旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

長旅

2016年05月14日 | 旅行一般
 旅に出てから日常に戻るまでの間というのは大抵の社会人の場合1週間か、せいぜい10日位が限界という場合がほとんどだと思います。祝日や土日を絡めてやっと1週間というのが比較的確保しやすい日程なので、海外旅行のプランはその前後で企画を立てることが多くなります。

 ところが、旅していて出あう人の中には旅が生活と化している人もいて、私が会った方の中には日本を出てから13年目という方もおられましたし、新婚旅行中にお子さんが3人生まれたという方もおられます。そこまで極端な人はさすがに少ないですが、1年や2年旅していた友人となると今でも身の回りに複数人おります。

 私個人はそこまで長くはなくて、パキスタンからイギリスへバイクで旅した7か月弱が私にとって最長の旅行期間です。

 長い旅というのは短い旅の繰り返しとはかなり違う体験を与えてくれます。

 つまり、同じ2か月旅をするのでも1週間の旅を8回した体験と、2か月連続で旅をするのはほぼ別物だと言えます。
 
 ”髪が伸びる”という単純な事を考えればこの話は分かりやすいかもしれません。1週間の旅を8回なら、その合間に行きつけの床屋で髪を切ることもできますが、2か月も旅枕だと、伸びっぱなしで我慢するか、異国の地で髪を切るかの必要が出てきます。

 装備品も同じで2か月経つと気候も変わりますから必要となる服が増えたり減ったり、おまけに日本から持ってきた衣類が傷んできたり、薄汚くなったり、バッグが壊れたり、髭剃りが切れなくなったり....日本から持参した日用品の限界がやってきます。

 更に、大抵の場合、1度くらいは体を壊します。

 旅は非日常を楽しむものですが、長旅になると非日常の中にありながら日常をこなさなければならない事がたくさん出てくるのです。
 
 貧乏旅行者やバックパッカーで髪を蓬髪にして、ひげを伸ばして、ボロをまとっているのは大抵まだ2~3か月位の旅人で、もう少し経つと服はボロを通り越してしまって、現地で購入する必要が出てきます。髪だって自分が我慢できなくなってきますし、そうでなくても誰かが見かねて切ってくれたりしてリセットが始まります。
 
 だから、一定期間、人によって違うとしてもおそらく4~5か月以上旅している人は逆に案外小ざっぱりしていたりします。再ペイントしてきれいになったレストア済みの車みたいなものです。

 ボロを纏ってひげを伸ばしている時代の旅人は、旅していくことにようやく自信もついていっぱしの経験者気分です。”自分はその辺の連中と違ってディープな旅をしているんだ”と粋がっている盛りの頃。周囲に経験豊富な旅人と見せたくてボロを着ていたりもします。この頃は他の旅行者に自分の旅を見せつけてやりたい盛り。なおかつ他の人に”旅ってのはねぇ....”と語りたい盛りです。

 ところが、リセット済みの旅人たちは小ざっぱりした格好をしているので外見上初心者と見分けがつきません。だから、粋がっている頃の旅人が、リセット済みの経験豊富な旅人に”あなたの旅はまだまだ甘い”と熱く語って聞かせるような結構イタイ風景が展開されたりします。リセット済みの旅人は、そんな話を”自分も昔ああだったなぁ”とほほえましく思いながら聞いてあげていたりします。

 私が旅行会社に入った頃に定番の1つだった卒業旅行の手配は、アエロフロート航空やパキスタン航空のオープンチケットにユーレイルパスの2か月を組み合わせてヨーロッパを旅するパターンで、1月後半になると日に何件も復路オープンの航空券+ユーレイルパス+到着日のホテルという手配を繰り返していたものです、卒業旅行でもなければ、2か月も旅する機会は人生において次回は”退職後”くらいしかやって来ない貴重なチャンス。今は就職の研修などで縛られてなかなかそのチャンスも生かせないという話を耳に挟みますが、何度もないチャンスをあんな風に使える位の余裕が社会にあってほしいなと思います。

旅┃ 行┃ 好┃ き┃ の┃ 夕┃ べ┃ 開┃ 催┃
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6月17日 19:00~21:00
ぜひご参加ください。
http://www.bekkoame.ne.jp/i/eandg/event/yube.html


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