2004年、メキシコ・エクアドル作品
オープニング。
川(沼?池?)の中で、石鹸で身体を洗う、人のよさそうな男の姿。
男は岸にあがり、洗面器に服と漂白剤をいれる。
男の顔は何かをやりとげたようなすがすがしい表情。
エクアドルのババオヨで子供ばかりを狙った殺人事件が多発していた。犯人は"モンスター"と呼ばれ人々から恐れられていた。
その事件を追ってマイアミからやって来たレポーターのマノロは、取材中にある事故に遭遇する。川で身体を洗っていた男の運転する車が、誤って子どもをひき殺してしまったのだ。
一気に群集が押し寄せ、車から出ようとした男を取り囲み、暴行を加え焼き殺そうとする。
マノロのチームは「スクープだ」と言わんばかりにカメラをまわす。
だがすんでのところでマノロは男を助け出した。
結局、暴行を加えた首謀者と、子どもをひき殺したその男は連行されるのだが、男は命の恩人であるマノロに「恩返しにモンスターについて知っていることを教える。モンスターが子どもを殺して埋めた場所を知っている」と言う。
真夜中、マノロは男が教えた場所を掘りに行き、少女の死体を見つける。
マノロは男がモンスターなのではないかと疑い始めるが、スクープに対する強い欲望から、警察に通報せずそのまま少女の死体を埋めなおすのだった。
オープニングから、この男が人を殺したであろうことが読み取れるのだが、人のよさそうな姿やリンチにあっている痛ましい姿を見ていると、彼が加害者なのか被害者なのかわからなくなる。
この映画は、一見普通に見える人間の持つ、意外性や心の闇を描いて、誰でも彼のようになりうる可能性をぼんやりとだが示唆させる。
そしてその男がモンスターだと嗅ぎ取り、彼を取材し特番でスクープとしてとりあげようとしたマノロは、結局のところ彼を釈放する結果をまねいてしまうのだ。
人の命や真実を尊重しようとしながらも、スクープを追い続け視聴率をあげることに重きを置かざるを得ないマスメディアのありかたを、非難するというよりは私たちに問うような形で描いている。
ワタシはとっさに「豊田商事会長刺殺事件」を思い出してしまったのだけれど。
実在した連続殺人事件にインスパイアされたというだけあって、終始緊張感に溢れたストーリーは、見終わった後までも胸に重々しいものを残す。
いつも犠牲になるのは、守るべき弱いものたちなのだと思うといたたまれない。
結局犯人を野放しにしてしまったマノロたちは、そのことを警察に告げるでもなく重苦しい思いを自分たちの胸にしまってババオヨを後にする。
マノロたちの胸の中の重苦しさといたたまれない思いが、この映画の後味の悪さとして私たちの胸に刻み込まれる感じだ。
後味は悪いけれど、映画としては秀逸。
ババオヨの人々の汗の臭いが感じられるような、臨場感あふれるいい映画だと思った。
好きな題材だったので観ました。
容疑者がマノロに取引を持ちかけるところまでは凄く面白く見ました。
分からないのが、もしマノロがスクープを本気で狙っていて、同時に人命と真実を尊重する優れたジャーナリストならば、なぜ死体を見つけた後に警察に連絡しなかったかですよね。
そうすれば、絶対的に有利な立場に立てたはずですもの。わざわざ自分から不利な状況を作り出しているように見えました。なんで容疑者のいいなりになるのかが分かりません。そんなことをすれば足元を見られるだけですからね。
死体が自白通りの場所にあった時点でおかしいと思わないとね。モンスターがそこまでの秘密をあんなおっさんに簡単に明かすのは確実に不自然ですし、この時点で警察に任せるべきですよ。
警察も騙されるほどバカじゃないから「どうして死体の場所知ってたんだ、おい!」ってことになって、釈放はまずあり得なかったでしょうし、マノロだってこの功績ですでにスクープとったも同然なわけですよ。
警察の尋問であとは落とすだけ。
あの容疑者はマノロの見え見えの虚栄心を利用したんですよね。
