□作品オフィシャルサイト 「人生に乾杯!」
□監督 ガーボル・ロホニ
□キャスト エミル・ケレシュ、テリ・フェルディ、ユディト・シェル、ゾルターン・シュミエド
■鑑賞日 7月26日(日)
■劇場 チネチッタ
■cyazの満足度 ★★★★(5★満点、☆は0.5)
<感想>
淡々と進んでいくこの物語には、派手なアクションや高度なCGや特殊SFXもなく、そうかと言ってバカ高いギャラを興収に関係なく持ち逃げする有名な役者もいない。 だけど無駄な飾りを一切切り落とした、それでにいて生身の、永らく人生を重ねて来た二人の老夫婦の現実と非現実と、更にささやかな夢が鏤められたハート・ウォーミングで且つシュールな映画だ。
そしてそこには長寿国日本における、これからの高齢者社会に起こり得る問題をも提起しているような映画だった。 ハンガリー映画というところもいたって珍しいところだ。
偉そうに言うわけではないけれど、普通の方より少しは多く映画を観てきた僕が観たかった映画だが、客席にはおそらくTVか何かのオススメ映画として取上げられたのだろうか、非常に年齢層の高い、シネコンの階段を上がるにも介助がいる老人たちの姿が多かった。
余談になるが、シネコンの構造上、段差があり前の人の頭が邪魔にならないメリットがある反面、年老いた方はあの段差はかなりのハンディとなり辛いことだろうと思う。
つい最近、僕自身が足の手術をして実際に体感したばかりだから、尚更だと思える。 自分が映画が好きで、おそらく老いても映画通いをするだろう将来、何かいい手立てはないのかと、この映画とは別に感じたところだ。 シートの番号や番号表ももっと大きく表示すべきだと思う。 何ら工夫と努力をしないシネコン・スタッフも、自分が年老いたときの姿を想像できないだろうが、擬似老人化してもう一度構造自体を考えるべきところに来ているのではないだろうか・・・
余談はともかく、衝撃的な出会い以来、すでにエミルは81歳で腰痛持ち、ヘディは70歳で糖尿病でインシュリンを欠かせない。 そんな二人だが年金だけではとても暮らしてはいけず、家賃も滞納して督促を受け、最後には強制執行にまで。 そこで、ヘディが大切にしていたダイヤのイヤリングまで渡さざるをえなくなってしまう。
それに端を発し、エミルはヘディの大切なイヤリングを奪い返すために郵便局に強盗に入る。 それも紳士的に(笑) やがてヘディも加わり、手に手を取ってエミルの愛車のチャイカを操り(このあたりは車に拘る姿はイーストウッドの『グラン・トリノ』のようだったが)、次々と紳士的(笑)に強盗を重ねていく。
二人のおぼつかないけど、決して誰も傷つけない強盗の旅は、何故か微妙に上手くいってしまうから面白い。 更に人質にしようとは思ってもみない女刑事が結果的に人質に(笑)。 この事件をきっかけに二人の逃避行を、いつのまにか同じ境遇にいる人たちが共鳴するかのように二人を擁護し出す。
こんな老いた二人の逃避行は危なっかしいけど滑稽だ。 そしてそのテイストは『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』、『バンディッツ』(共にドイツ映画)や古くは『テルマ&ルイーズ』にも似ている。
そして、捕まった女刑事も、二人のことを犯罪者は犯罪者だが、共に行動しているうちに、長く人生を送ってきた二人の優しさやおばあちゃんの知恵袋に、頑なな心を解きほぐされて・・・。
妻ヘディ役のテリ・フェルディは老いてはいるが、非常にエレガントで魅力的な女性に感じた。 逃走の途中で何十年ぶりにドレスアップしてホテルで食事をしている横顔なんて本当にチャーミングだった。 HPを読んでみるとハンガリーの大女優だとか。 思わず納得したりして(笑)
物語の中にはしっかり「賢者の石」的要素も含まれており、老いてなお相手を思う気持ちは感動ものだ。 特に彼女のイヤリングを取り戻すことは、二人の愛の証と生きて来た人生そのものを取り返す大切な二人の絆としての象徴だったのかもしれない。
