アアクスグループブログ

アアクスグループ代表者堂上孝生のブログ

企業経理を懈怠したらどうなるの?

2008年07月30日 | Weblog
「経理帳簿は何のために付けるのか?」
「決算のため」
「何のために決算するのか?」
「申告のため」
 そうです。大抵の小企業は、申告のため経理帳簿を付けている。馬鹿らしいことである。

 更に、
「帳簿をつけなかったらどうなるの?」
「申告できないです」
「申告しなかったらどうなるの?」
「課税できませんねえ」
「有難いじゃん!」

「しかし実際はそうではありません」
「?」
「税務調査で、推定課税されます」
 国税に関しては、それで権力の勝利でしょう。

 商法第19条は「商人の会計は・・・慣行に従うものとする。2. 商人はその使用する財産について、適時に商業帳簿(B/S、I/S)を作成しなければならない。3.商人は・・・10年間、その商業帳簿及び・・・重要な資料を保存しなければならない」と規定しています。
 しかし、商法第7条は「第5章(第19条)は、小商人(総資産50万円以下の者)には適用しない」と例外規定しています。
 文筆業でワープロ一つあれば小説家は成り立つかなあ。貧乏な貸し部屋でお茶を教えれば総資産は50万円以下だなあ。小生の著名なお茶の先生は、80歳近い今も、僅かな所得に僅かな年金を加えて必ず確定申告を委託してくる。

 この秋、国は入国管理法で人的鎖国政策を改め、3年間の期限付きながら、単純労働者の受入れをする。年収600万円の請負労働者の総資産は50万円以下である。商法は帳簿の作成を強制していない。税務署はどうするのだろうか?

 はい、税務署はいうであろう。
「所得税法が納税義務を規定している(第2章)」と。課税標準(課税対象)は収入と費用の差額(所得)である。年収600万円で、その営業のために使用する財産の価額、つまり総資産が50万円以下の居住者たる単純労働者は、商法で商業帳簿の作成を免れる。しかし納税義務はある。税務署はどう指導するのだろうか?「商業帳簿を作成しろ」と強制したらその公務員は商法違反を犯すことになる。
 税務署は反論するであろう。
「推定課税は出来る」。推定課税とは所得を推定して課税する課税方法である。それには反論できない。

 ただ人の名義のナイトクラブで、名義上、ただそれを歩合制で借りて営業する『名も無き』ママ達のうち申告してこない者達は、どう課税するのか?反面調査で挙がる者を除き、所得の捕捉洩れが極めて多いと推定される。因みに反面調査とは、税務署の調査手法の一つで、クラブで遊んだ社長が交際費として費用計上し、その領収書の反面としてのクラブを税務署が調査することである。税務署は反面調査の手法が確立されているから、捕捉洩れは制度的にないと観る。豪邸を構えて「儲けなどでない」という農民の「十・五・三・一」の捕捉率一割の論理と同じかなあ。

 問題は、人的鎖国を解けば、益々このような「課税漏れ」が多くなる。だからと言って、長期的にも短期的にも、外国人労働者が「老健施設」や「建設現場」、それに「ITソフト制作現場」などでの労働者が必要であるから避けられない。どうだろう?彼らも所得税率が低ければ払ってくれるのではないだろうか?

 国家運営のコストとして、天下りの官僚コスト構造をどう潰すかに掛っているのかなあ。少なくとも「てんぷら」はそんな構造に乗るなよなあ。と言っても無駄だなあ。そういう俺も同じ税務体制に身を置くダメ税理士だったっけ。偉そうに人にモノ言う立場にはなさそうである。改革に行動を起こさない小生の事務所も「潰れる」のが世のためかも知れないなあ。H20・7・29文責・税理士堂上孝生