プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

グアム移転経費合意 どこに「国民への説得力」がある?!

2006-04-24 13:40:56 | 政治経済
額賀防衛長官は23日午後(日本時間24日朝)、ラムズフェルド米国防長官と国防総省で会談し、在沖縄海兵隊のグアム移転費分担問題について合意しました。額賀長官は訪米前に「国民に対し、説得力を持つ形をつくるために努力する」(20日)と述べていました。合意内容のどこに「国民への説得力」があるというのでしょうか。

日米防衛首脳会談で合意した在沖縄海兵隊グアム移転経費の日本側負担は全体の約6割、60・9億ドル(約7100億円)に達しました。「応分の負担」の基準がないまま、合意を急いだ日本側が大幅な譲歩を余儀なくされました。6月の日米首脳会議を控えて、政治決着を焦った日本側の米軍再編関連経費負担は、普天間飛行場の移設などと合わせて2兆円―3兆円に達しそうです。
米側はこれまでの協議で、グアム移転費の総額を百億ドル(約一兆二千億円)とし、このうち75%(約九千億円)の負担を日本に要求していました。総額102億7000万ドル(今回またまた吊り上げられた!!)のうち日本側の負担は60億9000万ドルであり、59%だから、よくがんばったとでも言う積もりでしょうか。

しかし、これほど国民をバカにした話はありません。“今回のアメリカ軍の世界的再編成で、東アジアでの米軍再編の主要目的のひとつは、グアムへの米軍移転百億ドルを日本に支払わせることでした。沖縄の「負担軽減」はごまかしの口実です。もっとも悲惨なのは、沖縄の問題がまったく解決されないことです。海兵隊の基地は撤去せず、大浦湾の名護市辺野古に移転させ、とんでもない環境被害をもたらそうとしています。普天間基地のヘリコプターや航空機事故の危険は結局軽減されないでしょう。重大だと思うのは、これまで沖縄に基地の負担を強いてきた日本政府と米国防総省が、本土にもいっそうの基地負担を押し付け始めたことです。”(チャルマス・ジョンソン米カリフォルニア大学名誉教授「赤旗」06.4.15)

実は、この百億ドルという経費を積算する根拠として、兵員約八千人、家族約九千人が移転するということが前提になっています。しかし、本当にこれだけの人数が移転するのか。その肝心なことについて、政府・防衛庁は説明不能に陥っています(「しんぶん赤旗」06.4.23)。
大古和雄防衛庁防衛局長いわく、「(沖縄に今いる)具体的な人数は日々動いており、承知していないが、本来沖縄にアサインされている人数(定員)が一万八千人であるとアメリカは説明している。」つまり米側が「一万八千人」の定員だと言っていますというだけで、日本政府として、みずから吟味しておらず、実際に沖縄にいる海兵隊員数については把握していませんということです。
在日米軍司令部は、「しんぶん赤旗」の問い合わせに対し、現時点での沖縄の米海兵隊の兵力は一万二千五百人と回答しています。一万人を残すといえば、移転されるのは、実質二千―三千人。政府が主張する八千人の三分の一にすぎません。

防衛庁は、約八千人の海兵隊員とともに、家族約九千人も移転させるとあくまで説明しています。ところが、この説明では、奇妙なことがおこります。在日米軍司令部は、ホームページで日本にいるすべての海兵隊員の家族の人数を公表しています。その人数は、米海兵隊岩国基地(山口県)に配備されている海兵隊員の家族も含め、10,480人です。 防衛庁の説明通り移転すれば、家族約9000人が移転するわけだから、残る海兵隊員一万人に対し、家族は七分の一に激減し、わずか1,480人になる計算です。しかも、岩国基地分をのぞけば、さらに家族は少なくなります。
それまで海兵隊員二人に一人以上は家族がいたのに、移転後には、七人に一人しか家族がいなくなる――。にわかに信じ難い数字です。ここにも、米側から示された数字をうのみにするばかりの政府の卑屈な姿勢がうかがえます。

小泉自公政府は、BSE牛肉問題でも、米海軍横須賀基地(神奈川県)への原子力空母配備問題でもアメリカの言い分をそのまま鵜呑みで、「安全」だ、「安全」だと言いつのってきました。そもそも他国内の基地強化の費用を負担するなどということは、世界広しといえども小泉自公政府以外にありません。そのうえ、国民向けには、米側の水増しした数字をおうむ返しに説明することしかできない日本政府――どこに「国民への説得力」があるのか。しかし、これが国民の過半数の支持を得ている小泉自公政府の真実の姿なのです。 


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1 コメント

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初めまして (寒北斗)
2006-04-26 16:39:15
初めまして、寒北斗と申します。



在日米軍グアム移転の記事を検索していて貴ブログにたどり着き、興味深い記事なので引用させていただきました。事後承諾で申し訳ありません。

同じく不都合があれば削除いたします。

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