Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

Club World Cup 2007 Final

2007-12-20 | Weblog
3回目を迎えた FIFA Club World Cup の Final は大方の予想通り、南米代表の Boca Juniors と欧州王者の AC Milan との間で行われた。
2003年の TOYOTA CUP 以来4年振りの顔合わせにマスコミはその時のBoca Juniors のPK勝を引き合いに出し “ AC Milan が借りを還すか?”との“リベンジ劇”を煽る。きっと日本を含めた(日本だけ?)多くのマスコミからこの様な質問されて閉口していると言うのが選手を含めた Milan 関係者の本音かもしれない。 
AC Milan のスタメンは準決勝の浦和 REDS 戦でサイドバックを担ったヤンクロブスキとオッドが外れ替わりにマルディーニが右に左にボネーラがそれぞれサイドバックで起用され浦和戦で途中出場のインザーギがジラルディーニョに替ってワントップを張った。
Boca Juniors は準決勝の Etoil Sahel 戦にボランチで起用されたバルガスが外され、そのポジションには中盤の右サイドで起用されたバタグリアが入り、 AC Milan 戦の右サイドにはゴンザレスがスタメン入りした。 
AC Milan アンチェロッティ監督のマルディーニ、ジラルディーニョのスタメン起用はこの大会の“決勝戦仕様”と対戦相手のBoca Juniors より“休養日”が1日短かった事とは無関係ではないだろう。この試合でも多くの人はカカーに注目した様だが私は“ベテラン”インザーギに注目をした。今季セリエA では AC Milan は13試合を消化してインザーギ自身のスタメン出場は3試合のみ。途中出場を含めた出場試合合計8試合を通じて得点はまだない。ただ UEFA Champions League ではスタメン3試合を含め4試合に出場し4ゴールを決めている。
Boca のミゲル・アンヘル・ルッソ監督がバタグリアをボランチで起用したのはカカー対策とEtoil Sahel 戦で起用されたバルガスのパフォーマンスを観ての事だろう。Boca Juniors ではバタグリアだけが4年前の AC Milan 戦に出場経験があり、 Milan では GK ジダをはじめ、ネスタ、マルディーニ、セードルフ、ガットゥーゾ、ピルロ、カカーの7人がその時のBoca Juniors 戦のスタメン。そしてアンブロジーニ、インザーギは途中交代出場であった。その試合での2トップはシェフチェンコとトマソンであった。

持ち味を出して同点で終えた前半

開始早々相手ゴールに迫ったのは Boca Juniors 。1分には トップ下バネガのCKからボネーラ、セードルフの間をぬうようにパラシオがヘッドを放つ。2分にはFKからパラシオが右サイドを上がったところを Milan の CB カラーゼがボールを奪い攻撃に転じるが今度はセードルフがボールを奪われ、バネガに繋がれる。バネガがボールを受けた自軍ゴール前では相手3人に囲まれるが上手くすり抜けドリブルで前線へ。バネガからのフィードは一旦はカラーゼに跳ね返されるがそこから攻撃に転じたマルディーニからゴンザレスがボールを奪い再びバネガへ。そしてバネガのドリブル突破をガットゥーゾがチェックに入る。 そこから前線に繋がれたボールはピルロに渡りゴール前へロブを言えたところを今度はCBのパレッタがカット。一連の攻守の切り替えの早さに思わず唸らされる。5分にインザーギがこの試合68,232人の観衆を最初に沸かせる。右からパレッタを振り切ってシュートを放ち、対角線上にゴロで撃たれたシュートは惜しくもゴールポストの左側を通過して行った。インザーギがシュートを放てば今度はマルディーニが Boca 右サイドバックのイバーラへ猛然とタックルを入れ、これを機にマルディーニが左サイドの高い位置に上がりチャンスを作る。7分にはカカーとのパス交換で右サイドを上がったマルディーニが中のインザーギにクロスを入れるがパレッタがヘッドでクリアー。8分にもマルディーニが起点となりインザーギに繋がれる。そこにBoca CB のマイタナがマークに入り、インザーギは一旦カカーに戻すとカカーは Boca DF 陣5人に囲まれながらもボールをキープしセードルフに。更にピルロ、ガットゥーゾそしてボネーラと右サイドに繋がれボネーラはそのままダイレクトで前方のカカーに。カカーはドリブルで上がりゴール前で待つインザーギにクロスを送るが今度はマイタナがヘッドでクリアー。さすがにカカーがボールを持つと複数のBoca 選手が囲む。ブラジルのエース、カカーをアルゼンチン勢が止めると言う構図だ。 マルディーニが前に出て来てから攻撃に転じられない Boca Juniors は11分バネガのボールキープから左サイドのガルドソに渡る。ガルドソのクロスは中で競り合うパレルモとマルディーニの頭上を越し右サイドを走り込んだゴンザレスがダイレクトでファーサイドにシュートを放つがポストの左に。 Boca としては Milan DFラインが上がった時の裏をとりたいところだが、 Milan DFの戻りが速いので縦パス1本で大きく前に出れなかった。
19分から試合は更に動いて行く。右サイドにいたカカーにボールが入るとパタグリアがしつこくマークに入るとカカーはボネーラにいったん預け、ポジションを変えても一度右サイドライン沿いでボールを受けライン沿いにドリブルで上がりピルロに。ピルロは逆サイドのインザーギに送るとインザーギはシュート気味に右サイドのカカーへ。カカーのシュートはパレッタのスライディングに阻まれる。その直後今度は Boca パラシオがドリブルで左サイドを上がりクロスを入れる。そのクロスは戻ったアンブロシーニに当たるがこぼれ球をパレルモがリフティングをしながら後ろに下がり放ったショットはジダが左に倒れこんでキャッチ。その直後のジダのゴールキックをインザーギがヘッドでカカーに落としカカーは中央をドリブルで上がりドリブルシュート。一旦はマイタナの足に当たるがボールはカカーの前にこぼれ、カカーが右に送ったボールはマークに入ったモレルの足下を抜けてカカーがドリブル突破を試みた時にその前を横切る様に右サイドへ走り込んだインザーギに。フリーでカカーからのパスを受けたインザーギは難なく Bocaゴールネットを揺さぶり AC Milan が先制点を挙げた。



