旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

必需品

2010年01月25日 | 旅行一般
必需品という言葉があります。言葉そのものの意味としては生活していくうえでどうしても必要となる品物と言う意味でしょうか。例えば、旅行の必需品といえば、パスポートとお金、訪問国によっては査証あたりでしょうか。実際、これらが揃っていれば旅行に不自由する事はあっても、困ることはありません。

そう、この、不自由する事はあっても困る事はないというのが必需品の境界線と一致するイメージではないかと思います。そして、この境界線は、特殊な事情、たとえば特別な薬を定期的に投与する必要がある場合などを除けば、人によって変ってくる事はあまりありませんし、時代によっても変る事は無いと思います。

ところが、”あなたにとって”の必需品という話が時々現われます。あるいは、必需品という言葉そのものに対して抱くイメージが”あなたにとって”の必需品の人もおられます。ある人にとってはバスローブが旅行の必需品かも知れませんし、別の人にとっては炊飯器が必需品かもしれません。

この場合の必需品は、先にあげた”不自由することはあっても困る事はない”に追加して、その人が”快適”と感じる状態を維持するために必要と感じている品物という事ができます。あるいは単に前の言葉から”不自由することはあっても”を外したもので、”困る事がない”品物。

以前、物と豊かさでも書いたように、私は物が人を豊かにする面もあると思っています。それと同時に、物で豊かになれない人が多いとも感じます。

その一つの理由が、上に挙げた2つの”必需品”に関する基準を見失ってしまう事にあるのではないかと思うわけです。特に大切にするべき事は、結局、第2の基準。そこには人それぞれの嗜好が反映されているわけですから、その事を素直に追及してよいのだと思います。ただ、必ず、第1の基準の存在を理解したうえで、第2の基準は自分自身の”贅沢”を楽しむ部分だと考えて追求するのが物で豊かになれるコツなのではないかと思います。

物とは少し違いますが、”旅”なんて完全に”必需”からは外れますね。最近では”快適”からも外れていると感じる人が多くなっていたようにも感じます。そして、旅行はまさにその通りという面も持っています。日常の繰り返しは何年も続けていれば慣れた事の連続となりますが、旅行はそれを全て断ち切りますし、多くの場合、日常頼りにしている物を頼ることができなくなります。

だからこそ、旅は”必需品”について思いを巡らす良い機会になります。必要だと思っていたものが、無い環境におかれてみれば、それが”贅沢”な物であった事に気がつくかもしれません。

そして、今、私達にとって旅で気づくよう神経を鋭敏にしておきたいと思うのは日々の生活で”必要不可欠”と思っていたものの幾つかが、実はまったく”不必要”である事に気づく事なのではないかと思います。そういう気づきの場として旅はやはり人生にとって必要不可欠な”必需品”なのだと思うのでした。


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