どんぴ帳

チョモランマな内容

はくりんちゅ408

2009-03-12 01:30:07 | 剥離人
 くすんだ海、灰色の空、肌に纏わりつく湿った風。
 朝一の空母の甲板の上で、幸四郎は作業員全員に無情な一言を発していた。

「さ、段取り換えをすんべぇ!」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
 甲板上のS社の職人全員の動きが止まる。
「どこをやるんすか!?」
「昨日プライマー(下塗り塗料)を塗った場所だおぉ」
「マジっすか?」
「早くホースを全部縁切りして!」
 幸四郎はS社の職人に指示を出す。
「ってことなんで、悪いけど段取り換えをしてもらえる?」
 R社の作業用コンテナに歩いて来た幸四郎の言葉を聞いて、ハルが笑いながら突っ掛かる。
「段取り換え?もしかして昨日プライマーを塗った場所?」
「うん、そう、塗る直前に雨が降ったでしょ」
「…降ったって言っても、ほんのちょっとだおぉ」
「うん、鉄板に落ちた雨粒の数を、数えられるくらいの雨ですよね」
 私もハルに便乗して、幸四郎に疑問を呈する。
「それがダメらしいよ…」
「マジで?」
「うん、ほんのちょっとでも雨粒が落ちたら、全部やり直しだって」
「このキャット(剥離ロボット)四台でやった広大なエリアを?」
「そう、全部リブラ(Reブラスト)だって」
「・・・」
 私は深いため息を吐き、様子を伺っていた須藤と堂本に、段取り換えの指示を出した。
「本当によぉ?まだこっちも終わってないじゃんねぇ」
 ハルがブツブツと言う。確かにやりかけの施行エリアは、まだ半分しかノンスキッド塗装(飛行甲板のすべり止め塗装)の剥離が終わっていない。
「木田さん、今日は夕方から雨が降るって予報でしたけど…」
 微妙に仕事がしたくないのか、須藤が今日の天気情報を提供する。
「雨が降ろうが何だろうが、とりあえずプライマーを剥がすんですよね」
「うん、そう」
 私の問いに、幸四郎が即答する。
「雨が降るのに剥がすんですか?でも塗れませんよね」
 須藤の言うことも一理ある。
「うん、プライマーを剥がしておいた方が、リブラが速いからね」
 幸四郎の答えには一切の迷いが無かった。

 我々は5tのフォークリフトで段取り換えをすると、昨日塗られたクリーム色のプライマーを全部剥がし、今にも雨が降りそうな空母の甲板を後にした。



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8 コメント

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言えるかどうかは別として (カミヤミ)
2009-03-23 11:26:14
言えるかどうかは別として、床屋でシャンプーの時に痒い処が一ヶ所でもあれば気になります。『痒い処ありますか?』と聞かれれば答える場合もあるし、面倒で答えない時もあります。痒い処に手が届かない時もあります。雨粒が一滴でも落ちたら、ヒルトップの校歌と同じでやり直しです。文句があるなら、当時の自分の目の前に当時の自分の精神状態で当時の石橋大先輩がいると思って言って下さい。どぅーゆぁ~べすと!逃げたのではなく精神が成熟してただけか、未来の自分から啓示を受けたんですね。…まー、どう考えても逃げたんですけど。

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いつか… (どんぴ)
2009-03-24 02:21:05
 カミヤミさんと廃墟になった信○学寮を訪問し、ヒルトップをやり、朝練をやりとげたいです(笑)
 そして、
「どぅーゆぁ~べすとの精神で頑張ったので、ご馳走して下さい!」
 と言って、石橋大先輩の店に行って、スキヤキをご馳走になりたいです。
 会計の時には走って逃げますけど…。
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三年時に (カミヤミ)
2009-03-24 02:52:13
朝練を終えて、合宿メニューは午後の踊り込みを残すのみ!という時に、ほっ!として過呼吸で倒れたのは今では良い思い出です。アゴすら動かす事が出来ずにマキさんか咀嚼した鶏肉だかを食いながら、同期のオ○タが、代役で練習を仕切る声を中庭を挟んで聞いていて感激したのを覚えてます。本人は全く気が付いてないと思いますが、俺は事あるごとにオー○には精神的に救われていて感謝してます。…って事で、どんぴ親方は不実を反省して下さい。
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咀嚼? (どんぴ)
2009-03-25 03:41:32
 カミヤミさんが倒れたことよりも、マキの咀嚼メニューが非常に気になりました。
 あの頃のマキの咀嚼メニューと言えば、学生生活に残る至極の一品だと思われ、きっとグルメな(死語だな、笑)カミヤミ雄山先生も満足されたことでしょう。

 それからカミヤミ先生は勘違いをされておられるようですが、私はチュヂュメさんが湿った手で愛される様になってからは、一度もお会いしたことがありません。
 ま、チュヂュメさん本人に、
「このろくでなし!」
 と言われるのは納得ですが…。
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いえ (カミヤミ)
2009-03-25 10:09:24
生きる為に食べました。当時のマキさんの人気はインフレ気味だったんじゃないですかね?今思えば、モチオさんのチンポを舐めた口ですから、その方が気になります。
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生への渇望 (どんぴ)
2009-03-26 01:48:48
 他人が咀嚼したものを食べてまで生きていたカミヤミさんの勇姿ですが、私の脳ミソには一片の記憶も残っていません。(す、スミマセン…)

 私の記憶に残っているのは、○○○と女子トイレ(何でだ?)でキスをして、外に出たところを△△に、
「今、何をしていたの?」
 って睨まれたことです。

 いや、カミヤミさんの頑張りは、先輩として評価してましたよ、たぶん…(笑)
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Unknown (うう)
2009-12-07 15:02:34
こんにちは
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うーん… (どんぴ)
2009-12-07 19:24:33
だれだろう?
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