平安夢柔話

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藤原道長

2005-02-12 10:22:16 | 歴史人物伝
 コノブログのブックマークに登録してある、他のブログ様やサイト様を観ておわかりだと思いますが、私は藤原道長同盟に参加しています。この同盟の活動内容は「道長が好きだということをアピールする。」ということですので、今日は私が道長を好きだということをアピールしたいと思います。

 そうなのです、私は道長さんの大ファンなのです…。ファン歴は15年以上……といったところでしょうか。

 でも、私は最初は道長さんが嫌いだったのです。理由は、小学校の社会科の教科書に載っていた「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」という歌を観たことでした。「この世がすべて自分の世ですって?! 何ておごり高ぶった人!」と、思いましたね。

 ところが、そんな私を道長さんのファンにしたのが、永井路子さんの小説『この世をば』でした。その少し前、私は永井路子さんの平安時代に関するエッセイを読み、ほんの少しだけ、平安時代に関心を持ち始めていたのでした。なので、何気なくこの小説を手に取ったわけです。そして、すっかり夢中になってしまいました。

 とにかく道長さんという人が血の通った人間として描かれていたのです。迷ったり悩んだり……。とにかくおっとりとした平凡な人に描かれていました。でも、世の中を冷静に観察しているなというイメージはありました。特に一上の左大臣になってからの道長さんは、徐々に政治手腕に優れた人物に成長していきます。読み終わったあとの感想は、「やはり道長さんはただ者ではない。」でした。
 そして、道長さんの周辺人物、奥様の倫子さんやお姉さまの詮子さん、お兄様の道隆さんや道兼さん、みんな生き生きと描かれていました。この小説を読んで、平安時代に本格的に興味を持ったのは言うまでもありません。
この永井さんの『この世をば』がなかったら、今の私はなかった……、と言っても過言ではないと思います。なので、私は永井さんの本が大好きなのです。

 それはともかくとして、「この世をば……」の歌が詠まれた経緯と、なぜこの歌が後世に伝わったかの事情についても、この小説で詳しく知ることができました。

この歌が詠まれたのは、寛仁二年(1018)十月十六日、道長さんの三女威子が後一条天皇の中宮となったお祝いの酒宴でのことです。
 道長さんは、まさに人生最高の時を迎えていたとも言っていいです。
この時の帝は後一条天皇、つまり道長さんの長女彰子が一条天皇との間にもうけた方でした。そして、皇太子は敦良親王、この方は後一条天皇の同母弟ですからやはり道長さんの孫です。
 また、当時の太皇太后は道長さんの長女彰子、皇太后は次女妍子、中宮は三女威子でした。
さらに、天皇の代行とも言える摂政は道長さんの長男頼通でした。道長さんは、すでに摂政を辞していたのですが時々参内して、政界ににらみを利かせていたのです。
 このように、天皇家も政界もほとんど道長ファミリーで固められていたというのがこの頃です。なのである意味においては、「この世をわが世」と思ったことも、自然であったかもしれませんね。
 「この世をば……」の歌は、そんな頃の酒宴の席での座興として詠まれた即興の歌だったのです。つまり、酔っぱらったおじさんが「気持ちよかったから、つい大きなことを言っちゃったなあ。」というごく軽い気持ちで詠んだ歌なのです。決しておごり高ぶって詠んだ歌ではありません。そのようなわけで、この歌は、彼の一代記を描いたとも言える『大鏡』にも、『栄花物語』にも載っていません。

 それでは、誰がこの歌を後世に伝えたのでしょうか?

 その人は、藤原実資さんという方です。当時大納言兼右大将でした。彼の日記『小右記』は現在でも当時の貴重な史料となっています。
この実資さんという方は、小野宮流の祖、藤原実頼の孫に当たります。実頼は、藤原忠平の長男になります。実資さんは、この実頼に早くからその才気を買われて、彼の養子になっていました。つまり、小野宮流の人たち、特に実資さんの頭の中では、「藤原氏の本流は我が家だ。」という考えがものすごくあったと思うのです。
 実資さんは有職故実に明るく、何かと先例を無視したがる道長さんに対して、かなりのライバル意識を持っていたようです。『小右記』には、道長さんへの批判が数多く書かれているそうです。その『小右記』に、この「この世をば……」の歌が書き残されてしまったのでした。実資さんにしてみれば、「この世を我が世だって?あきれるにも程がある!」と思ったのでしょうね。その結果、「道長」=「おごり高ぶった人」というイメージが後世作られてしまったわけです。