問題はマノロという人物にリアリティが感じられないということ。彼のやることなすことがお粗末過ぎるので、脚本的な説得力にも欠けていたように感じました。
実際のジャーナリストだったらもっと慎重に行動したでしょうね。マノロの仕事への姿勢や行動にプロっぽさが欠けていて、納得がいかなかったです。
しかしながら、ジョン・レグイザモ始め役者たちの演技は凄く良かったですし、緊迫感もありました。また、エクアドル特有の湿気や生活感、殺気だった空気が映像に明確に捉えられていて、仰るとおり臨場感がありましたね。
・・・っていうか人様のブログでしゃべりすぎだよ!!(笑)
っていうのは冗談ですけど、今度借りてみます♪
なんだかワタシのレビューがはずかしくなるくらいです・・・。はずかしくて穴があったら入りたい。でも身体がでかいのでお尻が穴からはみでるかも・・・(汗)。
ワタシはマノロにリアリティを感じました。
あのどっちつかずの感じは、彼の中で今あるメディアのあり方に多少なりとも迷いというか疑問があったからだと思うのですよ。だからプロに徹することができなかったのではないかと。
あの人は優しすぎたのではないかと思うんですね。
そういう意味でとっても人間的な印象を受けました。
ジョン・レグイザモってワタシの中では「三人のエンジェル」のイメージが強烈に残っているので、今回映画を見ていてちょっと不思議な気分になりました。
「あ、やっぱり男なんだ」って。ははは。
これは見て損はないと思います~。
オススメでございますよ。
是非ご覧になってくださいまし。
で、感想聞かせておくんなまし。
ジョン・レグイザモもよかったけど、モンスター役のダミアン・アルカザールが、また雰囲気があってすごくうまいの!!
せぷさん好みの女性は出てこないですけどね。
>非難するというよりは私たちに問うような形で描いている。
まさしく。人間としてのモラルって?ジャーナリズムって?と問われているような気がする作品でした。私もDVDを買いましたけど、エンディングのアナザー・バージョンはご覧になりました~?やっぱり後味悪かったですが。大衆心理の威力って恐ろしい。。。
映像も役者さんたちもスゴク雰囲気があって良く作られてましたね。
カメラマン役のJosé María Yazpikって、「イノセント・ボイス」にも出てましたね~♪←重たい映画でも本能でイイ男チェックしている自分。。。
人間の本性と欲望という誰もが持っていて隠せない部分を深く抉った作品だと思いました。
あのどろーんとした空気のにごり具合が、ますますこちらの想像力に重石を乗せていくんですよね。中南米の空気ってたまりません!
聞かれてもいないのにDDさんのヤスピク情報に補足(笑)
レグイザモ&ヤスピクは『スウェー★ニョ』というユルイ作品でもご覧いただけます。2人とも陽気に歌ってます♪
アナザー・バージョン見ましたよ~。
ブログで間違ったこと書いちゃまずいな~と思って一通りみました。
怖いですよね~。アナザー・バージョンのエンディングの方がもっと後味が悪いです。
メディアのあり方にも問題はあるけど、あんな単純というか単細胞な大衆にも問題ありですよね。
どちらにしても作り手だけでなく、見る側にも問題がある感じがしました。
>カメラマン役のJosé María Yazpik
あ、彼、ワタシもちょっと気になりました。うふふ。
「イノセント・ボイス」未見なんです(というより見てない映画がほとんどなんですが・・・)。
今度見てみますね~。
後味は悪いけれど、面白い作品でした。
>どろーんとした空気のにごり具合
あ~わかります!!ワタシはむせるような砂埃と、もあ~んとした汗の臭いを感じました(笑)。
>レグイザモ&ヤスピクは『スウェー★ニョ』というユルイ作品でもご覧いただけます
え?そうなんですか?それは見てみたい気がします。
「見たい映画リスト」に入れておきます(笑)。