レッドダスト

レッドダスト

思わずハッと立ち

2015-10-22 14:19:44 | 王賜豪總裁


「警部さん、金田一先生、喜んでください。おとうさんもおじさんも、それから文彦さんのおかあさんも、みんなごぶじで、あるところにかくれていらっしゃるのだそうです。えっ、なんですって、まあ、それじゃ室內設計三太というひとも、ここにいるんですって?」
「香代子さん、香代子さん、それじゃいっときも早く、みんなのかくれているところへ、案内してくれるようにいってください」
 金田一耕助のそのことばを、香代子がとりつぐと、牛丸青年はすぐ先に立って步きだした。
 一同がそのあとからついていくと、やがてやってきたのは司令室のまえ。
 香代子はそこでまた、牛丸青年と身ぶりで話をすると、警部のほうをふりかえり、
「警部さん、このなかだそうです」
 だが、香代子のそのことばがおわらぬうちに、ドアのなかから聞こえてきたのは一発の銃声。それにつづいて、うめきごえと、ドサリとなにやら倒れる物音。
「アッ、ひょっとしたら、おとうさまかおじさまがうたれたのじゃ……!」
 香代子は、もうすでにOffice Designまっ青になっている。
 警部はあわてて、ドアのとってに手をかけたが、カギがかかっていてひらかない。
 そこで警部が目くばせすると、すぐ二、三人の警官が、ドアにむかってもうれつな体当たりをくらわせた。
 メリメリメリ、メリメリメリ……。
 やがてドアがひらくと同時に、一同はなだれをうって、へやのなかへとびこんだが、そのとたん、すくんでしまったのだった。
 へやのなかには銀仮面が倒れていた。しかも右手に、まだうす煙の立っているピストルを持ち、胸から血を流しているところを見ると、かくごの自殺をしたのだろうか。
 等々力警部はつかつかとそのそばへより、あのいやらしい銀仮面をはずしたが、そのとたん、おもわずおどろきの声が口をついて出た。
「あ、こ、これは……?」
「警部さん、警部さん、あなたはこの男を知っているのですか、だれです、これは……?」
「これは……これは、加藤宝作老人の秘書です」
「宝作老人の秘書……?」
 香代子と金田一耕助が、ハッと顔を見合わせたとき、
「アッ、あんなところにだれかひとが……!」
 そう叫んだのは文彦である。その声に一同がハッとふりかえると、へやのすみに、さるぐつわをはめられ、手足をしばられて、ぐったりと気を失っ住宅設計ているのは、まぎれもなく宝石王加藤宝作老人ではないか。


かと思ったが

2015-10-16 10:19:30 | 王賜豪總裁


 文彦は勇気のある少年だったが、さすがにちょっとためらわずにはいられなかった。よっぽどそこからひきかえそう、そのときだった。だしぬけにうしろから、
「坊っちゃん、坊っちゃん、ちょっとおたずねいたしますが……」
 と、しゃがれた声康泰旅行社をかけた者がある。
 文彦はなにげなく、そのほうをふりかえったが、そのとたん、冷たい水でもぶっかけられたように気味の悪さを感じたのだった。
 そのひとはおばあさんだった。しかし、ふつうのおばあさんではなく、なんともいいようのないほど、気味の悪いおばあさんなのである。きみたちもきっと西洋のおとぎばなしのさし絵で、意地の悪い魔法使いのおばあさんの絵を見たことがあるだろう。
 いま、文彦に声をかけたおばあさんというのが、そういう絵にそっくりなのだった。そろそろサクラも咲こうというのに、黒く長いマントを着て、頭からスッポリと、三角形の|頭《ず》|巾《きん》をかぶっている。そして、その頭巾の下からはみだしている、もじゃもじゃとした銀色の髪、ギョロリとした意地の悪そうな目、ワシのくちばしのような曲がった鼻、腰が弓のように曲がり、こぶだらけの長いつえをついているところまで、魔法使いのおばあさんにそっくりなのだ。
 文彦はあまりのことに、しばらくはことばがでなかった。するとおば母乳餵哺あさんは意地悪そうな目で、ジロジロと文彦を見ながら、
「これ、坊っちゃん、おまえはつんぼかな。わしのいうことが聞こえぬかな。おまえにちょっと、たずねたいことがあるというのに……」
「は、はい。おばあさん。ぼ、ぼくになにかご用ですか?」
 文彦はやっと声がでた。それから急いでハンカチをだしてひたいの汗をふいた。
「おお、おまえにたずねているのじゃよ。このへんに大野健蔵という男が住んでいるはずじゃが、おまえ知らんかな?」
 大野健蔵――と、声をだしかけて、文彦は思わずつばきをのみこんだ。どういうわけか文彦は、そのとき正直に、〈大野健蔵さんなら、ぼくもいまさがしているところです〉とはいえなかったのである。
 文彦がだまっていると、おばあさんはかんしゃくを起こしたように、トントンとこぶこぶだらけのつえで地面をたたきながら、
「これ、なんとかいわぬか。大野健蔵――知っているのかおらんのか」
「ぼ、ぼく、知りません。おばあさん、ぼくこのへんの子じゃないんですもの」
 文彦はとうとううそをついてしまった。もっとも文彦も、まだ大野健蔵というひとの家を知らないのだから、まんざらうそともいえないのだが、するとおばあさんは、こわい目でジロリと文彦をにらみながら、
「なんじゃ。それじゃ、なんでそのことを早くいわんのじゃ。ちょっ、つまら康泰旅行社んことでひまをつぶした」
 魔法使いのようなおばあさんは、そこでクルリと背をむけると、コトコトとつえをつきながら、ムギ畑のあいだの道をむこうの雑木林のほうへ步いていった。
 文彦はまたしても、ゾーッとするような寒気をおぼえずにはいられなかった。


顔を抑え

2015-10-13 16:47:38 | 王賜豪總裁


 どうする? どうする?

