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プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

生活保護受給者が過去最多  支配層がおびえる「特別な人びと」が特別でなくなるとき

2013-04-17 21:06:51 | 政治経済

厚生労働省は17日、全国で生活保護を受けている人が1月時点で215万3642人となり、9カ月連続で過去最多を更新したと発表した。受給世帯数も157万2966世帯で過去最多となった(「共同」2013年4月17日)。
日本では、生活保護受給者は「特別な人」、「親族や社会からのつまはじき」というレッテルをはられ、蔑みの対象とされ、激しいバッシングのターゲットとなってきた。唐鎌直義・立命館大学教授によれば、現在、安倍政権のもとで生活保護を可能な限り利用させない「第4次生活保護適正化」政策が激烈に行われているという。政府・与党は「社会保障制度改革推進法(2012年8月22日施行)」付則2条で「不正な手段により保護を受けた者等への厳格な対処、生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」と定めて、社会保障全面改悪の突破口として生活保護基準の切り下げを強行しようとしている。それでも生活保護利用者が増え続けているということは何を意味するのか

 

生活保護基準を大幅に引き下げ、同時に、利用を強く抑制する制度改悪が実行されている。ここ数十年では最大規模の動きだ。貧困が大きく広がって、生活保護がますます重要な時期に、なぜなのか。
結論を言えば、いまの趨勢で生活保護利用者が増えることに、支配層はたいへん強い危機感をもっているのだと思う。現在の利用率は世帯単位でみると3%強だが、これが全世帯の4%、5%になった場合に起こるかもしれないこと、それをあらかじめ封じ込めるのがねらいだろう(後藤道夫・都留文科大学教授「貧困下の生活保護大改悪」「しんぶん赤旗」2013年1月28日)。

 

生活保護の利用率が全世帯の4%、5%になった場合、生活保護を受給している人と、もらえなくて貧困な生活を送る人との間の生活水準のギャップが今以上に白日の下にさらされるであろう
生活保護を受給できるようになると複数の扶助が組み合わされる結果、生活水準があがったように見える。日本の生活保護制度には8扶助もの種類がある。生活扶助・医療扶助・介護扶助・住宅扶助・教育扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助の8種類である。このように全てがパッケージ化されていて、生活保護を申請して支給が決まった人には、その人の事情に応じて、複数の扶助が合算されて支給される。一般的な場合で、最低でも生活扶助と住宅扶助が給付される。住宅扶助の水準は月額1万3000円だが、これでは実勢家賃を賄うことは出来ないので、都道府県ごとに特別基準というものが設けられている。子どものいる世帯では教育扶助も支給される。病気になったら医療扶助。介護が必要になったら介護扶助。生業扶助は、生活を建てなおしていくための訓練を受けたり、自営業を開業したりする際の資金等である。これら以外は出産・葬祭のときにかかる費用を賄う扶助である。これだけ手厚いのだから保護受給者にとっては良い制度であるといわれる所以である。なまじわずかな貯金や資産をもっているから、あるいは親族に扶養してもらえるから、といった理由で生活保護をもらえなかった人との間のギャップが大きくなっていくそうすると「なぜ自分はもらえないのに、あの人はもらえたのだろうか」とか「生活保護をもらっているって、うらやましい」という人びとが大規模に噴出して来ておかしくない(唐鎌直義「生活保護改悪と人権としての社会保障」『月刊 全労連』2013年4月号)。

 

なぜ日本の生活保護は、あれやこれやの種類から構成されているのだろうか。その理由は医療保障、介護保障、住宅保障、教育保障、公的年金、雇用保険、どの分野でも日本の制度が貧弱で最低保障の仕組みが脱落しているからであり、そうした社会保障制度全体の構造的矛盾が生活保護制度にしわ寄せされているからである。こうした状況は「ナショナルミニマムの孤島」といえる。餌をとれずに飛び疲れた渡り鳥が、もうこれ以上飛べなくなって絶海の孤島に落下する。それが日本の生活保護制度の現実的機能である。ひとたび「稼働能力を持たない」と判断されて保護の受給を認められると、この認定(本質は限定)された「貧困者」に対して、8種類の扶助の中から数種類が組み合わされて最低生活が保障される。国家によって選別され切り取られた被保護者から見るならば「生活保護は手厚い制度」ということになる。しかし「手厚い」のではない。生活保護制度の外側に位置すべき各種社会保障制度がどれも「ナショナルミニマム」機能を持たないから、相対的に「手厚く」見えるに過ぎないのである。ちなみにイギリスでは、生活保護は、生活扶助だけである。生活保護の外の制度が充実しているので、他の扶助は不要である。 

日本では、生活保護が唯一の最低生活「保障」制度なのである。だが同時に、そうした位置をもつ生活保護を「十分には利用させない」大方針が貫かれ、今後いっそう強化されようとしている。最低生活を保障しない貧弱な諸制度と、最低生活保障を一手に引き受けた生活保護の利用抑圧とを一つのセットとして動かすことで、生活保障システム=社会保障制度に膨大なスキマと穴が作られてきた。このスキマと穴は「自己責任」と「家族責任」に委ねられ、「小さな社会保障」の隠れた大黒柱となっている(後藤道夫 同上)
 

支配層がおびえるのは、生活保護の利用率が全世帯の4%、5%になった場合、生活保護を受給している人と、もらえなくて貧困な生活を送る人との間の生活水準のギャップが今以上に白日の下にさらされることである
生活保護利用抑圧の長い歴史は、「自分は生活保護と関係ない」と信じて耐え続ける貧困者を大量に作り出した。生活保護バッシングの激しさは、「生保利用者は自己とは無関係」、と割り切れなくなりつつある多くの低所得者の、ほとんど無自覚の焦りと恐怖が原動力なのではないか。それでも生活保護利用が増え続ければ、今度は逆に、生活保護だけでなく、低すぎる最低賃金、不安定な雇用、社会保険の極度の貧弱等についても「自分たちも生活保護利用者と同じかそれ以上に保障されて当然だ」という意識が、大規模に噴出する時点が来ておかしくない。生活保護利用者が「特別な人びと」ではなくなるとき、社会保障を小さく押しとどめていた枠組みは吹き飛ばされるだろう。支配層が怯えているのはこのことではないか(後藤道夫 同上)


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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (さんふらわあ乗船券販売所・関汽交通社 )
2013-04-17 21:33:31
さんふらわあ乗船券販売所・関汽交通社

連合・サービス連合傘下の労働組合

関汽交通社社員さんへ

いじめ行為、嫌がらせ行為やめてください。

プライバシー等の人格権侵害行為もやめてください。

裁判所は、結論として、申立人らに対する面談強要の禁止、
申立人らの自宅前の道路の立入禁止、申立人らの監視の
禁止、申立人らのつきまといの禁止を命じた。

 その理由についてであるが、被申立人らの追尾行為、
それらが申立人らの生活の平穏、プライバシー等の
人格権侵害に該当することが明白であると述べ、
したがって、申立人らは、面談禁止、監視、付きまとい等
の禁止を求めることができるとした。

安心して、働きたいが労働者の要求です。

全国で有名になるまでがんばるぞ!
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