平安夢柔話

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大河ドラマ「義経」第33回&弁慶と湛増

2005-08-25 10:02:45 | 2005年大河ドラマ「義経」
 大河ドラマ「義経」第33回の感想です。

 今回は弁慶のワンマンショーといった感じでしたね。弁慶と湛増についてはのちに述べるとして、まず平家側のことから書かせていただきます。

 「熊野水軍は必ず味方をしてくれる。」と信じている知盛さん、ちょっと脳天気な感じもしますけれど、それだけ湛増と平家の結びつきが強いという証拠のようにも思えます。しかし、あらかじめ湛増のもとに使者を送らなかったことが、平家の大きな誤算だったかもしれませんね。

 貝合わせをする安徳天皇と守貞親王がかわいらしかったです。しかし、時子の「母は違えどもよく似ている。」という言葉、壇ノ浦でのとんでも設定の伏線なのでしょうか。
 みなさま周知のように、壇ノ浦合戦において時子は「海の底にも都がございます。」と言って安徳天皇を抱いて入水するのですが、何とドラマでは守貞親王を抱いて入水するそうなのです。つまり、安徳天皇と守貞親王をすり替えてしまうようなのです。
 このことについては壇ノ浦が放映されたあとに詳しく書きたいと思いますが、もしこれが事実ならのちの後高倉院は実は安徳天皇であり、後堀河天皇は安徳天皇の皇子ということになるわけですよね。それより何より、自分の孫である皇子とそうでない皇子(守貞親王の母は藤原信隆の娘)をすり替えるという時子の行動に違和感を感じます。
このように、このドラマでの時子は、最後の最後まで愚かな女性に描かれてしまうということなのでしょうね。残念です。

さて、弁慶と湛増に話を移しますね。

 弁慶と湛増のやりとりは、役者さんの演技力のおかげでかなり見応えがありました。主君義経のためならたとえ火の中水の中でもという勢いの弁慶と、一筋縄では行かない頑固な湛増の性格が、とてもよく現れていたと思います。

 しかし、「弁慶は熊野出身で、熊野水軍とも関係があったのではないか。」という説を支持している私には、どうもこの場面は物足りなく思えてなりませんでした。
 しかも、「弁慶は湛増の息子だ。」という説もあるのです。まあ、こちらは多分伝説だと思うのですが…。

 このドラマでは、弁慶は比叡山の荒法師だったという説を採用していましたが、彼の出自や出身地については今まで何も触れられていなかったですよね。
なので私は、「弁慶は、熊野に何らかのコネがあって諜略に行くのかしら?…」
つまり、「弁慶が熊野出身だという事実が証されるのかもしれない。」と密かに期待していたのでした。
 ところが、ふたを開けてみると弁慶は熊野に全くコネがなく、従って熊野出身だという設定ではなさそうなのですよね。
 そして、弁慶が湛増を味方にできた大きな理由は、かつて湛増の部下二人の命を助けた鎌倉の漁師の娘千鳥が弁慶の妻だった……という理由になっていました。しかも千鳥本人が登場したので、湛増も折れてしまったということなのでしょうか。
 でも、今まで深いつながりがあった平家を見捨てて、義経に味方する理由としては弱いように思えます。しかも、千鳥って架空の人物ですよね?つまり弁慶と千鳥が結婚していたということもフィクションですよね?湛増が平家から義経に乗り換えるという今後の戦いにおいて非常に重要な事項を、このようなフィクションによる理由ですませてしまうというのは、果たしてどうなのでしょうか。

 やはり湛増としては、落ち目の平家に味方するよりこれからの勢力になり得る源氏に味方する方が都合が良いという考えがあったと思うのです。でも、平家には長年の恩義もあるので、彼自身とても迷っていたようです。なのでしばしば占いもやっていたのでしょう。
 「平家物語」によると、どちらに味方するか迷った湛増は今熊野に参籠し、権現様におうかがいを立てたところ「源氏に味方すべし。」という託宣を受けます。しかしそれでもそのことを信用できず、権現様の前で平家に見立てた赤い鶏七羽と、源氏に見立てた白い鶏七羽を闘わせたところ、赤い鶏は一匹も勝てず、みんな逃げてしまいました。そこで湛増は源氏に味方することにした……ということになっています。

 そう言えば今回も闘鶏のシーンが出てきましたね。弁慶方は白い印、湛増方は赤い印をつけていました。私は、「平家物語」にあるように白い方が勝つのかなと思ったのですが、なぜか赤い方が勝ってしまいましたよね。でも湛増は結局源氏に味方をするという書状を弁慶に託すことになります。これは、「湛増が弁慶の人柄に感服した。」ということなのでしょうけれど、私は何か煮え切らない物を感じてしまいました。

 やはり「弁慶は熊野出身」という設定にして、彼と熊野との関係を描きながら湛増を諜略していったという描き方の方が、すっきりしていて面白かったように思えます。
そして、どちらに味方するかいよいよ迷ってしまった湛増が最後の手段として赤い鶏と白い鶏を闘わせ、「平家物語」にあるように白い鶏が勝ったために、最終的に源氏に味方をする決心をする……という描き方のほうが、もっとすんなりと受け入れることができ、より良かったのではないでしょうか。

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