平安夢柔話

いらっしゃいませ(^^)
管理人えりかの趣味のページ。歴史・平安文学・旅行記・音楽、日常などについて書いています。

大河ドラマ「義経」第28回&大姫の生涯

2005-07-20 06:32:14 | 2005年大河ドラマ「義経」
 大河ドラマ「義経」第28回の感想です。

 今回の見どころは重衡と大姫&義高だったと思いますが?…、私個人としては重衡と頼朝の対面が一番印象に残りました。私が重衡のファンであり、しかも現在、彼を主人公にした小説を読んでいるので、よけいこの場面に感情移入ができたのかもしれませんけれど…。
  あくまでも私の意見ですが、重衡と頼朝の対面の場面は間違いなく今までのこのドラマの№1です。重衡さん、とっても格好良かったです!

 「平家が三種の神器を返さないことをどう思うか。」という質問に対して、「それは当たり前のことだ。」と悪びれず答える重衡。また、南都焼き討ちに対しても、「これは私の一存でやったこと。」と堂々と答えていました。
 そして、そんな重衡の立派な態度に感服する頼朝。何故かとっても感動してしまいました。
 ただこのドラマでは、南都焼き討ちの場面の描き方があまりにも簡略でしたので、重衡の立場の微妙さがいまいち伝わってこない……という部分があります。それがとても残念でした。南都焼き討ちとそれに関わった重衡の心の内面をしっかり描いておけば、この場面はもっともっと感動的だったと思うのですが…。
 それと、義経と重衡の会話もなかなか良かったです。二人は幼い頃、お互いに兄弟のような親しみを持っていたのですね…。でも今は敵と味方に別れてしまった……、観ていて切なかったです。 

 このように重衡が登場する場面はとても良かったですけれど、やはり今回もいつものようにつっこみ所満載でした。

 まず、重衡に「三種の神器を返すように。」という手紙を書かせたのは、義経ではなくて後白河法皇ではなかったでしょうか?
 三種の神器を一番欲しがっているのは法皇のはずです。というより、義経が法皇の許可なく、平家に対して神器の返却についての交渉をしていた……というようなことは絶対になかったと思うのです。なのでいつ法皇が登場するのか、画面を食い入るように見ていたのですけれど、ついに登場しませんでしたね。
せめて法皇には、平家から送られた「神器は返さない。」という手紙を見ながら、一言毒のあるせりふを吐いて欲しかったです。

 「重衡を鎌倉に連れてこい。」という頼朝の命を受け、義経は鎌倉に一時帰還することになります。しかしこれは完全にドラマの創作です。重衡を鎌倉に連行したのは梶原景時だったと思うのですが、ドラマでは当の景時は都に残っていたようですね。
「戦目付だから都に残っているべきだ。」というもっともらしい理由をつけられていたようですが……。何かわけわかりませんよね。

 史実にはない義経鎌倉帰還を創作した理由は、大姫と義高の事件に彼を関わらせるためだったのだと思います。
 それにしても義高出奔から殺害まで……、私は観ていて何が何だかわかりませんでした。大姫には隠してあった義仲の討ち死にを、侍女が姫に告げ口し、それにより大姫自身が義高を逃がした……というようなことにしたかったのでしょうか?
義高を逃がしたことはひた隠しにしなければならないはずなのに、大姫の侍女たちが「義高さま出奔」と大騒ぎをしてそれが頼朝の耳に入り、怒った頼朝が「義高の首をはねよ。」と命令したようですね。でもこのあたりの展開は、まるで何か三流の芝居を観ているような気分でした。

 私が前に読んだいくつかの本によると、「義高は殺す。」という頼朝の意向を察した政子が、義高を女装させて鎌倉からこっそり逃がした……ということになっていたと思います。どうやら義高は、父義仲の生まれ故郷に向かったようですよね。もしかするとそこには、彼の有力な支援者になり得るような人物(義仲における中原氏のような)がいたのかもしれません。
こうしてみると政子は、「何とかして義高の命を救ってあげたい。」と実際思っていたとも考えられますよね。
 なので今回のドラマのストーリーも、「政子が義高をこっそり逃がした。」という感じにした方がすっきりしたと私は思うのです。それなら、「姫のためにどうか義高の命を助けてやって下さい。」という政子のせりふも生きてくると思うのです。
 でも、今回のドラマのようなストーリーでは、政子のこのせりふに違和感と唐突さを感じてしまいます。今までの政子の描き方が描き方だけに、よけいそう感じるのかもしれませんが。と言うより、今までの政子の描き方を考えると、政子が義高をこっそり逃がすという展開にはできなかったのかもしれませんよね。

 義高が殺されるところも何かあっけなくてがっかりしてしまいました。
そしてその場に義経主従が駆けつけるとはどういうわけ……と思ってしまいました。 

 それでも大姫が「義高さま!!」と叫びながら泣いている場面を観たときは、「かわいそうに……」と思って目が熱くなりました。大姫役の子がかわいらしくてしかも演技が上手だからかもしれませんね。
 そこで今回は、大姫の短くも波乱に富んだ生涯について書かせていただきたいと思います。


