受身文の入門編です。3つの要点に絞って、以下、見ましょう。
(1)John is loved by Mary. (ジョンは、メアリーから愛されています。)
(1)にあるように、‘~ is loved by ・・・’「~ は ・・・ から愛されている」のカタチの部分が受身文の最たる特徴です。ところで、‘loved’の部分は、一見、過去形に見えますが、実はそうではなく、「過去分詞」と呼ばれているものです。
(2)love-loved-loved
(2)は、動詞‘love’「愛する」の、言わば、活用ですが、こういった動詞の活用を学校などで習いますね。(2)の配列の順序としては、「原形 (love)-過去形 (loved)-過去分詞 (loved)」という順序で並んでいます。ですので、動詞の三段活用とでも言うべき語形変化が起こっているわけです。
そして、(2)では、2番目ではなく、3番目の‘loved’が過去分詞ですので、(1)の受身文で使われているのは、3番目の‘loved’の方なのです。と言っても、そんなの、2番目でも、3番目でも、結局、カタチは同じなんだから、どっちでもいいじゃない、と考えたくなりますが、まあ、他のケースもあわせて考えると、やはり、3番目と考えておいた方が無難です。
(3)A nice guy is chosen by a pretty girl. (いい男は、いい女から選ばれるものだ。)
(4)choose-chose-chosen
受身文(3)の‘chosen’ですが、(4)の三段活用を見ると、それぞれカタチが異なっていて、3番目のカタチでなければならないことがわかります。このように、動詞の三段活用において、「原形-過去形-過去分詞」が、全て違う語形をしているような、言わば、不規則変化の場合がありますから、やはり、3番目 (過去分詞) を選んで、受身文をつくる、ということをしなければなりません。
(5)John was loved by Mary. (ジョンは、メアリーから愛されていた。)
(6)John was chosen by Mary. (ジョンは、メアリーから選ばれた。)
次のポイントですが、(5)と(6)では、‘be’動詞が‘was’になっています。これは、もちろん、過去形なんですが、それにともなって、意味の方も過去の文になっています。つまり、受身文では、「‘be’動詞+過去分詞」というように、動詞が2つ並んでいて、その中でも、‘be’動詞の方が、時制に関する情報を担うことになっているわけですね。
これは、受身文で、動詞が2つ並んでいるとはいっても、実質的に、過去分詞の方は、三段活用の2番目、つまり、過去形ではないので、「過去」分詞と名前がついていても、過去のことを表せる資格は与えられていないことに起因するものです。ですので、残った‘be’動詞の方が時制についての仕事をするわけですね。
(7)John will be loved by Mary. (ジョンは、メアリーから愛されるでしょう。)
(8)John will be chosen by Mary. (ジョンは、メアリーから選ばれるでしょう。)
(7)や(8)からもわかるとおり、未来のことについて表現する場合は、さして特別なことをするわけでもなく、ただ単純に、助動詞‘will’を補ってやればよいだけです。もちろん、‘be’動詞は原形にします。これは、別に受身文に特有の規則ではないから、簡単ですね。では、以下が最後のポイントになります。
(9)John was killed by Mary. (ジョンはメアリーに殺害された。)
(10)John was killed by a gun. (×) (ジョンは拳銃で殺害された。)
(11)John was killed with a gun. (〇) (訳同上)
(9)の‘by Mary’のように、受身文の末尾には、一般的に、‘by ~’「~ によって」という前置詞の表現がきますが、常にそうとは限りません。(10)の‘by a gun’「拳銃で」はアウトで、一方、(11)の‘with a gun’がOKになっています。
これは、受身文の‘by ~’は、「行為者」に相当する表現しか取ることができないためで、拳銃のようなものは行為者ではなく、むしろ、「道具」であると考えられるからです。つまり、行為者が使用した道具、というような解釈になるので、以下のような表現も可能です。
(12)John was killed with a gun by Mary. (〇) (ジョンは、メアリーに拳銃で殺害された。)
