我々の準備が着々と進む中、K建設の方はなかなか事態が進まなかった。
「うーん、まだM資源公団との話が進まなくてね」
所長の鴻野は、現場事務所の応接セットに座り、今一つ緊迫感の無い雰囲気を醸し出していた。
「所長、その他の準備はええんですわ。問題はロボットの方ですわ」
「ええ、設計と製作、合わせて一月半は見て頂かないと…」
渡と私は、声をそろえて鴻野に迫った。
鴻野にとっては、水管橋の上流と下流で行われている鋼管のインサート工事の方が、主たる業務である。口には出さないが、降って湧いた様な水管橋の再塗装工事などは、面倒なおまけ工事にしか過ぎない筈だった。
「とりあえず、一度そのガンだっけ?それで数m2を剥離して、塗料の密着強度を調べようかと思っているんだけどね」
「分かりました。それはいつになりますか?」
「うーん、十二月の中を過ぎてからかな?」
「え?そんなに後ですか?」
「ほら、年末にやれば、二週間後の年明けに密着強度をテスト出来るじゃない」
「・・・」
思わぬ鴻野の提案に、渡が困惑する。私は代わりに口を開いた。
「所長、もしもですね、やることが決定した場合、着工はいつになりますか?」
「大体、二月の中頃だね」
「えーと…、年明けに塗料の密着強度を確認して、正式な工事決定はいつごろになりますか?」
「まあ、早くても一月の中…、いや、末かな?」
「!?」
私と渡は、思わず顔を見合わせた。
「いやいや所長、ロボットの製作には一ヵ月半は必要なんですわ。年明けすぐにゴーサインを貰っても、ギリギリでっせ?」
渡の顔が、笑いながらも引き攣っている。
「うーん、今はそういう返事でしか出来ませんね」
鴻野の顔も困惑している。
「木田さん、そういう事なんで申し訳ない」
鴻野は私になんとも言えない困り笑いを向けつつ、細かく頷いて見せた。
「常務、どうしましょうね?」
帰り道、私はライトバンを運転しながら、渡に問い掛けた。
「しゃあないやろ、まさか工事があるか無いかも分からんのに、高価なロボットだけ造る訳には行かんやろ」
渡は、非喫煙者である私を一切気にすることも無く、ライターでタバコに火を点けた。
「ウィーン」
私は助手席側の窓と、対角線の後部座席の窓を少しだけ開けた。
「お、すまんの」
渡は煙を窓の方に向かって吐き出す。
「しかし、一月に入ってから正式なゴーサインを貰っても、恐らくロボットが間に合わないと思いますよ」
「なんとかならんか?実際の製作は二週間位なんやろ?」
「常務、造るだけなら二週間ですけど、試運転もしないで現場に持ち込むなんて、恐ろしくて僕には出来ませんよ」
渡は再び、タバコを肺の奥まで吸い込む。
「やっぱり試運転は必要か?」
「ええ、まだ実設計を行っていなんで、簡略な図面しかありませんけど、試運転無しじゃ無理ですね。協成も同意見だと思いますよ」
「困りましたな、そらぁ…」
渡は困り果てている様だったが、私の中では一つの決心が固まり始めていた。
「うーん、まだM資源公団との話が進まなくてね」
所長の鴻野は、現場事務所の応接セットに座り、今一つ緊迫感の無い雰囲気を醸し出していた。
「所長、その他の準備はええんですわ。問題はロボットの方ですわ」
「ええ、設計と製作、合わせて一月半は見て頂かないと…」
渡と私は、声をそろえて鴻野に迫った。
鴻野にとっては、水管橋の上流と下流で行われている鋼管のインサート工事の方が、主たる業務である。口には出さないが、降って湧いた様な水管橋の再塗装工事などは、面倒なおまけ工事にしか過ぎない筈だった。
「とりあえず、一度そのガンだっけ?それで数m2を剥離して、塗料の密着強度を調べようかと思っているんだけどね」
「分かりました。それはいつになりますか?」
「うーん、十二月の中を過ぎてからかな?」
「え?そんなに後ですか?」
「ほら、年末にやれば、二週間後の年明けに密着強度をテスト出来るじゃない」
「・・・」
思わぬ鴻野の提案に、渡が困惑する。私は代わりに口を開いた。
「所長、もしもですね、やることが決定した場合、着工はいつになりますか?」
「大体、二月の中頃だね」
「えーと…、年明けに塗料の密着強度を確認して、正式な工事決定はいつごろになりますか?」
「まあ、早くても一月の中…、いや、末かな?」
「!?」
私と渡は、思わず顔を見合わせた。
「いやいや所長、ロボットの製作には一ヵ月半は必要なんですわ。年明けすぐにゴーサインを貰っても、ギリギリでっせ?」
渡の顔が、笑いながらも引き攣っている。
「うーん、今はそういう返事でしか出来ませんね」
鴻野の顔も困惑している。
「木田さん、そういう事なんで申し訳ない」
鴻野は私になんとも言えない困り笑いを向けつつ、細かく頷いて見せた。
「常務、どうしましょうね?」
帰り道、私はライトバンを運転しながら、渡に問い掛けた。
「しゃあないやろ、まさか工事があるか無いかも分からんのに、高価なロボットだけ造る訳には行かんやろ」
渡は、非喫煙者である私を一切気にすることも無く、ライターでタバコに火を点けた。
「ウィーン」
私は助手席側の窓と、対角線の後部座席の窓を少しだけ開けた。
「お、すまんの」
渡は煙を窓の方に向かって吐き出す。
「しかし、一月に入ってから正式なゴーサインを貰っても、恐らくロボットが間に合わないと思いますよ」
「なんとかならんか?実際の製作は二週間位なんやろ?」
「常務、造るだけなら二週間ですけど、試運転もしないで現場に持ち込むなんて、恐ろしくて僕には出来ませんよ」
渡は再び、タバコを肺の奥まで吸い込む。
「やっぱり試運転は必要か?」
「ええ、まだ実設計を行っていなんで、簡略な図面しかありませんけど、試運転無しじゃ無理ですね。協成も同意見だと思いますよ」
「困りましたな、そらぁ…」
渡は困り果てている様だったが、私の中では一つの決心が固まり始めていた。
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