 道長さんが、実際にどのような人だったかは想像するしかありませんが、私は、彼は優れた政治家で文化人だったと思っています。道長さんが一上の左大臣、摂政であった時代は特に大きな政変も戦乱もなく、世の中は比較的安定していました。そして、華やかな王朝文化が花開いたのもこの時期です。『源氏物語』が書かれたのもこの頃ですし…。道長さん自身も、漢詩を作るのが得意だったようです。

 もちろん道長さんにも「ちょっと……」というところはあります。兄道隆の死後、その遺児達に対してはかなり強引なことをしています。また、三条天皇に対しては、「早く自分の孫を即位させたい。」と思う余り、陰湿な嫌がらせをしました。「何もそこまでしなくても……」と思ってしまう点もあります。しかし、道長さんでなくても、権力者ならそのくらいやったと思うのですよね。

 結論。
やはり道長さんはすごい人です。大好きです。私の筆力では、やはり道長さんの魅力のすべてを書くことができないです…。
 でも、これからも道長さんのことは時折書くかもしれません。なのでみなさんも、よろしければおつき合い下さいね。

☆永井路子さんの小説『この世をば』は以下の本が出版されています。
 『この世をば』(上) 700円 新潮社・新潮文庫
 『この世をば』(下) 660円 新潮社 新潮文庫
永井路子歴史小説全集五 『この世をば』 4983円 中央公論新社

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6 コメント

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ぜひぜひ (とんぼ)
2005-02-13 19:16:45
永井さんの本は一冊だけ読んだことがあります。

道長さんの生きた時代はとんぼも非常に興味があるので、是非この小説を読んでみたいと思います。

道長さんサイドから語られる歴史はどうなんでしょうか、ドキドキします。



とんぼは定子様ファンなので、なんとなく道長さんを敵視しちゃいますが(笑)

どう変わるか楽しみです。
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読みました (日光山)
2005-02-13 20:44:12
えりかさん、こんばんは。

永井さんの「この世をば」は前に読みました。

永井さんは鎌倉物でも有名ですね。

源実朝暗殺の黒幕が北条義時でなく、三浦としたのはいまや定説になっていますね。

永井さんの本はすごく読みやすいです。



追記

拙サイトの映像世界の家康公で丹波さんを追加しました。
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定子さま (えりか)
2005-02-13 20:54:59
 とんぼさん、今晩は♪



 とんぼさんは定子さまファンなのですね♪「枕草子」を読んでいると、定子さまって本当に頭が良くてお優しい方だなといつも思います。清少納言との女の友情も素敵ですよね。



 この時代は、それぞれ色々な立場もあり、誰が善玉で誰が悪玉かは単純には決められないような気がします。それに、道長ファミリーと中関白ファミリーはご親戚ですものね。



 道長さんから描いた歴史も、とっても面白いですよ。「この世をば」、ぜひぜひ読んでみて下さいませ。では、では。
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永井さんの小説 (えりか)
2005-02-13 21:10:49
 日光山さん、今晩は♪



 「この世をば」、日光山さんも読んだことがあるのですね♪永井さんの鎌倉ものの小説は、「炎環」は読んだことがあるのですが、「北条政子」はまだ未読です。一応古書店で購入したのですが……。近いうちに読んでみたいですね。



 実朝暗殺の影の黒幕は北条氏ではなく三浦氏という説は、的を射ているように思えました。



 「映像世界の家康公」、更新なさったのですね。拝見するのが楽しみです。では、では。
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「この世をば」 (なぎ)
2005-02-13 22:09:06
えりかさん こんばんは!

「この世をば」、読んでみたいとかねがね思いながら、永井さんファンのくせに未読です。



えりかさんの記事を拝見しまして、ますます読んでみたくなりました♪



ところで、先週発売された 週刊『ビジュアル日本の歴史 №54 武士の登場4 花開く王朝文化』では、彰子の入内から道長のこと、清少納言や紫式部のこと掲載されていますよ!

もうチェックなさいましたでしょうか。

巻末付録に、“源氏物語絵巻”の<柏木一>と<柏木三>が付いています!!



ひととおり目を通しましたが、誤字や絵の解説に誤りをいくつか見つけてしまいました。(笑)

それを差し引いても、見ごたえのある一冊だと思います。
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「この世をば」 (えりか)
2005-02-13 23:06:56
 なぎさん、今晩は♪



 「この世をば」、とっても面白いです。なぎさんもぜひ!!この前紹介した平惟仲さんと藤原在国さんも登場します。このように、あちらこちらで「この世をば」をみなさまにお薦めしています(笑)。



 「ビジュアル日本の歴史」の本の紹介もありがとうございました。道長さんの時代や清少納言、紫式部が取り上げられているとは面白そうですね。今度本屋さんに行ったら捜してみますね。では、では。
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