(12)では、「道具」を表現した‘with a gun’と、「行為者」を表現した‘by Mary’を同時に使っています。ここで補足ですが、このような区別は、ヒトかモノかで判断されるような性質のものではないので、その点、注意が必要です。
(13)John was hit by a car. (〇) (ジョンは、クルマにはねられた。)
(13)のような場合、‘by a car’がOKになるので、クルマが行為者として表現されていることになります。ですので、実は、この辺の判断基準は、結構あいまいなもので、どことなく行為者と感じられるならば、‘by ~’を使って表現しようというものらしいのです。
この基準を大ざっぱに考えると、一見、道具に思えるようであっても、まるでヒトの意思が乗り移っているかのように感じられるような場合は、それを行為者と見なして‘by ~’で表現しようという発想です。確かに、クルマは、拳銃とは違って、運転者の意思で動かして操っている、という感じはします。
(14)John was surrounded by many buildings. (〇)
(ジョンは、たくさんのビルに囲まれていた。)
しかし、(14)のような例にもなると、‘many buildings’「たくさんのビル」が、あたかも意思をもって、ジョンを囲んでいるかのように見なされるとは言っても、クルマとは違って、実際にビルを操っている人物などいるわけがないので、これは、もう比喩のレベルに達していると思われます。
(15)John was hit with a car by Mary. (〇) (ジョンは、メアリーにクルマではねられた。)
(15)はOKですが、可能な解釈としては、メアリーが、運転せずに押して転がしてきたクルマにジョンがはねられた、あるいは、怪力女のメアリーがクルマを持ち上げて、ジョンに投げつけて命中した、というような描写になるようです。つまり、「道具」という解釈は、ヒトが使うのを前提としていながらも、それが手からすぐに離せるような状態にある、ということが条件であったりするわけですね。
ここから、再度、(14)を考えると、ビルはヒトが使っていて、かつ、すぐに手から離せるようなものではありません。そこで、道具とは見なせなくなるので、改めて、行為者としての解釈が浮上してくるのではないか、と思われます。つまり、道具と見なせないようなら、消去法的に、行為者としての解釈を取る、というやり方なんですね。
今回のポイントは、受身文の入門編を、3つのポイントに絞って解説したということです。1つ目は、「‘be’動詞+過去分詞」というカタチが基本形であり、2つ目は、時制の主導権は‘be’動詞の側で担うということであり、そして、3つ目は、‘by ~’という前置詞表現は、どのような場合に別の前置詞と区別されるのか、ということです。
今回は、受身文のカタチを最初から使っていましたが、もちろん、能動文からの変形を説明しなくてはなりませんから、次回、また受身文を、変形という観点から扱ってみたいと思います。
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(1)John is loved by Mary. (ジョンは、メアリーから愛されています。)
(1)にあるように、‘~ is loved by ・・・’「~ は ・・・ から愛されている」のカタチの部分が受身文の最たる特徴です。ところで、‘loved’の部分は、一見、過去形に見えますが、実はそうではなく、「過去分詞」と呼ばれているものです。
(2)love-loved-loved
(2)は、動詞‘love’「愛する」の、言わば、活用ですが、こういった動詞の活用を学校などで習いますね。(2)の配列の順序としては、「原形 (love)-過去形 (loved)-過去分詞 (loved)」という順序で並んでいます。ですので、動詞の三段活用とでも言うべき語形変化が起こっているわけです。
そして、(2)では、2番目ではなく、3番目の‘loved’が過去分詞ですので、(1)の受身文で使われているのは、3番目の‘loved’の方なのです。と言っても、そんなの、2番目でも、3番目でも、結局、カタチは同じなんだから、どっちでもいいじゃない、と考えたくなりますが、まあ、他のケースもあわせて考えると、やはり、3番目と考えておいた方が無難です。
(3)A nice guy is chosen by a pretty girl. (いい男は、いい女から選ばれるものだ。)
(4)choose-chose-chosen
