自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

夢の五郎スクール。

2018年02月07日 11時54分50秒 | 自転車



ロケのため名古屋へ。
私だけ早めに入って、これまで成し遂げられなかったある「夢」を実行した。


筧五郎さんの「パーソナルスクール」だ。
3時間で2万円。
高いと思う方がほとんどだと思うが、
他のコーチたちに比べるとかなり安い。
そんな値段でも、有名コーチになると予約がほとんど取れないほど盛況だ。


実は私、パーソナルスクールは初めて。
これまでひたすら自己流でやってきた。
それが五郎教官の目にどう映るのか?
そして果たして、2万円の価値はあるのか?






トレーニングを行うのは、名古屋から20キロほど西にある
木曽岬。
「きそざき」と読みます。
どこまでも平坦な田園が続く、美しいところです。
ちなみに五郎さんは生まれてから今日までずっと
「きそみさき」と呼んでいたらしい。


コースは片道9kmのド平坦路をひたすら往復。
景色は延々と田園。
まさにローラー台の実走版だ。
まずは五郎さんがコース紹介しながら先頭で一本。
後ろに付いて220w。
たぶん前の五郎さんは260Wぐらいで走っている。
五郎さんは100kmほど朝練をしているので
スルスル上がっていくが、
私はアップしてないのでキツい。
なんとか9km先の自販機ポイントまで付いて行って給水。






往復18kmのうち、自販機があるのはここだけ。
まさに天の助け的な自販機だ。
あとでここが運命の場所になるとはつゆ知らず…



「それじゃあDさん、行ってみますか。
 どれぐらいで行けます?」

片道およそ14〜15分。
私は五郎さんに付いてくるので必死だったので、
250Wぐらいの感じがする。
と告げると、「じゃあ260Wで行きましょうか」と。


「3・2・1・ゴ!」


ポンポンと気持ちよい五郎さんの慣れた掛け声に背中を押され、スタート。
180W。220W。230W。ゆっくりと上げる。
ペダリングの「あら」を見てもらうためのライドなので、
普段通りに。
メーターを見ずに、体との対話で「これなら行ける」というパワーを探る。
……ここだ。
このパワーなら「10分は持つ」。
私、15分ぐらいの走りをしたことがないので、
10分走の感覚でとりあえずパワーを探ったわけです。
メーターを見る。
ありゃ。315W。
これはおそらく五郎さん効果だ。
興奮していると瞬間的にパワーは出る。
そう判断して、300Wで進むことに。


「五郎さん、オールアウトしてもいい?」
「もちろん!」


よし。15分で使い切ってやる。
300Wをキープ。
よだれが垂れてくる。
今日は飲み込んだり、拭いたりしないことにする。
よだれを飲み込むと、その瞬間息が止まる。
その1秒の酸欠は、後に響く。
かと言って、追い込みすぎない。
景色を見たり、対向車、後車を絶えず確認。
むむ、しょっぱいぞ。
これはどうやら鼻水も垂れてきた。
でも、放っておく。
寒すぎて感覚がないので、違和感も特にないから大丈夫。


4km。
かなりキツくなってきた。
これは完全に10分しか持たない。
ゴールのはるか手前でオールアウトしてしまう。
パワーを下げる。
290W。


6km。
悶絶。
向かい風が猛烈で進まない。
10分を過ぎた。
こんな時こそ、上体をブラさない。
ペダリングを丁寧に。
息はしっかりと「吐く」。
しかもたまに「口すぼめ呼吸」をする。
チャリダーで習ったことを総動員する。
パワーが下がると、後ろでギヤチェンジの音がする。
ああ、五郎さんがギヤを軽くした音だ。
気合いを入れ直して、またギヤを一枚重くする。
後ろからもギヤを重くする音が聞こえる。


8km。
よだれ、垂れっぱなし。
鼻水、出っぱなし。
いつ終わるんだ、ゴールはどこなんだ?

と、五郎さんが「あと1分!」のコール。
…あと1分もあるのか。
五郎さんはゴールまでの距離を見て、だいたいの時間が分かるのだ。
しかし心拍も脚も限界だ。
タレたい。
もうタレたい。
もうダメ〜!と叫んでタレたい!
しかしここでタレれば、残りの1分は1分半、2分となって
ゴールが遠のいていく。
そんな私を後ろで五郎さんが見てる。
「最後タレたね」と言われるだろう。
「タレるぐらいなら最初から飛ばしちゃダメだよ」と言われるに違いない。
そんなの嫌だ。


どうすればいい?
何をすれば、ひたすら下がっていくパワーを食い止められる?
域値のギリギリ下を探る。
255W。これなら数分は走れそうだ。
するとここで、初めての経験が訪れた。
脚が軽くなって、息が整っていく。
これならラストもう一発行けるかも。


「あと30秒!」
五郎さんのコールが背中を押す。
よし、行ける!
ギヤを1枚入れる。
320W。
もう一枚入れる。
390W。
あかん、ダメだった。
350Wでゴール。



撮影:五郎さん


14分20秒。
平均291W。


五郎さんが「お見事!」と褒めてくれたので、
「チャリダー全部見てますから」
と返しておいた。



そのあと、生まれてこのかた、こんなに褒められたことはないぞ、
というくらい褒めてもらった。
ケイデンスを110ぐらいをキープできたこと。
最後にもう一回上げられたこと。
ペダリングが良いこと。
頑張った甲斐があったものだ。


改善点の提案もたくさんもらった。
右足のかかとが左よりも下がること。
そのせいで右足のストロークに時間がかかること。
サドルの前側を3ミリ下げること。
上体が少し窮屈なので首の後ろが凝ること。
ステムを1cm長くすること。
ツールドおきなわに出ること。
チーム◯◯(まだ内緒)に入ること。
を提案してくれた。



結局この調子で全力4本。
291W、270W、265W、252W。
順調に脚はスカスカになって終了。
たぶん去年のベストよりもFTP(1時間出せる最大パワー。戦闘力みたいなもの)は高くなっていると思います。
普段一人では出せないタイムやパワーが出せる。
そのことだけでも、財産と言えるほどの経験と自信になる。
この3時間には、2万円をはるかに超える価値があった。




さて。話はこれで終わらなかった。
走り終えて、近くの温泉へ。
受付でお金を払おうとしたら、財布がない。
車に戻っても、ない。
記憶を辿っていく。
最後に見たのは…あの自販機!
缶コーヒーを座って飲んだ、あの場所か。
あまりに疲れてベロベロだったからなあ。


「あの場所」までの9kmを飛ばす。
何せあの場所で財布を出してから2時間も経っている。
やきもきする私を気遣って、五郎さんが
「ある時はあるし、なければ無い。それだけですよ」と。
さすが修羅場をくぐってきた男は落ち着きが違う。



「あの場所」が見えてきた。
怖い場所に近づくようにスローダウンしながら、
五郎さんと2人で目をこらす。
「おお、あるじゃん!」
先に見つけたのは五郎さんだった。





2時間、同じ場所に置かれていた。
もう少し自販機に近かったら、ダメだったかもしれない。
「五郎さん、お手間とらせてすいません」
「いやいや、Dさん持ってるね、やっぱり。最後まで盛り上がったね!」
数々の修羅場を経験してきた男は
言うことが違う。



その後、色々と撮影やら相談やらをして長い1日が終了。
明日へと続く★