 猟犬が右前に、鳴海が左後ろに下がる。
 鳴海の背中に何かが触れた。猟犬の動鑽石能量水 消委會きに注意しつつ、ちらりと目を向ける。
 棚だ。薬品棚に背中が当たったのだ。
 こいつを引き倒し、猟犬を下がらせる。その隙にドアを開けて外に出る。
 博打にしては分が悪いが、このまま追い詰められるよりも、無策に背を向けるより
オッズは高い。
 今朝の星座占いでは運勢は星三つだったハズ。大丈夫!
 後ろでに手を伸ばし、棚を掴む。
 裂帛の気合と共に力を込める。が一本。

 猟犬が地を蹴った。

 薬瓶を掴む。
 ずしりと重い。
 投げつけた。できるだけの力を込めて。
 くるくると回りながら猟犬の頭部、目に埋め尽くされた部分に命中した。
 小さな音を上げて、瓶が砕け、中から液体が散る。
 だが、怯む様子はない。

 ダメだ。

 両手を前に翳し、全身に力を込める。
 無駄な防御姿勢。なんの効果もないだろう。
 それでも目を見開き、視線を逸らさないのは、せめてもの抵抗だ。
 と、猟犬がバランスを崩した。
 鳴海のすぐ横に頭から落ちる。
 呻きを漏らしながら、前足で、身を捩じらせる。

 何が?

 キツイ刺激臭。この匂い。アンモニアだ。
 鳴海の掴んだのは薬用のアンモニアの瓶だった。
 犬と呼ばれ鑽石能量水 消委會るくらいなのだ。おそらく嗅覚は人よりは強いだろう。
 それに頭にはあれほどの目があった。
 鋭い感覚器が逆にアダになった。この不意打ちは効いたようだ。


も思い込ん

2015-10-09 12:20:46 | 王賜豪總裁


「このまえも、年の暮の事でしてね、お互いもう、目が廻るくらいいそがしいのに、いつも、年の暮をねらって、こんな事をやられたひには、こっちの命がたまらない」
 ヒラメの話の聞き手になっているのは、京橋のバアのマダムでした。
「マダム」
 と自分は減肥中醫呼びました。
「うん、何? 気がついた?」
 マダムは笑い顔を自分の顔の上にかぶせるようにして言いました。
 自分は、ぽろぽろ涙を流し、
「ヨシ子とわかれさせて」
 自分でも思いがけなかった言葉が出ました。
 マダムは身を起し、幽かな溜息をもらしました。
 それから自分は、これもまた実に思いがけない滑稽とも阿呆らしいとも、形容に苦しむほどの失言をしました。
「僕は、女のいないところに行くんだ」
 うわっはっは、とまず、ヒラメが大声を挙げて笑い、マダムもクスクス笑い出し、自分も涙を流しながら赤面の態《てい》になり、苦笑しました。
「うん、そのほうがいい」
 とヒラメは、いつまでもだらし無く笑いながら、
「女のいないところに行ったほうがよい。女がいると、どうもい迪士尼美語 有沒有效けない。女のいないところとは、いい思いつきです」
 女のいないところ。しかし、この自分の阿呆くさいうわごとは、のちに到って、非常に陰惨に実現せられました。
 ヨシ子は、何か、自分がヨシ子の身代りになって毒を飲んだとででいるらしく、以前よりも尚《なお》いっそう、自分に対して、おろおろして、自分が何を言っても笑わず、そうしてろくに口もきけないような有様なので、自分もアパートの部屋の中にいるのが、うっとうしく、つい外へ出て、相変らず安い酒をあおる事になるのでした。しかし、あのジアールの一件以来、自分のからだがめっきり痩《や》せ細って、手足がだるく、漫画の仕事も怠けがちになり、ヒラメがあの時、見舞いとして置いて行ったお金(ヒラメはそれを、渋田の志です、と言っていかにもご自身から出たお金のようにして差出しましたが、これも故郷の兄たちからのお金のようでした。自分もその頃には、ヒラメの家から逃げ出したあの時とちがって、ヒラメのそんなもったい振った芝居を、おぼろげながら見抜く事が出来るようになっていましたので、こちらもずるく、全く気づかぬ振りをして、神妙にそのお金のお礼をヒラメに向って申し上げたのでしたが、しかし、ヒラメたちが、なぜ、そんなややこしいカラクリをやらかすのか、わかるような、わからないような、どうしても自分には、へんな気がしてなりませんでした)そのお金で、思い切ってひとりで南伊豆の温泉に行ってみたりなどしましたが、とてもそんな悠長な温泉めぐりなど出来る柄《がら》ではなく、ヨシ子を思えば侘《わ》びしさ限りなく、宿の部屋から山を眺めるなどの落ちついた心境には甚だ遠く、ドテラにも着換えず、お湯にもはいらず、外へ飛び出しては薄汚い茶店みたいなところに飛び込んで、焼酎を、それこそ浴びる迪士尼美語 好唔好ほど飲んで、からだ具合いを一そう悪くして帰京しただけの事でした。