皇位に執着した。按察使大納言は桐壷更衣を桐壷帝に入内させ、皇子誕生を期待した。そして、按察使大納言の甥に当たる明石の入道は、娘の明石の上を天皇の外戚になりうる身分である光源氏に託し、子孫が天皇になることを熱望した。
ね、何かわくわくしませんか?特に、明石一族の祖先の話は目からウロコでした。
もちろん、恋愛小説としての「源氏物語」についてもしっかり解説されています。紫の上、玉鬘、女三の宮の結婚には、当時の女の幸せとは何かという問題が含まれているようです。「源氏物語」には、今も昔も変わらない、深い問題がたくさん隠されているのですね。改めて、「源氏物語」の深さを再認識させられた1冊でした。
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