仕事柄、打ち合わせや取材で外にでる機会も週に数回ある。
この日も午前中に打ち合わせがあり
どこかでお昼ごはんを食べていくことにした。
久しぶりに「さぼうる」のカレーが食べたくなって
神保町で地下鉄をおりた。
駅からすぐ裏通りにある「さぼうる」
食事は手前、喫茶は隣の「さぼうる2」へ。
~カランカラン~
「こんにちはー、ひとりなんですけど」
「すみませんが満席です」
「じゃあ少し待ちます」
私の後ろにもすぐに一人並んだ。
さすが人気の老舗喫茶店。
それでも回転が速い時間なので、1分もたたずに2人の客が出てきた。
「お待ちのお客さま、相席でも良ければどうぞ」
「はい」
やや薄暗い、地下に案内された。
秘密基地でもありそうな、ランプの灯る地下室。
予想通りといえば予想どおり、後ろに一人で並んでいた人と
4人がけのテーブルに相席になった。
(しまった。ちょっと、気まずい…)
向かい側に座った男性は、見た目は私より若い感じで
やっぱり少し気まずそうに本を開いている。
「ご注文は?」
「あ、ビーフカレーをお願いします」
「僕もビーフカレーをお願いします」
また、沈黙がつづく。
私も本を開いたものの、全然落ち着かない。
まわりから見たら友達かカップルに見えるだろうに。
普通、相席になった人とは話すのかなあ。
それとも同じビーフカレーを二人黙々と食べるのかなあ。
などと考えていたら、この状況がコントみたいに思えてきて
なんだかワクワクしてきた。
コントだったら、話さなければ始まらない。
沈黙のまま食べるなんて気まずいだけ。
でも、もし会話になったら、どんな話になるんだろう?
程なくして、2つのビーフカレーが運ばれてきた。
私は、熱いカレーを一口食べたところで
ちょっと勇気を出してみた。
「福神漬けどうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
顔を上げた表情から、相手も気まずく感じていたのがわかった。
それで、もう一歩踏み出してみることにした。
会話が続かなければ、やめればいいし。
「よくここへは来るんですか?」
「いえ、初めて来たんです。前から気になってたんですが、
母に頼まれた本を買ってきた帰りにちょうど通りかかったんで」
青年は近くの大学の学生ということ、千葉から1時間半かけて通っていること
ラーメンが好きなこと、おすすめのラーメン屋のことなどを話し、
私は近くの小さな出版社で働いていて、カレーが好きだということを話した。
「カレーは、いつから好きなんですか?」
「学生時代にバイトでカレー屋にいたことがあって」
「バイトまでカレーですか(笑)!」
カレーを食べ終わるころにはすっかり打ち解けていた。
名前も知らないひとと、こんなに話したのは久しぶりだった。
「じゃあ、僕は授業があるので、お先にしつれいします。
あの、話しかけてくれてとても楽しかったです。ありがとうございました!
また、もし会えたら!」
またもし会えたら。青年は満面の笑みで手を振った。
私も手を振って見送った。
一歩踏み出してみて良かったなあ。
「さぼうる」で、ちょっと楽しいひとときだった。
(写真/神保町「さぼうる」/ビーフカレー/650円)
この日も午前中に打ち合わせがあり
どこかでお昼ごはんを食べていくことにした。
久しぶりに「さぼうる」のカレーが食べたくなって
神保町で地下鉄をおりた。
駅からすぐ裏通りにある「さぼうる」
食事は手前、喫茶は隣の「さぼうる2」へ。
~カランカラン~
「こんにちはー、ひとりなんですけど」
「すみませんが満席です」
「じゃあ少し待ちます」
私の後ろにもすぐに一人並んだ。
さすが人気の老舗喫茶店。
それでも回転が速い時間なので、1分もたたずに2人の客が出てきた。
「お待ちのお客さま、相席でも良ければどうぞ」
「はい」
やや薄暗い、地下に案内された。
秘密基地でもありそうな、ランプの灯る地下室。
予想通りといえば予想どおり、後ろに一人で並んでいた人と
4人がけのテーブルに相席になった。
(しまった。ちょっと、気まずい…)
向かい側に座った男性は、見た目は私より若い感じで
やっぱり少し気まずそうに本を開いている。
「ご注文は?」
「あ、ビーフカレーをお願いします」
「僕もビーフカレーをお願いします」
また、沈黙がつづく。
私も本を開いたものの、全然落ち着かない。
まわりから見たら友達かカップルに見えるだろうに。
普通、相席になった人とは話すのかなあ。
それとも同じビーフカレーを二人黙々と食べるのかなあ。
などと考えていたら、この状況がコントみたいに思えてきて
なんだかワクワクしてきた。
コントだったら、話さなければ始まらない。
沈黙のまま食べるなんて気まずいだけ。
でも、もし会話になったら、どんな話になるんだろう?
程なくして、2つのビーフカレーが運ばれてきた。
私は、熱いカレーを一口食べたところで
ちょっと勇気を出してみた。
「福神漬けどうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
顔を上げた表情から、相手も気まずく感じていたのがわかった。
それで、もう一歩踏み出してみることにした。
会話が続かなければ、やめればいいし。
「よくここへは来るんですか?」
「いえ、初めて来たんです。前から気になってたんですが、
母に頼まれた本を買ってきた帰りにちょうど通りかかったんで」
青年は近くの大学の学生ということ、千葉から1時間半かけて通っていること
ラーメンが好きなこと、おすすめのラーメン屋のことなどを話し、
私は近くの小さな出版社で働いていて、カレーが好きだということを話した。
「カレーは、いつから好きなんですか?」
「学生時代にバイトでカレー屋にいたことがあって」
「バイトまでカレーですか(笑)!」
カレーを食べ終わるころにはすっかり打ち解けていた。
名前も知らないひとと、こんなに話したのは久しぶりだった。
「じゃあ、僕は授業があるので、お先にしつれいします。
あの、話しかけてくれてとても楽しかったです。ありがとうございました!
また、もし会えたら!」
またもし会えたら。青年は満面の笑みで手を振った。
私も手を振って見送った。
一歩踏み出してみて良かったなあ。
「さぼうる」で、ちょっと楽しいひとときだった。
(写真/神保町「さぼうる」/ビーフカレー/650円)