あのヘディには少し不似合いの熊のぬいぐるみも、ラストシーンの大事なオチに使われことになるのだが、地味ながら、爽やかで温かないそのラストシーンに思わず涙が頬を伝わった。 ここ最近、こういう爽やかな涙を流したことがなかったなぁ(笑)
きっとエミルとヘディは仲良く海を見たさ~
ボニー&クライドがもし生き延びていれば、と思われるテーマでしたね。
高齢者だから大人しくしていれば良いと思っている方達には
見ていただきたい映画だと思います。
サミュエル・ウルマンの「青春」に言う様に
”青春とは人生の有る期間を言うのではなく、心の様相を
言うのだ。
年を重ねただけで人は老いない、理想を失うときに初めて
老いが来る。”
人生いくつになっても自分の理想を失わずにいれば「青春」なのだ、と思いました。
いい映画でしたね。
悲しみの涙ではなく、晴れやかな気分になる涙は大好きです。
きっとすてきな海を見ることが出来たのだろうと思いたいですネ。
>ボニー&クライドがもし生き延びていれば、と思われるテーマでしたね。
あそこまでカッコ良くなかったですが(笑)、でもほのぼのさせられました^^
>高齢者だから大人しくしていれば良いと思っている方達には見ていただきたい映画だと思います。
マネして郵便局や銀行に強盗に入られても困りますが(笑)
サミュエル・ウルマンの「青春」に言う様に
”青春とは人生の有る期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ。 年を重ねただけで人は老いない、理想を失うときに初めて老いが来る。”
まさにそのとおりだと思いますね!
>人生いくつになっても自分の理想を失わずにいれば「青春」なのだ、と思いました。
日本人は老いてからの生活スタイルを考え直すべきですね^^
>いい映画でしたね。 悲しみの涙ではなく、晴れやかな気分になる涙は大好きです。
ぬいぐるみは可哀想でしたが(笑)、でもハートウォーミングな映画でした^^
>きっとすてきな海を見ることが出来たのだろうと思いたいですネ。
そうですね!
きっと二人で見れたのだと思います^^
年金がもらえなくなるなんて、そう遠くない将来のことのような。。。
足を手術なさったのですか? 大丈夫ですか?
シネコンも、表示などはユニバーサルデザインとは言えないですよね。改善してほしいです。
アーッ ネタバレ!!(笑)
思うように動かない体でも、動くところを使って(頭とかネ)しっかり生きていかないといけなかったんだよね。社会が悪いとかそんな事じゃなくて、何かをやる意思というものが確固たる物だったら(あの二人の場合は幸せになるという事だったのでは?)誰にも邪魔は出来ないんですね。
最後で申し訳ありませんがトラックバックありがとうございました。
>社会が悪いとかそんな事じゃなくて、何かをやる意思というものが確固たる物だったら(あの二人の場合は幸せになるという事だったのでは?)誰にも邪魔は出来ないんですね。
そういうことですね^^
あの年代になって、あの“勇気”と行動が出せるかどうか? 犯罪とは別なところで(笑)
なんつ~か切ないけど、とてもホロリとしちゃう
お話でしたね。物騒だけど、頑張るお年寄りを
見ていると元気をもらえちゃうからいいなぁ~って
思っちゃいます。
>年金がもらえなくなるなんて、そう遠くない将来のことのような。。。
確かにそうですね~
銀行強盗の準備でもしますかね和(笑)
>足を手術なさったのですか? 大丈夫ですか?
もう半年も前の話ですが(汗)
今はもう大丈夫ですよ^^
>きっと2人は仲良く海を見たんだよね~。
そう信じたいですね^^
>なんつ~か切ないけど、とてもホロリとしちゃうお話でしたね。物騒だけど、頑張るお年寄りを見ていると元気をもらえちゃうからいいなぁ~って思っちゃいます。
淡々としているけど、人生の先輩としての懐の深さを感じた映画