「警部さん、金田一先生、喜んでください。おとうさんもおじさんも、それから文彦さんのおかあさんも、みんなごぶじで、あるところにかくれていらっしゃるのだそうです。えっ、なんですって、まあ、それじゃ室內設計三太というひとも、ここにいるんですって?」
「香代子さん、香代子さん、それじゃいっときも早く、みんなのかくれているところへ、案内してくれるようにいってください」
金田一耕助のそのことばを、香代子がとりつぐと、牛丸青年はすぐ先に立って步きだした。
一同がそのあとからついていくと、やがてやってきたのは司令室のまえ。
香代子はそこでまた、牛丸青年と身ぶりで話をすると、警部のほうをふりかえり、
「警部さん、このなかだそうです」
だが、香代子のそのことばがおわらぬうちに、ドアのなかから聞こえてきたのは一発の銃声。それにつづいて、うめきごえと、ドサリとなにやら倒れる物音。
「アッ、ひょっとしたら、おとうさまかおじさまがうたれたのじゃ……!」
香代子は、もうすでにOffice Designまっ青になっている。
警部はあわてて、ドアのとってに手をかけたが、カギがかかっていてひらかない。
そこで警部が目くばせすると、すぐ二、三人の警官が、ドアにむかってもうれつな体当たりをくらわせた。
メリメリメリ、メリメリメリ……。
やがてドアがひらくと同時に、一同はなだれをうって、へやのなかへとびこんだが、そのとたん、すくんでしまったのだった。
へやのなかには銀仮面が倒れていた。しかも右手に、まだうす煙の立っているピストルを持ち、胸から血を流しているところを見ると、かくごの自殺をしたのだろうか。
等々力警部はつかつかとそのそばへより、あのいやらしい銀仮面をはずしたが、そのとたん、おもわずおどろきの声が口をついて出た。
「あ、こ、これは……?」
「警部さん、警部さん、あなたはこの男を知っているのですか、だれです、これは……?」
「これは……これは、加藤宝作老人の秘書です」
「宝作老人の秘書……?」
香代子と金田一耕助が、ハッと顔を見合わせたとき、
「アッ、あんなところにだれかひとが……!」
そう叫んだのは文彦である。その声に一同がハッとふりかえると、へやのすみに、さるぐつわをはめられ、手足をしばられて、ぐったりと気を失っ住宅設計ているのは、まぎれもなく宝石王加藤宝作老人ではないか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます