旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

タロンガ動物園のカモノハシ

2017年07月26日 | 旅の風景
 子供の頃、多くの子供の例にもれず、昆虫や魚を含めて生き物が大好きでした。その頃は今のように日本のテレビ局が自力で番組制作できなかったのか、海外のドキュメンタリーをそのまま放送するような番組も多く、”野生の王国”や”すばらしい世界旅行”といった番組には家族で見入っていたものでした。

 ある意味、日本のテレビ局が自力で番組制作しなかったおかげで良い番組が沢山あったという事でもあるかもしれませんが。

 感化されやすい子供だった私は”クストーの海底世界”の大ファンで、大きくなったら生物学者になってカリプソ号に乗るのだと本気で夢見ていたほどでした。

 いつしかそんな夢も忘れ去られ、また違う夢を見たり、現実と戦ったりしながら年齢を重ねてきたわけですが、いろいろな生き物になんとなく心惹かれる気持ちはその後も持ち続け....いや知識が増えるにしたがって心惹かれる相手も増えていって、雪男やネッシーや宇宙人などまで守備範囲は広がっていったのでありました。

 そんな中、私の心を特別に引きつけてやまない生き物がいます。1つはマダガスカル在住、”アイアイ”です。上野動物園にアイアイがやってきたときは急いで会いに行ったのですが、アイアイの檻の前には”最近アイアイは夜更かしになって明るいうちは遅くまで寝ています”といった趣旨の説明が貼られていて、願いはかないませんでした。録画されたアイアイの姿がモニターで放映されていたのです。

 そしてもう1つはオーストラリア在住、”カモノハシ”です。
 
 最初にヨーロッパに送られたカモノハシの剥製を見たヨーロッパの人々はいろいろな生物を合成して作った作りものだと思ったとか。そのくらい特異な姿形。哺乳類なのに卵で出産するという特異な習性。さらには”毒針”を持つという、更に哺乳類っぽくない特性も有していて私の心を掴んで離しません。

 20台前半の頃、会社の研修旅行でオーストラリアへ行く機会がありました。大のカモノハシファンである私がこの機会を逃すわけはありません。サーキュラーキーからフェリーに乗っていざ、タロンガ動物園へ。さすが大スターのカモノハシ。ここでは”カモノハシ館”みたいな特別な建物を与えられているのです。

 その建物に足を踏み入れてみると目の前に巨大な水槽が据えられています。中には黄土色に濁った水。
  
 どうやらこの黄土色の水の中にカモノハシがいるらしいのですが水槽内には何の動きもないのです。

 ”さすがカモノハシ。警戒心が強いからきっと人前にはなかなか出てこないんだ”
 と解釈した私は残念な気持ちにはなりましたが、ここへ来た事だけでそれなりに満足。そしてタロンガ動物園のほかの動物たちを眺めて納得して帰ったのでありました。

 数年後、オーストラリアンサファリラリーに参加する友人の手伝いでオーストラリアへ再度渡航する機会を得ました。その時はまだ会社勤めをしていて、シドニーオフィスもあったのです。元東京勤務だったオーストラリア人の友人がシドニーオフィスで現地係員として働くようになっていたのでいろいろ手伝ってもらったのです。
 
 その友人との雑談で、上に書いた”カモノハシに会えなかった”話をしたところ....

 ”自分はお客さんを連れて20回以上タロンガ動物園へ行っていて、その都度カモノハシの水槽を見に行くけれど、一度も見た事がないから、あれはホントはいないに違いない”と笑うのです。

 ”そんな事ないでしょ?”
 ”いや、居たら一度は見れてるでしょ?絶対いないよ”

 そんなわけで、それ以降、この真偽を確かめるのがシドニーへ行く私のお客様達の使命となりました。
 シドニーセルフツーリングでも、オーストラリアレンタルバイクでも、シドニー行のフライトは皆夜便なので基本、シドニーへ1泊してから走り出す事をお勧めしていて、実際、そうする方が多いのです。だから、シドニー到着日にはタロンガ動物園へ行くことが十分できるのです。

 出発前に私と雑談の機会があったお客様にはカモノハシが居るのかいないのかを確認する使命が与えられることとなりました。

 その結果...

 タロンガ動物園のカモノハシは確かにほんとに居るのだそうです。使命を負って動物園を訪れた皆さんから続々と、”見れた””居た”という確認情報が寄せられたのでした。

 タロンガ動物園の名誉はここに守られたことを報告します。

 もしかすると、展示方法を変えて、見れるように工夫がされたのかもしれませんね。あるいは、私が訪れたころには居なかったの..いや、断じてそんな事はありません。

 というわけで、結局、アイアイにもカモノハシにも会えずじまい。これからもカモノハシとの出会いを夢見ながらいつか機会が来ることを祈り続けるのでありました。


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