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プロメテウスの政治経済コラム

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リビア・カダフィ独裁政権の命運は?  西谷文和さんの最新現地報告(その2)

2011-06-09 18:48:55 | 政治経済

イラクやアフガンと同様に戦争犠牲者を取材するため西谷さんは、ベンガジ子ども病院と医療センター緊急病棟を訪問した。医療センター緊急病棟には、ミスラタの民衆蜂起でカダフィー軍の強力武器で銃撃された多くの戦争犠牲者がミスラタからベンガジに運びこまれて入院していた。

西谷さんは、少しでもトリポリに近づくため、ミスラタに入ることを決める。ミスラタは、周囲をカダフィー軍に囲まれている、いわゆる「飛び地」である。ミスラタ周辺の都市はカダフィー側が支配しており、陸路を行くのは大変危険である。西谷さんらは、ミスラタとベンガジを結ぶ定期船をつかまえることができ、海路20時間かけて、ミスラタに入ることに成功する。

 

521日、ベンガジ医療センターでの取材から

220日、ベンガジの民衆蜂起に刺激されたミスラタの人々が、打倒カダフィーで立ち上がった。「独裁打倒」「リビアに自由を」。ミスラタのメーンストリートを平和的にデモをしている人々に、遥か彼方から「地対空マシンガン」の砲弾が飛び込んできた。数キロ先からカダフィー軍が撃ってきたのだ。この「地対空マシンガン」の銃弾の威力は凄まじく(当然だ、飛行機を撃ち落とすのだから)、たった一発の銃弾でも、多くのデモ参加者を死傷させた。右手の親指、左手の薬指と小指を失った男性。「俺はミスラタの漁師だった。あの時、武器も持たずに、ただ行進していただけだった。この指では、もう漁に出ることができない」。

潜水夫として、海難事故の審判のための資料づくりや漁船の修理にあたる男性は、別のデモで左足を射抜かれていた。「俺たちは武器を持たない普通の市民だ。左足のすねの骨が欠損しているので、もう歩けないかもしれない。もちろん潜水夫としての仕事は、無理だ。カダフィー軍は戦車から撃ってきた。町にはカダフィーの雇った外国兵があふれていた。チャド、マリ、ナイジェリア、南アメリカからも来ていたよ」―南アフリカではなく南米コロンビア!―>

<ナイジェリア人の男が下半身不随になって入院していた。225日、ミスラタに出稼ぎにきていた彼の家に、数人の兵士が侵入してきた。兵士たちは彼を捕まえて殴る蹴るのリンチを加えた。ある兵士は銃で殴り掛かり、ある兵士はひたすら蹴りを入れてきた。やがて意識を失って2日間が経った。気がつけば隣で友人のイブラヒームは死んでいた。奇跡的に一命を取り留めた彼は、赤十字の船でベンガジまでやって来て、ここに入院した。ナイジェリア人が襲われたのは、カダフィー軍との関係が疑われ、反政府軍の標的になったのかもしれない。>

 

522日、ベンガジ子ども病院での取材から

<子ども病院には「がん病棟」があって、ここに白血病やその他のがんの子どもが入院している。その多くがリビア東部の町デルナやトクラの出身。世界でほとんど報道されていなかったので知らなかったが、実はリビア東部のこれらの町で、1996年に住民が一斉蜂起したことがあった。打倒カダフィーの蜂起は今回だけではない。その時はカダフィー軍が徹底的に弾圧。90分で1千人以上の人々を虐殺した、などと語られている。当時のリビアに外国人が入国するのは非常に難しく、またネットなども遮断されていたため、この虐殺が大きく報じられなかったのだ。カダフィーはこの虐殺に「マスタードガス」などの毒ガス兵器を使用した模様で、毒ガスの影響やその他爆薬、銃弾の重金属による化学的毒性によって、人々の健康が蝕まれていったと考えられる。>

 

524日深夜1時、定期船はベンガジ港を出港。ミスラタまでは約20時間の船の旅

<大型客船はトルコ製で、普段はクルージング用に使われていたらしく、船内にはスロットマシーンやミニバーなどがある。もちろん、すべて使えないし、そんな悠長な気分にもなれない。船室でごろ寝。詰めも詰めたり、数百人の乗客が乗り込んでいるので、いったんスペースを離れると、寝るとことがなくなる。ふと、終戦後の引き揚げ船がこんな調子だったんだろうな、と先日聞いた戦争体験者の話を思い出す。
午前8時、大海原に太陽が昇る。進行方向に向かって左がアフリカ、右がヨーロッパ。時にはイルカが顔を出すという。午後9時、ようやくミスラタに到着。けが人を運び出す車が去った後、大型トレーラーに積み込まれて、ミスラタ港を出る。通りには義勇兵。カラシニコフ銃、RPGロケット弾を肩からかけている。通り過ぎるピックアップトラックの荷台には対空砲。あぁついに戦場に来た、と実感。><続く

 


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