感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

複数菌による菌血症について

2013-09-24 | 感染症
当科では1年以上前から、当院血液培養陽性結果の全症例チェックをしているが、ときおり同じボトルからまたは複数本から複数菌が検出されることもある。複数菌種が絡むと感染部位診断やその解釈が難解になり、Empiric治療にも迷うことになる。昔は感染症の基礎の勉強で、1感染症には1病原菌、と教わったものだが、最近、polymicrobial bacteremiaの文献が目につくようになった。



・台湾南部の一施設の救急室で、複数菌と単数菌の菌血症症例の後ろ向きマッチ症例対照研究。(Acad Emerg Med. 2010 Oct;17(10):1072-9.)
・90日以内の入院歴は複数菌血流感染の独立した危険因子であった(p= 0.003)
・腹腔内感染(p<0.001)と気道感染症(p=0.017)は、複数菌血流感染に関連付けられていることが多かった。 対照的に、monomicrobialエピソードは尿路感染症に起因する可能性が高かった(p <0.001)
・グラム陰性及びグラム陽性菌は、複数菌血流感染のエピソードのそれぞれ95.5、46.4%に記載。 それぞれの最も頻繁な分離株は、Escherichia species(57.1%)および連鎖球菌(26.8%)であった
・不適切な抗菌薬治療は複数菌血流感染の53.6%でmonomicrobial血流感染では23.8%で観察された
・複数菌グループ全体の30日死亡率はmonomicrobial血流感染と比べて有意に高かった (それぞれ30.3と11.6%、P<0.001)

・スペインの大学付属病院での成人外科ICU患者で院内血流感染、前向きコホート研究。(Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2012 Aug;31(8):1791-6.)
・371例の院内BSIの調査を行った、うち75例は(20.2%)複数菌だった。
・複数菌菌血症の最も一般的な感染源は、呼吸器(45.3%)、不明(24%)、カテーテル関連(20%)、 腹腔内(4%)、でmonomicrobial菌血症との間で有意差はなかった。
・Acinetobacter baumannii, Enterococcus spp., Pseudomonas aeruginosa, CNS, and Klebsiella pneumoniaeは、単変量解析による複数菌群で統計学的にもっと普及していた。
・重症敗血症や敗血症性ショックはpolymicrobial BSIではそれぞれ68.0%と50.6%に、monomicrobial BSIのそれぞれ73.9%と55.1%に存在。
・入院滞在期間と感染後の滞在期間は、複数菌BSI患者で有意に長かった。
・BSI発症におけるAPACHE IIスコア、高リスクの微生物、および敗血症性ショックは、関連死亡予測因子であったが、 しかしpolymicrobial BSIと不十分な経験的抗菌薬治療、は予測因子ではなかった。

・米国の小児病院、外来でCVC存在下で確認できたBSIのコホート症例対照研究。(Clin Infect Dis. 2008 Feb 1;46(3):387-94.)
・登録された200人の患者のうち、73人(37%)は複数菌BSIを持っていた。
・monomicrobial BSIは複数菌BSIより、より年長で(P=.002)、最近7日以内の病院から退院が多い(P =.01)。 複数菌BSIのオッズは年齢が>=3歳以上よりも<3歳の患者のために> 4倍  (オッズ比4.54、95%信頼区間1.68-12.29)
・最近の抗菌薬使用、最近のBSI、CVCの挿入期間、 基礎となる胃腸障害は、複数菌BSIのリスクと関連していなかった。
・より年少の子供たちは十分に彼らのカテーテルの無菌性を維持することが難しいせいかもしれない。また誤って口腔細菌叢がカテーテルハブを汚染したりそこが糞便汚染する可能性が高いかもしれない。



まとめ

・複数菌血流感染(BSI)は、血液培養から求められる少なくとも二つの異なる微生物の存在として定義され、すべてBSIエピソードの6%から32%までの範囲の頻度で、ますます報告されている。
・複数菌血流感染は、いくつかの研究において、院内感染に関連することが知られている
・複数菌血流感染で入院患者の死亡率は21%から63%で、monomicrobial感染症の人の約2倍の頻度
・複数菌血流感染患者のほとんどは、悪性腫瘍、好中球減少症、胃腸疾患、泌尿生殖器疾患、最近の外科手術、または中心静脈カテーテルの存在を含む疾患をベースにしている。
・下気道感染症は、複数の病原体に関連し、Lauderdaleらは、複数菌感染が4%から39%で市中肺炎患者に発生したことを報告。
・ 悪性腫瘍患者間で複数菌血流感染の別の大規模な研究では、76%が少なくとも一つのグラム陰性桿菌感染症の関与、および50%がグラム陽性菌が関与していた
・1種類の抗菌薬で複数菌感染に対して広域スペクトル薬が処方された場合であっても不十分である可能性がある(例:腸球菌にセファロスポリンなど)
・重症患者の単数菌と複数菌BSIの間の臨床的および微生物学的特徴の違いは十分に確立されていない、予後への影響は不明なままである。

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