「ホリデー・イン」/坂木司

「ホリデー・イン」/坂木司（文藝春秋）

  

 

２００７年の「ワーキング・ホリデー」、２０１２年の「ウィンター・ホリデー」の、
これはこのシリーズのスピンアウト作品（短編集）だ。
２作に登場した大和と進に関わる近しい人たちのアナザー・ストーロー。
ジャスミン、大東、雪夜、ナナ、進の５人を主人公にした６編のショートストーリー。

「ジャスミンの部屋」
男を拾い癖のある（笑）ジャスミンが出会った謎の中年男の正体は？

　「大東の彼女」
ノー天気なフリーターの大東の家族には実は重い過去があった・・・。

　「雪夜の朝」
ナンバーワン・ホストの雪夜にだってムカつく相手はいるんだ。

　「ナナの好きなくちびる」
お嬢様ナナがクラブ・ジャスミンにはまった理由とは。
　
「前へ、進」
まだ見ぬ父を探し当てた小学生の進の目の前には・・・。

　「ジャスミンの残像」
ヤンキーだった大和（ヤマト）とジャスミンの出会いの瞬間。

そもそもこのシリーズは、主人公のヤマトこと沖田大和が働くホストクラブに、
ある夏、突然「初めまして、お父さん」と一人の少年がやって来たことから
始まった。　ずっと父親は交通事故で死んだと母に教えられていたものの、
学校の授業で母子手帳を見る必要があり、そこに挟まれていた一枚の写真から、
ヤマトが父親だとつきとめ会いに来たのだという。　その少年が当時小学５年生
だった進で、そんな二人の姿を見て、ヤマトにホストを辞めさせ、宅配便会社の
仕事を紹介したのがジャスミンだった。

ここには、今までの作品で描かれていなかったジャスミンとヤマトの
出会いや、ヤマトと進の周辺にいるヤマトの仕事仲間の大東の話や、
ジャスミンの店のナンバーワン・ホスト・雪夜やナナの話、そして進が
ヤマトの前に現れるまでの詳細が綴られている。

ヤマトと進の親子関係のみならず、彼らを取り巻くそれぞれが
複雑な事情を抱え、厄介な感情を持て余すこともある。
だけど、二人を軸にして　人と関わる面倒臭さを乗り越え、
お互いに口から出る言葉とは裏腹に、二人の親子と関わることで、
新たな喜びや楽しみが共有できたことに感謝している。

別角度で描かれるそれぞれの姿や悩みや葛藤。
こういう側面からのフォローって、シリーズを読了していた人には
とてもありがたい、そして少し懐かしいテイストだ。
シリーズ２作と間を空けずに読みたかった本だなぁ（笑）
シリーズを読まれた方はぜひ～