感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

EULAR/ACRのリウマチ性多発筋痛症分類基準2012

2013-07-11 | 免疫
リウマチ性多発筋痛症(PMR)について講演をしなければならなくなったため、勉強中。 高齢者の疾患で特異的検査所見はなく、疼痛・こわばり症状は他のリウマチ性疾患でも類似した症候を示すため意外に診断は難しい。
2012年にEULARとACR共同で、PMRのための暫定分類基準が出版された。分類基準作成専門家のワーキンググループは、文献調査や基準選択プロセスを解説し、前向きコホート研究で基準を評価するために設計された。研究データに基づいて臨床基準を選択しスコアリングアルゴリズムを開発している。 また超音波所見を参考にすることで特異性をやや改善するためこの検査をおすすめしている。
注目すべきは、PMR特異的とされてきたステロイド応答性は、根拠に問題あり基準には含まれなかったこと。
この基準は検証保留中で暫定であること、診断目的でなく研究目的の分類基準であることに注意必要。



Ann Rheum Dis 2012;71:484-492
2012 provisional classification criteria for polymyalgia rheumatica: a European League Against Rheumatism/American College of Rheumatology collaborative initiative



要約

・PMR診断に特異的な検査法はなく炎症マーカーは非特異的で、臨床医はしばしば'診断的治療'としてのコルチコステロイド応答性に注意を向ける。
・近位の痛みやこわばり症候群は高齢者の他の多くのリウマチの炎症性疾患でのプレゼンテーションで発生する可能性がある
・PMRと診断された患者の約半数は、末梢性関節炎、RS3PE、手根管症候群などの、遠位の症状があるかもしれない。
・多発筋痛症状は、遅発性関節リウマチ(RA)や脊椎関節炎においては一般的であり、また、症例の10~30%で巨細胞性動脈炎と関連付けらる
・PMRは疾患経過が不均質で、フォローアップ中に別の診断へと変化しPMR管理を複雑にする。そのためPMRの過剰診断より過小診断を優先し、安全なアプローチがPMRに必要である。

・低用量コルチコステロイドへの応答性はPMRの主な特徴であると思われているが、これを立証する手堅い証拠はほとんどない。 以前の報告では、プレドニゾロン15mgの3週間を投与された後、55%が完全な反応を示したことが明らかになった。

・本研究の目的はEULAR/ ACRが、リウマチ性多発筋痛(PMR)分類基準を開発すること
・125人の新規発症PMR患者と169人のPMR模倣疾患の比較対象者との6ヶ月の前向きコホート研究で評価した。

・PMR被験者の80%以上に存在する基準項目は、症状の2週間またはより長い期間、両側の肩の痛み、とCRPおよび/またはESR上昇。
・PMRからRAを最高に差別する関連臨床的特徴は、 末梢滑膜炎、RFおよび/またはACPAの存在、と股関節の痛み/可動域制限。
・PMRから肩の疾患を最高に鑑別する特徴は、股関節痛/可動域制限、朝のこわばりと高いCRPおよび/またはESRだった。


・スコアリングアルゴリズムは、まず必要基準 :年齢50歳以上、両側の肩の痛み、CRPおよび/またはESR*異常。
・朝のこわばり> 45分(2点)、股関節痛/可動域制限(1点)、RFおよび/またはACPAの欠如(2点)、および末梢関節痛の不在(1点)、に基づく。
・スコア≥4 PMRからすべての比較対象を識別するための68%の感度と78%の特異性を持っていた。
特異性は、PMRから別の肩疾患の判別(88%)でより高く、 PMRからRAを識別するため(65%)より低かった。

・超音波を使用する場合、二つの追加基準がある:
少なくとも片方の肩の三角筋下滑液包炎、および/または二頭筋腱鞘炎、および/または後部または腋窩肩甲上腕の滑膜炎、少なくとも一方の股関節の滑膜炎および/または転子滑液包炎(1点);
両肩の三角筋下滑液包炎、上腕二頭筋腱鞘炎や肩甲上腕滑膜炎 (1点)。
・超音波の追加は、スコア≥5を増加させ、  感受性は66%へ、特異性は81%へと増した。


・PMRにおけるコルチコステロイドへの対応について
・コルチコステロイド漸減計画によりプレドニゾン用量は26週でベースラインで15mgから5 mgの減少。 4週間でコルチコステロイドへの完全応答は患者の71%に見られ、 その応答が26週でレスポンダの78%にて維持された。
・コルチコステロイドに反応したPMR被験者のみを使用してスコアリングアルゴリズムのリスクスコアモデルを再評価し、基準の各々のオッズ比は本質的に変わらず、また、特異性は同一で、感度はわずかな増加(0.5%)のみであった。


今後の研究課題数は、:
(1)PMRは、遅発性炎症性関節炎のスペクトルの一部として考慮されるべきか?
(2)末梢性滑膜炎のない多発筋痛症状は、RF陽性疾患で発生することはできるか?
(3)正常の急性期炎症反応患者でPMRを診断することはできるか?
(4)PMRでの早期導入の疾患修飾抗リウマチ薬の役割は何か?

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