来月の院内感染対策関連院内勉強会はMRSAについて話さないといけない。院内感染として無視できない菌であり、重篤な菌血症では死亡率も高いので、慎重な対応を求められる。 当院は抗菌薬としてVCM、TEIC、ABKなどの従来の薬に、近年はLZDやDAPが加わり(すべてICTへ届出薬であり監視しているが)その上手な使い分けも求められる。MRSA診療では 米国感染症学会IDSAの MRSA感染症ガイドライン2011がでているが、あいまいな問題もある。 この文献はブドウ球菌診療においてレビューし、どこがまだ議論の余地のあるところなのか明らかにしてくれる。
・黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症は、一般的で重篤な細菌感染症の一つで、英国でも、毎年12500例あたりで、約30%の死亡率と関連。最適な診療法を導くにはまだ根拠が貧弱である。
・米国では59の病院から6697例の血流感染症研究で、S.aureusは全例の23%を占め最も一般的な菌で、他の菌よりより強く死と関連。
・現在の英国と米国の治療ガイドラインでは、合併症のないSABでは14日以上の治療を受けるべきで、深部感染巣が存在する場合は 4~6週間としている。 [Circulation 111. e394-e434.2005]、[J Antimicrob Chemother 57. 589-608.2006]、[Clin Infect Dis 49. 1-45.2009]、[Eur Heart J 30. 2369-2413.2009]
いかに黄色ブドウ球菌菌血症(SAB)と定義するか?
・この菌では、血培から1つ以上で分離されれば臨床的に有意な菌血症とみなされる。
・1809例のSABを含むProspective研究で、たった27(1.5%)のみがcontaminationに起因すると考えられた
・他の研究では、永続的な菌血症(≥3日間有効な抗菌薬治療を開始した後に血液培養陽性)は、複雑性疾患の強力な予測因子であることを発見。
感染症病巣の同定と除去は重要か?
・三つの前向き研究で、感染した静脈カテーテルを除去しないと、SABの再発の最強の独立した危険因子であることが示された
・ブドウ球菌性心内膜炎(SAE)の初期に外科的介入は、特に感染人工心臓弁の早期除去は、アウトカムを向上、ブドウ球菌感染の人工関節を除去しないことは強く治療失敗に関連付け。
・一部の患者(10-40%)は、発病時または初期調査で識別可能な感染フォーカスを持たないので注意。 Case seriesで潜在性心内膜炎が報告されている。
SABを持つすべての患者は心エコー検査を行う必要があるか?
・SABは特に弁異常または人工弁を有する患者では、心内膜炎の主要な危険因子
・疣贅が小さかった(<5 mm)と大動脈弁または僧帽弁にあった場合は特に、経食道心エコー検査は、経胸壁心エコー検査よりも弁疣贅の検出率が高い
・経食道心エコー検査は、人工弁心内膜炎の診断、ペースメーカーリードや他の心臓内デバイスの感染症のため、経胸壁心エコー検査よりも優れていた。
・一つの前向き研究によると、経胸壁心エコー検査で陰性のあと、経食道心エコー検査で103例(19%)の症例においてSAEを検出された。
・単独の経胸壁心エコー検査で、SABとほとんどの患者で心内膜炎を除外するのに十分であるかもしれないと主張するひともいる。 経胸壁および経食道の心エコー検査診断率のレトロスペクティブ比較研究で、 もし全く塞栓現象が存在していない場合、正常の経胸壁心エコー検査後に、左側生体弁心内膜炎の確率は2%未満であったことを見いだした。筆者らは、経胸壁心エコー検査で、低リスク患者ではSAEを除外することができると結論。
<次回 <a href="http://blog.goo.ne.jp/da350350350/e/c609d02c84762c26431142f6f63821ce">治療編 へ続く>
参考
Lancet Infect Dis. 2011 Mar;11(3):208-22.