いつもながらゴールが決まる時はシンプルに決まるものだけどこう言う舞台でゴールを決めるインザーギもさすがだ。そしてカカーも見事なドリブル突破であった。しかしその1分後、 Boca が同点においつく。左サイドを上がったバネガからガルドソに送られるがボネーラがカットしてコーナーへ。ガルドソのショートコーナーを受けた左サイドバックのモレルがゴール前にクロスを上げるとパラシオがジダの守る Milan ゴールネットにヘッドを突き刺した。

   

このパラシオの動きは正に“南米らしい”振舞い。ガルドソがショートコーナーを出しても“我関せず”とばかりにMilan ゴールに背を向け、モレルがクロスを入れる瞬間にネスタ、ボネーラの間にさっと入り全くのフリーの状態でヘッドを放った。失点後のネスタ、ボネーラの唖然とした表情にこの試合を Buenos Airs のパブリックビューイングで観戦していた Boca サポーター達はさぞかし“してやったり”と思った事であろう。何しろワールドクラスのDFを欺いたのだから。
すぐさま同点にされた Milan はアンブロジーニが左へ、ボネーラが右に大きく開いた位置に張り出し、ガットゥーゾが積極的にドルブルで上がる様に。25分にはガットゥーゾのドリブル突破からゴール前のセードルフに送られるが僅かに合わない。しかし26分にはガットゥーゾのドリブルがカルドソに奪われクロスを上げられゴンザレスにヘッドを撃たれるがゴールには至らなかった。この時間帯からカカーのドリブル突破も顕著になるが、こちらは簡単には止まらない。28分にはセードルフからボールを受けたカカーがドリブルシュート。これはパレッタがブロック。30分にはマルディーニからボールを受けたカカーのドルブルからチャンスを掴み最後は右サイドのセードルフからのダイレクトパスにインザーギがシュート体勢に入るがパレッタと交錯し転倒。インザーギはレフリーにPKをアピールするがノ-ホイッスル。Milan DF 陣の押し上げから常に数的優位を作られるので Boca は防戦を強いられたが31分イバーラが入れたスローインを受けたゴンザレスが右サイドからクロスを入れる。中にいたネスタはパラシオの動きに惑わされそのクロスは左サイドのガルドソに。フリーのガルドソは胸でワントラップしショット放つがボネーラがスライディングで何とかブロック。マルディーニの裏の右サイドのスペースをゴンザレス、イバーラがドリブルで上がってチャンスを伺い、左サイドにはパラシオが流れてボールを中に入れる。パラシオは36分にガットゥーゾ、ボネーラをかわしてクロスを入れるなどこの日の Boca の出場選手の中では最高のパフォーマンスを披露していた。あとはパレルモに良いボールが入れば Boca も勝機はあったのだけど….. 結局前半はそのまま終わった。
後半、更にカカーのドリブルがさく裂するのか、 Boca が“南米らしさ”を披露し主導権を奪い返すのか、試合を面白くするためには Boca が先に2点目を上げる事を期待したのだが…..

カカー、ドリブル炸裂 Boca を突き放す 

しかし後半に入って相手ゴール前に迫ったのは Milan 。開始早々にはセードルフからのダイレクトパスを受けたカカーがドリブルシュート。これはマイタナがブロックでコーナーに逃げる。そのアンブロジーニが蹴ったCKはGKカランタがキャッチ。49分には右サイドを上ったセードルフにカルドッソ、モレルがチェックに入るが結局モレルのファールでしか止められず FK を献上する。そのFKをピルロが中に入れ、マイダナともつれたアンブロシーニにあたりそのこぼれダマをネスタが蹴りこんであっさりとMilan が追加点を挙げた。Boca にとっては立ち上がり5分。いわゆる“危険時間帯”における手痛い失点であった。しかし早い時間に同点に追いつけば休養日の1日長い Boca が優位に立てる。58分には右サイドをパレッタが上り左サイドから切れ込んだインザーラに渡りアンブロシーニを振り切り放ったシュートはポストを直撃。これが入っていれば試合の結果は異なったものになっていただろう。
60分にはカカーがスピードに乗った見事なドリブルで中央やや左を突破しマイダナを振り切りそのままシュート。GKカランタは一旦体に当てたがそのままボールはゴールラインを割り貴重な追加点がカカーの個人技から生まれた。