受身文(3)の‘chosen’ですが、(4)の三段活用を見ると、それぞれカタチが異なっていて、3番目のカタチでなければならないことがわかります。このように、動詞の三段活用において、「原形-過去形-過去分詞」が、全て違う語形をしているような、言わば、不規則変化の場合がありますから、やはり、3番目 (過去分詞) を選んで、受身文をつくる、ということをしなければなりません。
(5)John was loved by Mary. (ジョンは、メアリーから愛されていた。)
(6)John was chosen by Mary. (ジョンは、メアリーから選ばれた。)
次のポイントですが、(5)と(6)では、‘be’動詞が‘was’になっています。これは、もちろん、過去形なんですが、それにともなって、意味の方も過去の文になっています。つまり、受身文では、「‘be’動詞+過去分詞」というように、動詞が2つ並んでいて、その中でも、‘be’動詞の方が、時制に関する情報を担うことになっているわけですね。
これは、受身文で、動詞が2つ並んでいるとはいっても、実質的に、過去分詞の方は、三段活用の2番目、つまり、過去形ではないので、「過去」分詞と名前がついていても、過去のことを表せる資格は与えられていないことに起因するものです。ですので、残った‘be’動詞の方が時制についての仕事をするわけですね。
(7)John will be loved by Mary. (ジョンは、メアリーから愛されるでしょう。)
(8)John will be chosen by Mary. (ジョンは、メアリーから選ばれるでしょう。)
(7)や(8)からもわかるとおり、未来のことについて表現する場合は、さして特別なことをするわけでもなく、ただ単純に、助動詞‘will’を補ってやればよいだけです。もちろん、‘be’動詞は原形にします。これは、別に受身文に特有の規則ではないから、簡単ですね。では、以下が最後のポイントになります。
(9)John was killed by Mary. (ジョンはメアリーに殺害された。)
(10)John was killed by a gun. (×) (ジョンは拳銃で殺害された。)
(11)John was killed with a gun. (〇) (訳同上)
(9)の‘by Mary’のように、受身文の末尾には、一般的に、‘by ~’「~ によって」という前置詞の表現がきますが、常にそうとは限りません。(10)の‘by a gun’「拳銃で」はアウトで、一方、(11)の‘with a gun’がOKになっています。
これは、受身文の‘by ~’は、「行為者」に相当する表現しか取ることができないためで、拳銃のようなものは行為者ではなく、むしろ、「道具」であると考えられるからです。つまり、行為者が使用した道具、というような解釈になるので、以下のような表現も可能です。
(12)John was killed with a gun by Mary. (〇) (ジョンは、メアリーに拳銃で殺害された。)
(12)では、「道具」を表現した‘with a gun’と、「行為者」を表現した‘by Mary’を同時に使っています。ここで補足ですが、このような区別は、ヒトかモノかで判断されるような性質のものではないので、その点、注意が必要です。
(13)John was hit by a car. (〇) (ジョンは、クルマにはねられた。)
(13)のような場合、‘by a car’がOKになるので、クルマが行為者として表現されていることになります。ですので、実は、この辺の判断基準は、結構あいまいなもので、どことなく行為者と感じられるならば、‘by ~’を使って表現しようというものらしいのです。
この基準を大ざっぱに考えると、一見、道具に思えるようであっても、まるでヒトの意思が乗り移っているかのように感じられるような場合は、それを行為者と見なして‘by ~’で表現しようという発想です。確かに、クルマは、拳銃とは違って、運転者の意思で動かして操っている、という感じはします。
(14)John was surrounded by many buildings. (〇)
(ジョンは、たくさんのビルに囲まれていた。)
しかし、(14)のような例にもなると、‘many buildings’「たくさんのビル」が、あたかも意思をもって、ジョンを囲んでいるかのように見なされるとは言っても、クルマとは違って、実際にビルを操っている人物などいるわけがないので、これは、もう比喩のレベルに達していると思われます。
(15)John was hit with a car by Mary. (〇) (ジョンは、メアリーにクルマではねられた。)
