母の肖像

Maman, tu ne me manques pas.

自己評価の低さと罪悪感ー傾向と対策

2017年05月31日 | 記憶の整理 classement
母が注入した毒のなかで最もやっかいなのが、自己評価の低さと罪悪感だ。

自己評価が低いとは:
自分を嫌悪していること。醜い、能力がない、性格が悪い、この世で最低の人間である。存在する意味がない、価値もないと考える。自分を大切にするとか、自分を信じるとか、ことばの意味はわかるが、それが実際にどういうことなのかわからない。

罪悪感とは:
どんな場合でも、何があっても、いつでもどこでも、もれなく100%わたしが悪いと考えること。もれなく100%というところが普通の罪悪感とは異なる。

母が教えなかった社会的な「常識」や「作法」は、経験を積むことで蓄えられる。修正を加えることもできる。母の教えたことと、現実に「正しい」とされていることとを比べれば明らかだから。痛い目にあい、傷つきながらひとつひとつ地道にやればいい。

しかし、母が教えたこの自分に対する認識や評価、罪悪感は容易には変えられない。「何をやってもダメだ」「すべては自分が悪い」は、比べるものがない。まるで絶対的な真理のようにでんと居座り、わたしを蝕む。

困難にぶつかったとき、人生の新しい局面を前にしたとき、何かに挑戦しようとするとき、母の声が聞こえる。「あんたにはむりだからやめなさい」「あんたにできるわけがない絶対にむり」「何もわかってない」「どんなにたいへんかわかってない」と。理不尽な扱いを受けたときにその声は言う。「あんたが悪いんでしょ」「あんたが悪いからそういう扱いを受けるのよ」

そうしてわたしの前に立ちはだかる。わたしがわたしの人生を生きようをすることをさまたげる。くじけさせる。

客観的に考えたら、何をしても完璧な人間が存在しないのと同様、何をしてもダメな人間など存在しないし、何もかも自分が悪いなどありえないのに。

具体的な傾向と対策

1. 共依存に走る→必要以上に人に寄りそおうとするのをやめる。頼まれもしないのにサービスを提供しようとしない。それがその人にとってほんとうに必要かどうか考える。ありがた迷惑のことだってある。「あなたのしてほしいことを人になさい」という言葉は美しいが真実ではない。こればかりやっていると利用される。必要なときだけすり寄ってきておきながら、賞味期限が切れると見るや手のひらを返すやつはいくらでもいる。

2. 誰かに頼りたい、甘えたい。しかし嫌われるのが怖くてできない。会いたくても「会おうよ」と言うことさえできない→素直にそう言えばいい。断られることはいつだってある。それはわたしの全存在を否定することにはならない。たまたまそういう機嫌だった、そういう気分だった、時間的にむりだった、というだけかもしれない。

3. 弱みを見せられない。マイナスの感情を表現しない。辛いことを自分の中にためこむ→いつも大丈夫、明るく元気、細かいことにはこだわらないふりをする。愚痴を言わない、というよい面もあるけど。それが誤解のもとにもなることもある。

4. はっきりとした根拠もないのに人に嫌われた/拒否された(のではないか)と考え不安になる→客観的にどんな証拠があるのか考える。たとえば、昨日まで機嫌良く接してくれた人がいきなり手のひらを返すわけがない。原因はわたし以外にあるのではないか。そもそも機嫌の悪いのはそいつの勝手ではないのか。嫌われても拒否されてもたいしたことではない、それがどうしたと考えるようにする。

5. 必要以上に、自分に関係のないことにまで罪悪感/責任を感じる。人が不幸になるのは自分が悪いからだと考える→客観的にどんな証拠があるのか考えてみる。ほんとうに悪いのは自分か。自分だけが悪いのか。人と人との関係は、うまくいくときもいかないときも、ほとんどの場合が五分と五分だ。それに

不幸なのはわたしのせいだと責めて、こちらの罪悪感に訴える人は、その人のほうがおかしい。何をしてもどんなに努力しても満足しない人は、その人のほうがおかしい。あれもしてやった、これもしてやったと恩を着せる人も、おかしいのはその人のほうだ。

6. 自分の欠点や失敗を存在理由/価値に直結させる。このような欠点があり、失敗をする自分には存在理由/価値がないと考える→欠点や失敗と自己の存在理由/価値の間に論理的なつながりは何もない。欠点があったり失敗をしたりするのは存在理由/価値を否定する理由にはならない。

7. いくらほめられても愛されてもきれいだと言われても素直に信じられない。喜べない。そんなわけはない、過大評価している、ほんとうのわたしを知らないからだ、と考える→単なる人の意見である。それに左右されない。ほんとうの自分の価値は自分だけが知っている。それはそれ。相手の好意の表れとして受け止め、感謝しておけばいい。

8. 恋が多い。好意を示されるとすぐなびく。「合意」が成立したとたん、相手にとって「都合のよい女」になる。嫉妬しない、忙しくて会えないと言われても不満を表明しない、会いたいと言われればいつでも会う。むりしてでも会う。寝たいと言われれば寝る。甘えない。おねだりをしない。嫉妬もしない。浮気されても怒らない。されて当然だ、自分にはその資格がないと考えるから→好意を示した人がほんとうに好きなのか、その人が示す好意が好きなだけなのか考える。誠実でないことは誠実でないとはっきりと抗議/指摘する。今はもう誰にも心が動かないからいいけどね。

9. あらゆる「~しなければならない」「~すべきだ」を考え出し、それでで自分を追い込む。それらすべてを完璧に実行しなければば好かれない。認められない。それらすべてを完璧に実行できない自分はダメな人間であると考える→しなければならないリストを作らない。リストがなくても覚えていることだけをする。あとは忘れる。あるいは「しなければならない」ことではなく、「したいこと」だけをするようにする。