   

   

65分にはガットゥーゾがお役目御免?でエメルソンと替わってベンチに退く。交代時に何度か対峙したバネガと握手を交わすとこと少し余裕の交代か?
Boca のルッソ監督は67分にゴンザレスを下げてレディマスを入れ68分にはカルドソを下げてグラシアンを投入するが、カルドソは残しておいた方が良くなかったか? 70分にはパラシオがネスタをかわしてシュートを放つがアンブロシーニがブロック。カカーの個人技もハイレベルだが Boca にもパラシオがいると地元サポーター達は思っていただろう。ゴール前でパラシオにつなげば彼が何とかしてくれると願っていただろうが71分に試合を決定付ける4点目が入る。右サイドを上ったセードルフがカカーに、DFマイタナとバタグリアをひきつけて更に左でフリーのインザーギへ。そのままインザーギのシュートはゴールラインを割りミラニスタ達に“クラブ世界一”を確信させる。

   

Boca はカカーとセードルフの二人をマークし切れておらず、トップ下のバネガが最前線のパラシオ、パレルモと分断され攻守に渡って後手を踏む。
73分にはまたもカカーが高速ドリブルで Boca ゴールに迫り最後はパレッタがファールでストップ。しかしこの位置がペナルティーエリアのすぐ外のしかもま正面。ここで中村俊輔がいればとは思わないか? シードルフが壁の下を狙うが惜しくもポストの左へ外れる。76分には大歓声に送られてインザーギが下がりカフーが投入される。カフーは2003年の TOYOTA CUP のスタメンの一人。2002年のワールドカップ決勝戦ではキャプテンマークを巻いてプレーし、試合終了後の表彰式ではワールドカップを高々と掲げたのがここ横浜競技場。その決勝戦では逆にGKジダそしてカカーが控えの選手としてベンチにいた。

    

77分にはカラーゼの左足がドリブルで上ったグラシアンの右足首にまともに入りカラーゼは一発退場。しかしこれを故意のファールと取られてはカラーゼも少し気の毒か?何度もグラシアンの足を気遣いながらピッチを去るグルジア代表のカラーゼが印象的。80年代に旧ソ連邦代表で中心選手でもあったチバーゼ、シェンゲリアはグルジア共和国のディナモ=トビリシの選手であった。今日本代表がグルジアと試合をすればどういう結果になるだろう?カラーゼの退場で Milan DF ラインは右からカフー、マルディーニ、ネスタそしてボネーラとポジションを少し変える。
79分にはCKから81分にはゴール正面からようやく Boca のエース、パレルモが連続してシュートを撃つ。34歳のパレルモは2001年ビジャレアルに所属していたときのコパ・デルレイの試合でゴールを祝っていると興奮したファンが彼に押し寄せ策と壁が崩れその下敷きとなり全治半年の重傷を負ったばかりか2002年のワールドカップ出場を棒に振った悲しい過去がある。それだけに Boca で世界一の称号をと思っていたかもしれない。そのビジャレアルから11月26日に Boca Juniors に移籍してきたリケルメは結局 FIFA Club World Cup への登録が認められず苦戦を強いられる事に。
83分に右サイドのセードルフからのスルーを受けたカフーが入れたクロスをカカーが頭であわすが惜しくもはずれ、そのGKから Boca はボールを繋ぎ Milan ゴール前に迫り CK を得る。モレルが蹴った右CKをパラシオがワントラップしてうそ路に戻すと交代出場のグラシアンがミドルを放つ。GKジダが弾いたところをレディスマが撃ちブロックに入ったアンブロジーに当たりそのまま Milan ゴールを割り1点を還した。

   
残り時間はあと5分。一人少ない Milan 相手にもうあと2点…という雰囲気でも無かった。88分にはカカーにタックルに入ったレディスマが一発退場。これは先ほどのカラーゼと異なり明らかに….と言う匂いもした。そしてロスタイム3分が過ぎようとし、ミラニスタ達のカウントダウンの中ホイッスルが鳴り AC Milan の17年ぶり“クラブ世界一”の瞬間を迎えた。
17年ぶり、あのライカールとの活躍で勝って以来か?欧州のクラブタイトルを随分勝ち取り続けていた様に感じていたので少し以外に思った。1993年にサンパウロ、翌年にはベレス・サルスフィエルドそして2003年にはボカ・ジュニオルズと南米勢の軍門に降っていたのだった。最初に TOYOTA CUP を勝ち取った1989年大会からロッソネロのユニフォームを着続けていたマルディーニの偉大さを改めて感じた。

今年は12月13日が準決勝、決勝戦が12月16日と我が夫婦の誕生日とぴったりと重なってしまったので競技場に観戦に行けなかった。来年もこの大会は日本開催が決まっているので、その時も日本のクラブチームがアジア王者として出場出来て、日程がうまく合う事をこと祈るよ………