(15)はOKですが、可能な解釈としては、メアリーが、運転せずに押して転がしてきたクルマにジョンがはねられた、あるいは、怪力女のメアリーがクルマを持ち上げて、ジョンに投げつけて命中した、というような描写になるようです。つまり、「道具」という解釈は、ヒトが使うのを前提としていながらも、それが手からすぐに離せるような状態にある、ということが条件であったりするわけですね。
ここから、再度、(14)を考えると、ビルはヒトが使っていて、かつ、すぐに手から離せるようなものではありません。そこで、道具とは見なせなくなるので、改めて、行為者としての解釈が浮上してくるのではないか、と思われます。つまり、道具と見なせないようなら、消去法的に、行為者としての解釈を取る、というやり方なんですね。
今回のポイントは、受身文の入門編を、3つのポイントに絞って解説したということです。1つ目は、「‘be’動詞+過去分詞」というカタチが基本形であり、2つ目は、時制の主導権は‘be’動詞の側で担うということであり、そして、3つ目は、‘by ~’という前置詞表現は、どのような場合に別の前置詞と区別されるのか、ということです。
今回は、受身文のカタチを最初から使っていましたが、もちろん、能動文からの変形を説明しなくてはなりませんから、次回、また受身文を、変形という観点から扱ってみたいと思います。
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突然のコメント書き込みで失礼いたします。このたび英語・英会話限定Blogランキングサイトをオープンいたしました。「みんなの英会話奮闘記」(http://www.eigobegin.com) 10月19日オープン後Yahooに登録され、『英語勉強法』などのキーワードで圧倒的人気を集めています。是非貴サイトのご参加をお待ちしております。登録方法はこちらに書かれております。http://www.eigobegin.com/rank/html/ex.html#register 突然のコメントとなり大変失礼いたしました。こちらのコメントは削除していただいてかまいません。みんなの英会話奮闘記 管理人
何度となく助けられたことか。特に、エッセイを
書くときは、「受験英語」のおかげで、あまり
文法ミスをしないから、スペルチェッカーに
あまり引っかからないし。「受験英語」の構文には、
普通の会話にも留学用の堅い表現にも使えるのが
たくさんあります。
(というより、そうでなければ
暗記せーい!とは、言わないでしょう!)
>1つの方法として、会話用の暗唱例文を丸々暗記して覚えるよりも、もっと小さな単体の句を上手くつないで文を作る練習をした方がはるかに実践的だとは言えると思います。実は、中学校で習うような文法でも上手く使えば、かなりのコミュニケーションをこなす事が可能なんです。
思ったこと、感じたことの単純化は、言語問わず、
外国語を使うには、必須。特に、英語みたいに
言語自体が単純化をしてきた言語には、なおさら。
1つの長い表現を言うよりも、短く6つの表現を
言って、1つのことを言うほうが、ずっと役立つ。
>要は、伝えたい情報を最小限の手段や労力でどうやってクリアしたら良いのだろうと考えて練習する度に、大体習った事があるような構文にたどり着きます。
これは、本当。
さらに、英語圏では(特にアメリカ)
公文書や論文レベルでも、短く単純で、明快な
表現をするようになってきている。
専門用語を使うのは仕方ないとしても、その後に
これは、こういう意味で・・・と言うのは
ほぼ必須になってきている。
アメリカの大統領の演説なんて、いい例だ。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/3980659.stm
>A new term is a new opportunity to reach out to the whole nation. We have one country, one constitution, and one future that binds us.
こんな簡単なんだから。リンク先から、全文を読んでみるのもいい。
仕事の合間にEGを執筆している状態でして、
ちょっと多忙を極めておりました。
コメントありがとうございました。
外国語の習得というと、単語をたくさん覚えないといけない、
だとか、本をたくさん読まなきゃならない、とか、
いわゆる、インプットの方にばかり、目が行ってしまい、
まず、自分のアタマで考える、という発想が、
どこかに行ってしまいがちですね。
本当は、英語が難しいんじゃなくて、
これらを上手くバランスさせることの方が、
難しいことなんですね。