 大姫 1178(79とも)~1197年
 源頼朝と北条政子の長女として伊豆国で生まれました。大姫は長女という意味の呼称であって、本名は不明ですが、「小松姫」という名前だったという説もあるようです。(コンサイス日本人名事典による。)

 寿永二年(1183)、父頼朝と木曽義仲との和睦のために鎌倉に送られてきた義仲の子義高と婚約します。大姫にとっては自分とそれほど年も変わらず、しかも許婚者だという親しみもあったのでしょう。それは突然知らない土地に送り込まれた義高も同じだったと思います。そのようなわけで、二人は大変仲睦まじかったようです。
 しかし翌年、義仲が敗死すると、義高は頼朝の命によって殺害されてしまいました。
 頼朝にとっては、「義高はかつての自分と同じ。もし生かしておけば長じて自分の仇になるに違いない。」と考えたのでしょう。政子にしても、何とか義高の命を救おうと彼を逃がしたり、殺されてしまったことを聞いたときに頼朝に猛講義はしたものの、一方では「仕方がない。」という気持ちの方が強かったと思うのです。そして頼朝も政子も、「大姫はまだ小さいから、じきに義高のことなど忘れてしまうだろう。」とたかをくくっていたと思います。

 しかし大姫にとって、義高が殺されたことは、大変な悲しみでありショックでした。彼女は飲食を絶ち、ついに寝込んでしまいます。また、何事に対しても興味を示さなくなり、気鬱のような状態になっていきました。物事を感じやすい性格だったと思われる大姫にとっては、義高を失った心の傷は計り知れないものだったのです。
 これには頼朝夫妻も驚き、大姫の心身を回復させようとあらゆる手段を構じることとなりました。義高殺害を実行した者を殺してしまったのもその一例でした。
そして、あちらこちらの寺社に加持祈祷を頼んだりもしています。しかし、大姫の心身はいっこうに良くなりませんでした。

 建久五年(1194)、頼朝は自分の甥に当たる藤原高能と大姫の婚約を取り図ろうとします。しかしそれを知った大姫は、「私はどこにも嫁ぎません。もし無理やり結婚させるなら身を投げて死んでやる!」と言ってがんとして受けつけなかったといいます。頼朝や政子は、「結婚でもさせれば大姫の気鬱も治るかもしれない。」と考えたのでしょうが、大姫の心の中には依然として義高が大きなウエイトを占めていたのでしょうね。

 しかし頼朝は、大姫を政略の道具として考えることも忘れていなかったようです。
建久六年になると彼は、大姫を後鳥羽天皇の後宮に入内させようと色々画策するようになるのです。やはり頼朝も、京都の貴族や朝廷を無視することはできなかったのでしょう。彼も結局、平清盛と同じ道を歩こうとしていたように思えます。
 そのようなわけで彼は、長年の盟友であった藤原兼実と決別せざるを得なくなります。と言うのも兼実の娘任子は後鳥羽天皇の中宮でした。しかも任子は皇子を産んでいなかったため、兼実にしてみれば頼朝の娘に入内されては困るわけです。
兼実の協力が得られない以上、頼朝が大姫入内のために頼ったのは、兼実の仇敵と言うべき源通親や丹後局でした。頼朝はこの頃、東大寺の大仏開眼供養のために政子や大姫を連れて上洛していますが、通親や丹後局と直接合って大姫の入内についての交渉をする目的もあったと思われます。
 そこまでして娘の入内を実現させようとした頼朝でしたが、大姫は入内を拒否し続け、更に病気がますます重くなり、建久八年(1197)七月、その短い生涯を閉じました。まさに、義高のことを思い続け、頼朝に抵抗し続けた一生だったと言えそうですね。

 大姫にとっては、乱世の武家の棟梁の家に生まれてしまったことが、そもそもの不幸だったのかもしれません。それに、義高を想う気持ちはあまりにも幼く、純粋すぎたように思えます。
 ただ、二人が悲劇的な運命に翻弄されたことで、大姫と義高の幼い恋は現代の私たちに感動を与えるのかもしれませんね。

 頼朝からは立派な人物だと感服されたものの、このあと南都の僧に斬首される平重衡。御家人たちに嫌われながら、ついには鎌倉幕府に反旗をひるがえして敗死する梶原景時。そして兄頼朝と不和になり、最後には平泉で自刃する義経……。
大姫と義高もそうですが、今回登場した人物たちの様々な運命を考えたとき、乱世という時代が人間に及ぼす影響の大きさを思い、少ししんみりしてしまいました。

 さて来週は、いよいよ義経が法皇さまに翻弄されるみたいですね。そして頼朝の怒りを買い、「今度の合戦には出陣しなくていい。」と言われるようです。
 更に、義経の正室となる河越の姫が登場するようですね。彼女がどのようなキャラクターに描かれるのか楽しみです。
 

最新の画像もっと見る